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定例の交流会にて
定例の交流会にて・13 ◇第一皇子クリスティ視点
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ダディと宰相閣下がちょうど同じタイミングで、それぞれがグラスに手を伸ばした。
ず~っと喋り続けてたダディ達の間に、一瞬の沈黙が生まれる。
ここ……! 今っ、イマココ~っ!
「流石はロザリンド嬢だ。実に相手の事を考えた、心の暖かい贈り物ですね。……」
俺は狙いすまして言葉を捻じ込んだ。
この時の、俺の気持ちは、以下のような感じだった。
あ~っはっは! やあっと喋れたあぁ~! 今こそ俺のターンっ!
すっごいウズウズしながら待ってたんだからな!
ダディ達は座ってる位置も近いんだし、後は二人でボソボソ話してればいいんだ!
後で思い返したら、笑わない約束をジェフとしてたにも関わらず、俺は笑っちゃってたかも知れない。
でも今更そんな事言っても、しょうがないよな?
「好き嫌いを無くしてやろうと気遣ったロザリンド嬢から、大嫌いな物を山ほど投げ付けられた事も……良い思い出になりますね?」
丁寧だけどあんまり距離を感じさせない親し気な敬語で、俺は話してる。
だって相手は、宰相閣下の息子二人。あんまり気取る必要は無い相手だから。
長男のレオナルド……レオは俺達より年上だけど、一歳しか違わない。
次男のレイモンド……レイは、驚きで衝撃の事実だけど、俺達より二つ年下なんだ。
俺は話しながら、まずはレオの方を見た。
皇族側から第一皇子の俺が話し掛けるんだから、宰相側の長男を相手にするのが社交マナーだからな。
俺達四人の間には、特にこれといった個人的な関係性が無いからだ。
これがもし、誰か二人が婚約してるとか、主人と側近みたいな誓いをしてるとか。そんなのがあったらまた、話は別なんだけど。
婚約、……かぁ。
レイと婚約出来たらいいんだけどなぁ~。そう上手くも行かないよな。
ポワワ~ン、と考えてた。
……あれ? レオから返事が無いぞ。
って言うか、なんかレオ、むせてないか? ……あっ!
そこで俺は思い出す。
ジェフからいつも「クリスはタイミングが悪い」って言われてる事を。
もしかしたら今も。
レオがむせたのは俺の所為だったり、するのかも知れない。
あんまりレオの事を気にしてなかったから、何とも言えないけど。
何か食べたか、飲んだかした……ちょうどその時に、話し掛けちゃったのかも。
いつもレオは口数が少ないから、今日は喋らせてみよう。なんて思ったのが良くなかったな、後で反省しよう。
でも俺が今「レオ、ゴメンな?」って言ったら。
それはそれで、むせ掛けてるって状態をわざわざ発表する事になるしなぁ。
………よし、この件には触れないでおこう。
「そうだろう? ジェフ。」
レオが色々と整える為の時間を稼ごうと思って、俺はジェフに話し掛けた。
顔もしっかり逸らしとくから、今の内にナフキンで拭ったりすればいい。
「……はい、兄上。」
ジェフったら、メッチャ、サカナ見てる。
あぁ~もう、今日も凄い緊張してるんだなぁ~。
賢くて、結構嫌味な所もあるのに、なんでそんなに緊張屋さんなんだよ……。
魚を見て誤魔化せてるって思ってるのか?
……あ、違った、ゴメン。その魚……ピラルゥはジェフの大好物だったな。食事の邪魔して本当にゴメン。だから後で叱らないでよ。
さてさて……。
レオはあまり喋る方じゃない上に、今は密かにむせてるから大変そうだ。
ジェフはメチャクチャ緊張してる上に、ピラルゥに半分、気を取られてる。
ダメだ、今日は四人で喋ろうかと思ったのに。この二人は役に立たない。
この話題では広がらなかったか。
お喋りが好きな俺だけど、一人じゃ流石に続けられない。
誰も乗って来てくれない場合は、諦めて別な機会を窺うしか無いんだ。
今の話題がそれかな。
……って諦めようとした時。
「ほぉ? クリスティ殿下は、我が姉と……そのような良い思い出が?」
レイいぃ~~~~~っ! ありがとおぉ~~~~~~っ!
食い付いて来てくれたのは、やっぱりレイだった。
レイだけは割としょっちゅう、俺の話に乗って来てくれる。
流石に全ての話題で、ってワケじゃないけどさ。
「私は長年、ロザリンドの弟をやっておりますが……。我が姉と、殿下との間にそのような微笑ましいエピソードがあったとは、初耳でしたね。」
ふふふ、レイったら。さっそくの一言が、長ぁ~いぞっ。
そうだよなっ、だよなっ。レイだってもう、いい加減に喋りたいよなっ。
「……宜しければ、詳細についてお聞かせ頂けますか?」
あっ、ごめ~ん。
レイのお姉さんとのエピソードって、俺の話じゃないんだよね。レオが超厳しい特訓した、って話なんだ。
だから既にレイも知ってる話だと思う。
詰まらないだろうから、そのエピソードを喋るのはナシ、な。
ず~っと喋り続けてたダディ達の間に、一瞬の沈黙が生まれる。
ここ……! 今っ、イマココ~っ!
「流石はロザリンド嬢だ。実に相手の事を考えた、心の暖かい贈り物ですね。……」
俺は狙いすまして言葉を捻じ込んだ。
この時の、俺の気持ちは、以下のような感じだった。
あ~っはっは! やあっと喋れたあぁ~! 今こそ俺のターンっ!
すっごいウズウズしながら待ってたんだからな!
ダディ達は座ってる位置も近いんだし、後は二人でボソボソ話してればいいんだ!
後で思い返したら、笑わない約束をジェフとしてたにも関わらず、俺は笑っちゃってたかも知れない。
でも今更そんな事言っても、しょうがないよな?
「好き嫌いを無くしてやろうと気遣ったロザリンド嬢から、大嫌いな物を山ほど投げ付けられた事も……良い思い出になりますね?」
丁寧だけどあんまり距離を感じさせない親し気な敬語で、俺は話してる。
だって相手は、宰相閣下の息子二人。あんまり気取る必要は無い相手だから。
長男のレオナルド……レオは俺達より年上だけど、一歳しか違わない。
次男のレイモンド……レイは、驚きで衝撃の事実だけど、俺達より二つ年下なんだ。
俺は話しながら、まずはレオの方を見た。
皇族側から第一皇子の俺が話し掛けるんだから、宰相側の長男を相手にするのが社交マナーだからな。
俺達四人の間には、特にこれといった個人的な関係性が無いからだ。
これがもし、誰か二人が婚約してるとか、主人と側近みたいな誓いをしてるとか。そんなのがあったらまた、話は別なんだけど。
婚約、……かぁ。
レイと婚約出来たらいいんだけどなぁ~。そう上手くも行かないよな。
ポワワ~ン、と考えてた。
……あれ? レオから返事が無いぞ。
って言うか、なんかレオ、むせてないか? ……あっ!
そこで俺は思い出す。
ジェフからいつも「クリスはタイミングが悪い」って言われてる事を。
もしかしたら今も。
レオがむせたのは俺の所為だったり、するのかも知れない。
あんまりレオの事を気にしてなかったから、何とも言えないけど。
何か食べたか、飲んだかした……ちょうどその時に、話し掛けちゃったのかも。
いつもレオは口数が少ないから、今日は喋らせてみよう。なんて思ったのが良くなかったな、後で反省しよう。
でも俺が今「レオ、ゴメンな?」って言ったら。
それはそれで、むせ掛けてるって状態をわざわざ発表する事になるしなぁ。
………よし、この件には触れないでおこう。
「そうだろう? ジェフ。」
レオが色々と整える為の時間を稼ごうと思って、俺はジェフに話し掛けた。
顔もしっかり逸らしとくから、今の内にナフキンで拭ったりすればいい。
「……はい、兄上。」
ジェフったら、メッチャ、サカナ見てる。
あぁ~もう、今日も凄い緊張してるんだなぁ~。
賢くて、結構嫌味な所もあるのに、なんでそんなに緊張屋さんなんだよ……。
魚を見て誤魔化せてるって思ってるのか?
……あ、違った、ゴメン。その魚……ピラルゥはジェフの大好物だったな。食事の邪魔して本当にゴメン。だから後で叱らないでよ。
さてさて……。
レオはあまり喋る方じゃない上に、今は密かにむせてるから大変そうだ。
ジェフはメチャクチャ緊張してる上に、ピラルゥに半分、気を取られてる。
ダメだ、今日は四人で喋ろうかと思ったのに。この二人は役に立たない。
この話題では広がらなかったか。
お喋りが好きな俺だけど、一人じゃ流石に続けられない。
誰も乗って来てくれない場合は、諦めて別な機会を窺うしか無いんだ。
今の話題がそれかな。
……って諦めようとした時。
「ほぉ? クリスティ殿下は、我が姉と……そのような良い思い出が?」
レイいぃ~~~~~っ! ありがとおぉ~~~~~~っ!
食い付いて来てくれたのは、やっぱりレイだった。
レイだけは割としょっちゅう、俺の話に乗って来てくれる。
流石に全ての話題で、ってワケじゃないけどさ。
「私は長年、ロザリンドの弟をやっておりますが……。我が姉と、殿下との間にそのような微笑ましいエピソードがあったとは、初耳でしたね。」
ふふふ、レイったら。さっそくの一言が、長ぁ~いぞっ。
そうだよなっ、だよなっ。レイだってもう、いい加減に喋りたいよなっ。
「……宜しければ、詳細についてお聞かせ頂けますか?」
あっ、ごめ~ん。
レイのお姉さんとのエピソードって、俺の話じゃないんだよね。レオが超厳しい特訓した、って話なんだ。
だから既にレイも知ってる話だと思う。
詰まらないだろうから、そのエピソードを喋るのはナシ、な。
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