上 下
92 / 101
本編●主人公、外の世界に出て色々衝撃を受けたりしながら遊ぶ

ぼくは学校内の休憩室を初めて利用する

しおりを挟む
ぼくはアルフォンソを連れて、学校内にある豪華な『休憩室』に入っていた。
エイベル兄さんと一緒に泊っている高級宿よりは当然劣るものの、内装はとても立派。大きなベッドだけでなく、浴槽とシャワーとを備えた浴室まである。

恐ろしい事に、ベッドサイドには数種類のローションと思しきボトル。お尻を解す為に使う物。挿入する物。
ベッドのヘッドボードにある宮棚の引き出しには、コンドームも数種類あった。
ちなみに浴室にはちゃんと、シャンプーやトリートメント類、ボディソープなんかもあるし、洗面台にも石鹸やら何やら。一通りのアイテムが揃っていた。

はっきり言わせて貰うが、これは……お洒落なラブホだよね? 
学校にこんな設備があるなんて、実にけしからんが素晴らしいよ。
この学校に通う大きな目的の一つが『交流』とは、成程、良く言ったもんだ。



こんな部屋にアルフォンソを連れ込んだのは立派な理由がある。
顔を茹でダコのように赤くして恥じらうアルフォンソを、一刻も早く何処かに避難させなくてはと思ったからだ。
あの状態のアルフォンソをいつまでも人目に晒してなんか置けないだろう。

最初は保健室的な所へ連れて行こうかとも思ったんだが、念の為に、エドガーに聞いてみて良かった。
親切な友であり学級委員長のエドガーが、休憩室について教えてくれた。だけでなく、ぼくを案内してくれて、この部屋を使う為の手続きや何かもしてくれた。
更にエドガーは気を利かせて、ぼくとアルフォンソが午後の授業を休む事を教師に伝えてくれるそうだ。

一応ぼくには侍従のベニーがいるが、彼は基本的にぼくの護衛を兼ねている。
ベニーを使い走りにして離れるわけにも行かないから助かったよ。

エドガーが来てくれて本当に良かった。




それでまぁ……現在、ぼくとアルフォンソは休憩室のソファに腰掛けている。
ベニーは隣接する待機部屋で控えてくれているよ。


アルフォンソは緊張しているようだ。
ぼくが休憩室に連れ込んだりしたから。らしい。
休憩室を利用するという事はつまり、この人とそういう事をしますよ。そういう対象ですよ。……という事になるからね。

「俺なんかと一緒に、来させてしまって……。本当に済まな…」
「謝らないでよ。ぼくの事なら心配しなくて良いから。」

俯いているアルフォンソは、なかなか視線をぼくの方へ向けてくれない。
礼儀正しく自分の太腿に置いた手は拳を握っているし、肩や背中にも力が入っているように見える。
ぼくを見ていないのに、感覚の全てがぼくの気配を窺っている。そんな感じだ。


「アルフォンソ……。」

座っている位置がやや遠くて、少しだけ距離を詰めてみたら。
びくんと身体を跳ねさせたアルフォンソが振り返る。
ぼくと目が合うと、怯えたように慌てて顔を逸らされた。
そっと肩に手を乗せた。小さく震えているのはぼくが予想していた通り。

「そんなに警戒しないで。ぼくは、アルフォンソが……嫌がる事はしないよ?」

正直に言うとまだ少し、学食での余韻が残っている。
アルフォンソのあんな表情やこんな表情が容易に頭に浮かぶし、ぷるんとした唇の感触だって何度でも思い出せるぐらいだ。
せっかく部屋に用意されている様々な物を利用したい、という気持ちも充分ある。

だが、怯えているのを無理矢理どうにかしようとは思わないよ。
アルフォンソをレイプしたくはない。


「落ち着くまで休憩しようか。何か飲み物を持って来るよ。」

気軽な調子で肩をぽんっと叩き、立ち上がろうとしたぼくを、アルフォンソの手がまたジャケットの裾を掴んで引き止めた。
下を向いたまま、ふるふると首を振っている。

「アルフォンソ? どうしたの? 飲み物は要らない?」
「……違う。」

ぼくは立ち上がるのを止めて、すぐ間近に座り直した。
アルフォンソの顔を覗き込むが、視線は合わせて貰えない。

「何が違うの? 言ってくれなきゃ分からないよ。……怒ったりしないから。アルフォンソ、教えて?」

出来るだけ柔らかい口調で伝える。
少しの間があってから、アルフォンソはゆっくりと顔を上げた。
ぼくを見ては視線を逸らし、を繰り返す。
やがて重たい口を開くのを待つぼく。何故ならぼくは、どうせ大した事は言えないからだ。


「嫌がってなど、いない……。」

消えそうな声。
たったこれだけの短い言葉を伝える間に、アルフォンソは耳まで真っ赤になっていた。



どかーーーん!


ぼくの脳内で花火が打ち上げられる音がした。
あるいは、開戦の狼煙でも上がったか。

絶対に気の所為。分かっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!

結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)  でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない! 何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ………… ……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ? え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い… え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back… ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子? 無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布! って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない! イヤー!!!!!助けてお兄ー様!

メテオライト

渡里あずま
BL
魔物討伐の為に訪れた森で、アルバは空から落下してきた黒髪の少年・遊星(ゆうせい)を受け止める。 異世界からの転生者だという彼との出会いが、強くなることだけを求めていたアルバに変化を与えていく。 ※重複投稿作品※

異世界転移? いいえ、純正品の神子ですが、塩対応はどうかと思います。

猫宮乾
BL
 社畜の僕は、時空の歪みの向こうに連れていかれた。そこは星庭の世界というらしい。てっきり異世界転移したのだと思っていたら、周囲が言う。「いえいえ、元々この世界からあちらに逃して秘匿していただけで、貴方は本物の神子様です!」※異世界ファンタジーBLです。

独占欲強い系の同居人

狼蝶
BL
ある美醜逆転の世界。 その世界での底辺男子=リョウは学校の帰り、道に倒れていた美形な男=翔人を家に運び介抱する。 同居生活を始めることになった二人には、お互い恋心を抱きながらも相手を独占したい気持ちがあった。彼らはそんな気持ちに駆られながら、それぞれの生活を送っていく。

異世界の美醜と私の認識について

佐藤 ちな
恋愛
 ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。  そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。  そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。  不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!  美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。 * 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...