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本編●主人公、外の世界に出て色々衝撃を受けたりしながら遊ぶ

ぼくは色香に惑わされて言いたい事も言えない

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ぼくが学校に通い始めてから、早いもので、今日が四日目になる。
その間にぼくが出来た事と言えば、実に僅か過ぎて涙を誘われる程しか無かった。


同級生達から、登校時と下校時に挨拶して貰えるようになった。(←頼んだ結果)
ぼくの事を、家名でなくアドルと呼んで貰えるようになった。(←頼んだ結果)
ぼくが話し掛けた際に必要以上に畏まらないようになった。(←頼んだ結果)
用事がある時には許可無く話し掛けて良いと浸透させた。(←頼んだ結果)
ぼく達は同級生だから友人だよ。という言葉を受け入れさせた。(←頼んだ結果)
休憩時間にエドガーと少し話せるようになった。(←ぼくとエドガーの努力結果)
休憩時間にエドガーと共に同級生に話し掛けた。(←ぼくとエドガーの努力結果)


成果をざっと挙げてみたよ。成果と言えるかどうか怪しいものもあるが……我ながら悲しくなるね。

だが誤解しないで欲しい。
学校に通ってみた結果、ぼくは別にがっかりも幻滅もしてはいない。
寧ろ、今まで何となく知識として頭にあっただけだったり、話には聞いていたが今一つ分からないというか信じられないような事など……幾つかを『実感』する事が出来たからね。
聞くより見ろ。と言うだろう? 言わなかったかな?





今はまたお昼のランチタイム。
高級レストランのような内装に広々ゆったりとした席で、ぼくは相変わらず、アルフォンソと『麗しい』が高ランクなエイベル兄さんと三人でいる。

スパゲティを頬張るアルフォンソの唇にクリームソースが跳ねたのを、恐らく無意識にペロリと舌で舐め取る仕草は、ぼくが一番好きな顔立ちなのも相まって可愛いエロかった。
ショートパスタの熱々グラタンを口元に運ぶ兄だが、実は猫舌なのでフゥフゥと息を吹き掛けている姿は、自分の兄である事が残念に思うぐらいに『麗しい』だ。


このように、ぼくの視界は実に見目麗しく、とても楽しいものではあるんだが。
やはりこのままでは良くない、と思う。
アルフォンソと兄の姿を楽しむなら、それは学校でなくとも良いじゃないか。
せっかく学校にいるんだ。ここで同級生と親しくならずにどうする。

もう四日目なんだ。五日目になる明日の授業が終わったら、ぼくと兄は家に帰らなければならない。
今回の通学は五日間、と決まっているからね。
次の通学がいつになるのかは、家に帰って家族会議を行った後の決定となる。
ぼくの予想だと恐らく、少なくとも十日間は期間が開く事になるだろうね。


だから今日は頑張らなくちゃ。
この二人に「明日の昼は同級生と一緒にランチしたい」と言うんだ。


「ねぇ、兄さん……、アルフォンソ……。」
「どうした、アドル?」
「何か、あったのか?」

二人の色香にだらしなくなりそうな表情筋を叱咤し、ぼくは『格好良い』の微笑を作り上げた。
しかしぼくの作り笑いなんか簡単に吹き飛んでしまうような、色気を湛えた本物の微笑で返り討ちに遭う。


キミ達……やってくれるじゃないか。
特に兄さん。周囲がガン見しているよ?

そういう事はもう少し、時と場所を選んで……あぁ駄目だ。色気を振り撒いても良い時間、良い場所だとしたら、ぼくの理性が擦り切れてしまう。
いや、でも、待てよ? 別に理性なんか擦り切れても良いんじゃないか?


この世界。親子兄弟と言っても血の繋がりはない。
子供が出来るには神殿の手助けを得て、神から授かるのが通常だ。
母親はともかくとして、家族ではあるものの。日本のように血族的な感覚は乏しいじゃないか。
ならば、ぼくが兄に手を出したとしても……。

待てぇいっ、待つんだ、アドル! それは、それだけはサトル的な感覚のボクが許さない!




「……アドル? 大丈夫か?」

兄の言葉で意識が現実に戻って来た。
いかん、いかん。考え込んで妄想に興奮してしまったよ。


「疲れているんじゃないか? ……エイベル、食事が終わったら…」
「大丈夫っ、大丈夫だよ、アルフォンソ。兄さんも、心配は要らないからね。」

何となくアルフォンソが、食事の後に兄とぼくを下校させようとする気配を感じたから、慌てて元気そうに振舞ってみた。
本当に元気だからね。
ただ少し、馬鹿だっただけで。
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