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学園の感謝祭にて
学園の感謝祭にて・14 ◇第二皇子ジェフリー視点
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今日、僕……第二皇子であるジェフリーと、第一皇子であるクリスティ……クリスがヴェルデュール学園を訪れたのは、一年に一度開催される学園感謝祭を見物する為でした。
元来からクリスはお祭りごとが大好きですから、学園感謝祭に限らず、公務以外で他の催し物にも顔を出しています。
僕は賑やかな場はあまり得意じゃないので、公務以外では自分から何かを見に行くという事は殆どありません。それに実は結構、強引なクリスに連れ出されている為、僕はそれで充分だと思っています。
僕がクリスに付き合うのは……あの、その……。
れっ、……レオ様と、会える可能性がある時……など、で……。
学園感謝祭に来た目的も。
もしかしたら今日、レオ様に会えるかも知れないと、そう考えたからでした。
この学園にはレイモンド様が通っています。
最上級生なので今年が最後の学園感謝祭になりますから、兄であるレオ様が見に来る可能性は高いですよね。
レオ様は一見、怖そうに見えますが。弟思いのお兄様ですからね。
クリスは、レイモンド様のクラスを見に行くようです。
クラスの出し物の為、レイモンド様が仮装をすると聞いて。その時のクリスがそれはそれは嫌味な、だらしのない笑みを浮かべていたのを覚えています。
レイモンド様が一体何の仮装をするかは知りませんが、聞いた話によると、歴史上の、教科書に載るような人物の誰か……という話です。
絶対に話し掛けると意気込んでいたクリスですから、もしかしたら今日もレイモンド様と、ちょっとした口論を繰り広げるかも知れませんね。
それを思えば些か眉間に皺が寄りそうな思いです。
ですが、そうやってクリスが時間を稼いでいる間に、レオ様が姿を見せてくれないかと僕は期待しています。
僕が割と楽しみにしている、という事は理解してくれたでしょうか。
ですから、ね……?
「はぁ~っ、……クリスったら、もう……。」
僕は思わず小さな声で呟いてしまいました。溜息も吐きますよ。
振り返ればクリスは浮かれていましたね、移動中からも。
学園の敷地内に入れば入ったで、まるで地に足が着いていないようでした。
二人でいる人達を見ては、勝手にカップルだと決め付けて妄想し。広場に開かれている屋台などに目を奪われ、目的をそっちのけで買い食いを楽しもうとしたり。
その寄り道具合といったら、もう……。
今日は何をしに来たのですか、と。
そんな事をしている時間がありますか、と。
一応、単なるクリスの付き合いで来たという体裁を取っている僕ですが、つい注意をしてしまう程でした。
そんな所でモタモタしている内に、いつの間にかレオ様が来て、挨拶をしてすぐに帰ってしまったらどうするのですか。
本当に、わざわざクリスに付き合った意味が無くなるでしょうっ。
いつにも増して僕からの、顔面に関する注意が必要なクリスは。
クリスは今。たった今。
サロンの外へと出て行ってしまったのです。
僕達は、学園内でもかなり奥まった位置にある、レイモンド様のクラス教室へ向かう途中でした。
長い廊下を歩き、サロンに出た所で。レイモンド様の同級生達がサロンの一角に集っているのを発見したのです。
気を利かせたクリスが従者を使いにやって、情報収集をした所、ここで待っていれば仮装を済ませたレイモンド様と会えそうだと分かりました。
ですから僕達はそれまでの間、何処かのソファーで休んでいれば良かったのです。
それを、クリスは……!
中庭へと通じるガラス扉の向こう側を見て、何かに興味を惹かれたのでしょう。
僕が止めるのを振り払って、中庭テラスへと出て行きました。
その結果、僕はさっきの溜息ですよ。
「……はぁ。」
再び溜息を吐いた僕はドアノブに手を伸ばしました。
ちょっとだけ、僕は一人でサロンに居ようかとも思いましたが。
表情筋の緩過ぎるクリスを野放しには出来ません。
中庭テラスへ出てみると予想通り、クリスは何かに夢中になっていました。
どうやらテーブルを囲んだ数人がカードゲームをしているのを見ているようです。
……クリスはカードゲームが好きですから、ねぇ。
レオ様やレイモンド様がいつ来るかも分かりませんし、少しだけならゲームを眺めさせていても良いでしょう。
その間の居場所をどうしようかと考え、僕は周囲を見回しました。
するとそこで。上半分がガラスになっている扉の向こう側に。
いつの間にかレイモンド様がサロンにやって来て、同級生達に囲まれていました。
そして本当に偶然、見えたんです。
僕の目は釘付けになりました。
サロンへと足を踏み入れるレオ様の姿に……。
元来からクリスはお祭りごとが大好きですから、学園感謝祭に限らず、公務以外で他の催し物にも顔を出しています。
僕は賑やかな場はあまり得意じゃないので、公務以外では自分から何かを見に行くという事は殆どありません。それに実は結構、強引なクリスに連れ出されている為、僕はそれで充分だと思っています。
僕がクリスに付き合うのは……あの、その……。
れっ、……レオ様と、会える可能性がある時……など、で……。
学園感謝祭に来た目的も。
もしかしたら今日、レオ様に会えるかも知れないと、そう考えたからでした。
この学園にはレイモンド様が通っています。
最上級生なので今年が最後の学園感謝祭になりますから、兄であるレオ様が見に来る可能性は高いですよね。
レオ様は一見、怖そうに見えますが。弟思いのお兄様ですからね。
クリスは、レイモンド様のクラスを見に行くようです。
クラスの出し物の為、レイモンド様が仮装をすると聞いて。その時のクリスがそれはそれは嫌味な、だらしのない笑みを浮かべていたのを覚えています。
レイモンド様が一体何の仮装をするかは知りませんが、聞いた話によると、歴史上の、教科書に載るような人物の誰か……という話です。
絶対に話し掛けると意気込んでいたクリスですから、もしかしたら今日もレイモンド様と、ちょっとした口論を繰り広げるかも知れませんね。
それを思えば些か眉間に皺が寄りそうな思いです。
ですが、そうやってクリスが時間を稼いでいる間に、レオ様が姿を見せてくれないかと僕は期待しています。
僕が割と楽しみにしている、という事は理解してくれたでしょうか。
ですから、ね……?
「はぁ~っ、……クリスったら、もう……。」
僕は思わず小さな声で呟いてしまいました。溜息も吐きますよ。
振り返ればクリスは浮かれていましたね、移動中からも。
学園の敷地内に入れば入ったで、まるで地に足が着いていないようでした。
二人でいる人達を見ては、勝手にカップルだと決め付けて妄想し。広場に開かれている屋台などに目を奪われ、目的をそっちのけで買い食いを楽しもうとしたり。
その寄り道具合といったら、もう……。
今日は何をしに来たのですか、と。
そんな事をしている時間がありますか、と。
一応、単なるクリスの付き合いで来たという体裁を取っている僕ですが、つい注意をしてしまう程でした。
そんな所でモタモタしている内に、いつの間にかレオ様が来て、挨拶をしてすぐに帰ってしまったらどうするのですか。
本当に、わざわざクリスに付き合った意味が無くなるでしょうっ。
いつにも増して僕からの、顔面に関する注意が必要なクリスは。
クリスは今。たった今。
サロンの外へと出て行ってしまったのです。
僕達は、学園内でもかなり奥まった位置にある、レイモンド様のクラス教室へ向かう途中でした。
長い廊下を歩き、サロンに出た所で。レイモンド様の同級生達がサロンの一角に集っているのを発見したのです。
気を利かせたクリスが従者を使いにやって、情報収集をした所、ここで待っていれば仮装を済ませたレイモンド様と会えそうだと分かりました。
ですから僕達はそれまでの間、何処かのソファーで休んでいれば良かったのです。
それを、クリスは……!
中庭へと通じるガラス扉の向こう側を見て、何かに興味を惹かれたのでしょう。
僕が止めるのを振り払って、中庭テラスへと出て行きました。
その結果、僕はさっきの溜息ですよ。
「……はぁ。」
再び溜息を吐いた僕はドアノブに手を伸ばしました。
ちょっとだけ、僕は一人でサロンに居ようかとも思いましたが。
表情筋の緩過ぎるクリスを野放しには出来ません。
中庭テラスへ出てみると予想通り、クリスは何かに夢中になっていました。
どうやらテーブルを囲んだ数人がカードゲームをしているのを見ているようです。
……クリスはカードゲームが好きですから、ねぇ。
レオ様やレイモンド様がいつ来るかも分かりませんし、少しだけならゲームを眺めさせていても良いでしょう。
その間の居場所をどうしようかと考え、僕は周囲を見回しました。
するとそこで。上半分がガラスになっている扉の向こう側に。
いつの間にかレイモンド様がサロンにやって来て、同級生達に囲まれていました。
そして本当に偶然、見えたんです。
僕の目は釘付けになりました。
サロンへと足を踏み入れるレオ様の姿に……。
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