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学園の感謝祭にて
学園の感謝祭にて・1 ◇俯瞰視点
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リーヴェルト帝国の帝都にあるヴェルデュール学園は、帝国が誇る公立教育機関であるのと同時に、優れた人材育成所でもあった。
国中の各所から、知識と教養、そして『学園を卒業したという資格』を求める者が集まって来る。
貴族達が住む上級区画と、下級貴族や平民達が暮らす一般区画との境目辺りに建っているのは、貴族・平民等の身分を問わず学園に通う事が出来る、という姿勢を表したものだ。
入学する為には、当たり前に試験もあるのだが、多くの貴族は子供が幼い頃から家庭教師を雇う事が多いので、特に問題は無い。
平民生徒は大抵が既にどこか他の学校に通っていて、そこでの優秀さから、ヴェルデュール学園への入学を勧められた者が多かった。
学園への入学資格は満十五歳以上で、上限は特に設けられていない。
教育課程論は五年間。
入学から三年間は、一般的な学業や身体の鍛錬、魔法という技術についての基礎知識などを学ぶ。
三年間の在籍で一般的な教育は終えたものとして『一般課程修了』の資格を貰って、学園生活を終える者も少なくはない。いわゆる『卒業』とは違うものの、充分な知識と教養を身に着けた証拠となるのだから。
もちろん、更なる上を目指す者はその後の二年を通い、五年で卒業する。その内の何割かがヴェルデュール上級学院へと進学し、更なる研究や知識等を追求するのだ。
学園で開催される大きな行事の一つに『学園感謝祭』というものがある。
この学園を作った人々、学園に関わる人々、制度に理解を示す人々、その他大勢の人々に感謝の気持ちを改めて持ち、日頃の成果を……、……という建前を掲げて堂々と行うお祭り騒ぎ、の事だ。
イベントで賑わう学園校舎内の一角で、黄色い声や野太い声の歓声が上がった。
十数名の男女の生徒達が、中心にいる一人を囲んで興奮した様子。
中心にいる者はとても上等な素材で作られてはいるものの、極めて容易く露出のしやすそうな、有り体に言えば破廉恥なドレスを着用している。
手首まである袖はシースルーで、肩から全部が透け透け。
スカート丈は長いものの、主な素材が柔らかいシルクである為、身体に纏わり付いて腰回りを強調させ。尚且つ、スリットが両サイドに深く切り込んでいるので、歩けば太腿まで披露されるのは必須。
足には太腿までの黒い網タイツ。ガーターベルトの装着も忘れていない。
胸元や背中は当然のことながら大きく開き、……まるで、開けるのが礼儀ですよと言わんばかりだ。
「レイモンド様っ、とっても素敵ですよっ。」
「流石ですぅ、お似合いですぅ。」
可愛らしい女子生徒達に拍手で褒められ。
男子生徒達からは、褒められながらも様々な思惑を感じさせる視線を浴び。
「………。」
日頃は『冷徹』と呼ばれる事もある、宰相閣下の次男の顔面には、今は何一つ、感情が浮かんでいなかった。
今まさに、恭しい所作でピンヒールを履かされている自分の足元へと、虚ろな視線を落としている。
女豹のような化粧を施されていなければ、青白い顔を晒していたかも知れない。
次男の名誉の為に述べておかねばなるまい。
彼は決して、学園感謝祭というイベントに浮かれ上がって女装をしたのではない。
在籍するクラスの出し物が『来場者の皆さんに、楽しく、帝国の歴史を知って貰う喫茶店』をする事に決まったのだ。
歴史を知って貰う為の工夫は色々と試みられており、歴史上の人物に仮装するというのも、その一つだった。
準備期間中は所用があって殆ど手伝えなかった次男が、仮装をする役目に当たるのは当然の流れだろう。
今の次男が仮装しているのは『ー殺し屋ー マーダー・ムヤン』と呼ばれていた、恐ろしい軍人と、艶やかな娼婦という二つの顔を持つ女性だ。
とても強かったとされる彼女については、物語にもなったぐらい有名だった。
国中の各所から、知識と教養、そして『学園を卒業したという資格』を求める者が集まって来る。
貴族達が住む上級区画と、下級貴族や平民達が暮らす一般区画との境目辺りに建っているのは、貴族・平民等の身分を問わず学園に通う事が出来る、という姿勢を表したものだ。
入学する為には、当たり前に試験もあるのだが、多くの貴族は子供が幼い頃から家庭教師を雇う事が多いので、特に問題は無い。
平民生徒は大抵が既にどこか他の学校に通っていて、そこでの優秀さから、ヴェルデュール学園への入学を勧められた者が多かった。
学園への入学資格は満十五歳以上で、上限は特に設けられていない。
教育課程論は五年間。
入学から三年間は、一般的な学業や身体の鍛錬、魔法という技術についての基礎知識などを学ぶ。
三年間の在籍で一般的な教育は終えたものとして『一般課程修了』の資格を貰って、学園生活を終える者も少なくはない。いわゆる『卒業』とは違うものの、充分な知識と教養を身に着けた証拠となるのだから。
もちろん、更なる上を目指す者はその後の二年を通い、五年で卒業する。その内の何割かがヴェルデュール上級学院へと進学し、更なる研究や知識等を追求するのだ。
学園で開催される大きな行事の一つに『学園感謝祭』というものがある。
この学園を作った人々、学園に関わる人々、制度に理解を示す人々、その他大勢の人々に感謝の気持ちを改めて持ち、日頃の成果を……、……という建前を掲げて堂々と行うお祭り騒ぎ、の事だ。
イベントで賑わう学園校舎内の一角で、黄色い声や野太い声の歓声が上がった。
十数名の男女の生徒達が、中心にいる一人を囲んで興奮した様子。
中心にいる者はとても上等な素材で作られてはいるものの、極めて容易く露出のしやすそうな、有り体に言えば破廉恥なドレスを着用している。
手首まである袖はシースルーで、肩から全部が透け透け。
スカート丈は長いものの、主な素材が柔らかいシルクである為、身体に纏わり付いて腰回りを強調させ。尚且つ、スリットが両サイドに深く切り込んでいるので、歩けば太腿まで披露されるのは必須。
足には太腿までの黒い網タイツ。ガーターベルトの装着も忘れていない。
胸元や背中は当然のことながら大きく開き、……まるで、開けるのが礼儀ですよと言わんばかりだ。
「レイモンド様っ、とっても素敵ですよっ。」
「流石ですぅ、お似合いですぅ。」
可愛らしい女子生徒達に拍手で褒められ。
男子生徒達からは、褒められながらも様々な思惑を感じさせる視線を浴び。
「………。」
日頃は『冷徹』と呼ばれる事もある、宰相閣下の次男の顔面には、今は何一つ、感情が浮かんでいなかった。
今まさに、恭しい所作でピンヒールを履かされている自分の足元へと、虚ろな視線を落としている。
女豹のような化粧を施されていなければ、青白い顔を晒していたかも知れない。
次男の名誉の為に述べておかねばなるまい。
彼は決して、学園感謝祭というイベントに浮かれ上がって女装をしたのではない。
在籍するクラスの出し物が『来場者の皆さんに、楽しく、帝国の歴史を知って貰う喫茶店』をする事に決まったのだ。
歴史を知って貰う為の工夫は色々と試みられており、歴史上の人物に仮装するというのも、その一つだった。
準備期間中は所用があって殆ど手伝えなかった次男が、仮装をする役目に当たるのは当然の流れだろう。
今の次男が仮装しているのは『ー殺し屋ー マーダー・ムヤン』と呼ばれていた、恐ろしい軍人と、艶やかな娼婦という二つの顔を持つ女性だ。
とても強かったとされる彼女については、物語にもなったぐらい有名だった。
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