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第三章 ~改めてゲームを見守ろうとしてから自分の名前を思い出すまで~
言わなかった言葉、見れなかった本と資料
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しばらくして、落ち着いたリッカと一緒に歩き出す。
オレの前世の記憶……ウェネットの記憶があるって話は、リッカにはしてない。
実を言うと、オレにウェネットの記憶があるって信じて貰えそうなネタはあるんだけど。
信じて貰える・貰えないの話じゃなくて、オレがウェネットだった、って……。
リッカにもユーグにも、ショックだろ?
だって。二人にとってウェネットって。
とても可愛くて素直で、誰からも好かれるような人物像なんだ。
そりゃもう、非の打ち所がないような愛されキャラだぞ。
そんなウェネットが、生まれ変わった結果、オレになっちゃたんだぞ。
オレとの共通点なんか、素直って部分くらいしか無いじゃん。
しかもオレ、二人を抱いちゃってるんだ。
もう……アレじゃん、アレだよ……って、何だよっ。わけが分かんないぞ。
記憶があるのに黙ってるのも罪悪感だけど、今、話す利点を感じない。
お墓に彫られた文字を読む限り、ウェネットが死んだのはもう十七年も前なんだ。
亡くした悲しみを癒すにはもう遅すぎるし、過去を懐かしく振り返るにはまだ早過ぎる。
今後もしも、二人がウェネットに気を遣って、何かを気に病んで苦しんでるようなら。そこでウェネットとしての記憶が役に立つようなら。
そしたら、オレの記憶を告白して、ウェネットが思ってたこととかを話そう。
そう心に決めた。
「やぁね。すっかり涙もろくなって……。」
リッカが呟く。
ちょっとはスッキリした感じでホッとした。
泣かせて楽にさせてやろうって、完全にオレとウェネットのエゴだったから。
余計な負担をリッカに掛けたんじゃないかって、気になってたんだ。
「いいトシして、ウェネットの前でワンワン泣いちゃったワヨ。」
「あっ、うん。いいんじゃないかな?」
焦って変な相槌打ったオレ。
オレがウェネットだって、リッカが気付くわけ無いってのにな。
「ふふっ……。ウェネットなら、そう言ったカモね。」
「ソウダナー。」
小首を傾げて微笑みを浮かべるリッカ。
怪しく笑うオレ。怪し過ぎるオレ。
これ、リッカに揺さぶられてる……わけじゃないよな? よな?
教会の正面辺りでリッカと別れた。
オレは予定無いけど、リッカはこれから仕事だから。
リッカには断られたけど。せめて、途中まででも送れば良かったかな。
でもオレも結構、自分の中で色々整理し切れてなかったからなぁ。
ゴメンな、リッカ。
一人になったオレは教会に入る。
たまたま入り口のそばにいた教会のシスター、……男だからブラザーか? まぁいいや。……とにかく教会の人に尋ねて、図書室へ。
係員さんに読みたい本をお願いしたけど、出して貰えたのは薄っぺらい本が数冊だった。
どれも妻側の、『妻になる為に』とか『妻の心得』とかで、コレじゃない。
オレが読みたい本は全部、貸出中だった。借りてるのは全部、同じ人。
……エステードさんだ。フィロウの為なんだろうけど、全部かよ……。
それじゃせめて、この町に実際にあったハーレムのデータ資料……妻の名前とか……を調べる気になったんだけど。
そういう資料を見るなら、閲覧者の名前と住居を申請書に書かなきゃならないんだってさ。
名前。住居。……どっちも駄目じゃん、オレ。
実はさ、オレ。今更かも知れないけど。
今のオレにとっての現実のハーレムについて、ちゃんとした知識を頭に入れとかなきゃ。って思ったんだ。
この世界のハーレムに関して、オレの知識は本当に普通な、一般常識に毛の生えたレベルだ。
ウェネットは一般常識にちょっと劣るくらいだった。病弱なウェネットが妻になるなんて、周囲も自分も思ってなかったから、それでも良かったんだ。
その割に、今のオレも、ウェネット時代にも、ゲーム世界でのハーレム知識がある。
でも……ゲームとは年代が違ってるんだよな。
十七年前に死んだウェネット。二年ちょいハーレムにいた。
先輩妻はウェネットより前に入宮してるから、その人達を口説く期間とかを考えたら。
オレが知ってるゲームスタート時点より、この世界は二十年くらい後。って話になるんだ。
リッカやユーグの年齢的にも、そう考えればシックリ来るんだよな。
だからゲームでのシステム的な部分が、今この世界ではどんな風になってるか。
同じな部分、違ってる部分とか調べたかったんだよなぁ。
特に法律的な面。これ重要。
ほら、オレ……リッカとユーグに手、出しちゃっただろ。解散後の妻だから大丈夫だろうけど、一応確認しときたいんだ。天守さま同士の場合は慰謝料とか、妻の移籍って話になるけど、天守さまじゃない男の場合はどうなるのかな~って。
……うん、まぁ。無い物は無いし、駄目なのは駄目だ。一旦諦めよう。
オレは無駄に清々しく教会を出た。
そして……。
「あれっ? キミ、こんな所で何してるの?」
何だか聞き覚えのあるフレーズで、オレは声を掛けられた。
オレの前世の記憶……ウェネットの記憶があるって話は、リッカにはしてない。
実を言うと、オレにウェネットの記憶があるって信じて貰えそうなネタはあるんだけど。
信じて貰える・貰えないの話じゃなくて、オレがウェネットだった、って……。
リッカにもユーグにも、ショックだろ?
だって。二人にとってウェネットって。
とても可愛くて素直で、誰からも好かれるような人物像なんだ。
そりゃもう、非の打ち所がないような愛されキャラだぞ。
そんなウェネットが、生まれ変わった結果、オレになっちゃたんだぞ。
オレとの共通点なんか、素直って部分くらいしか無いじゃん。
しかもオレ、二人を抱いちゃってるんだ。
もう……アレじゃん、アレだよ……って、何だよっ。わけが分かんないぞ。
記憶があるのに黙ってるのも罪悪感だけど、今、話す利点を感じない。
お墓に彫られた文字を読む限り、ウェネットが死んだのはもう十七年も前なんだ。
亡くした悲しみを癒すにはもう遅すぎるし、過去を懐かしく振り返るにはまだ早過ぎる。
今後もしも、二人がウェネットに気を遣って、何かを気に病んで苦しんでるようなら。そこでウェネットとしての記憶が役に立つようなら。
そしたら、オレの記憶を告白して、ウェネットが思ってたこととかを話そう。
そう心に決めた。
「やぁね。すっかり涙もろくなって……。」
リッカが呟く。
ちょっとはスッキリした感じでホッとした。
泣かせて楽にさせてやろうって、完全にオレとウェネットのエゴだったから。
余計な負担をリッカに掛けたんじゃないかって、気になってたんだ。
「いいトシして、ウェネットの前でワンワン泣いちゃったワヨ。」
「あっ、うん。いいんじゃないかな?」
焦って変な相槌打ったオレ。
オレがウェネットだって、リッカが気付くわけ無いってのにな。
「ふふっ……。ウェネットなら、そう言ったカモね。」
「ソウダナー。」
小首を傾げて微笑みを浮かべるリッカ。
怪しく笑うオレ。怪し過ぎるオレ。
これ、リッカに揺さぶられてる……わけじゃないよな? よな?
教会の正面辺りでリッカと別れた。
オレは予定無いけど、リッカはこれから仕事だから。
リッカには断られたけど。せめて、途中まででも送れば良かったかな。
でもオレも結構、自分の中で色々整理し切れてなかったからなぁ。
ゴメンな、リッカ。
一人になったオレは教会に入る。
たまたま入り口のそばにいた教会のシスター、……男だからブラザーか? まぁいいや。……とにかく教会の人に尋ねて、図書室へ。
係員さんに読みたい本をお願いしたけど、出して貰えたのは薄っぺらい本が数冊だった。
どれも妻側の、『妻になる為に』とか『妻の心得』とかで、コレじゃない。
オレが読みたい本は全部、貸出中だった。借りてるのは全部、同じ人。
……エステードさんだ。フィロウの為なんだろうけど、全部かよ……。
それじゃせめて、この町に実際にあったハーレムのデータ資料……妻の名前とか……を調べる気になったんだけど。
そういう資料を見るなら、閲覧者の名前と住居を申請書に書かなきゃならないんだってさ。
名前。住居。……どっちも駄目じゃん、オレ。
実はさ、オレ。今更かも知れないけど。
今のオレにとっての現実のハーレムについて、ちゃんとした知識を頭に入れとかなきゃ。って思ったんだ。
この世界のハーレムに関して、オレの知識は本当に普通な、一般常識に毛の生えたレベルだ。
ウェネットは一般常識にちょっと劣るくらいだった。病弱なウェネットが妻になるなんて、周囲も自分も思ってなかったから、それでも良かったんだ。
その割に、今のオレも、ウェネット時代にも、ゲーム世界でのハーレム知識がある。
でも……ゲームとは年代が違ってるんだよな。
十七年前に死んだウェネット。二年ちょいハーレムにいた。
先輩妻はウェネットより前に入宮してるから、その人達を口説く期間とかを考えたら。
オレが知ってるゲームスタート時点より、この世界は二十年くらい後。って話になるんだ。
リッカやユーグの年齢的にも、そう考えればシックリ来るんだよな。
だからゲームでのシステム的な部分が、今この世界ではどんな風になってるか。
同じな部分、違ってる部分とか調べたかったんだよなぁ。
特に法律的な面。これ重要。
ほら、オレ……リッカとユーグに手、出しちゃっただろ。解散後の妻だから大丈夫だろうけど、一応確認しときたいんだ。天守さま同士の場合は慰謝料とか、妻の移籍って話になるけど、天守さまじゃない男の場合はどうなるのかな~って。
……うん、まぁ。無い物は無いし、駄目なのは駄目だ。一旦諦めよう。
オレは無駄に清々しく教会を出た。
そして……。
「あれっ? キミ、こんな所で何してるの?」
何だか聞き覚えのあるフレーズで、オレは声を掛けられた。
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