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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくの前で素直可愛いアリーはタチに厳しいようだ
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ぼく達がいるテラス席はパーティ会場と繋がっているから、距離的にはあまり離れてはいない。
それでもガラス一枚、ドア一枚を挟んだだけで、人々の賑やかさとは隔絶されたように……まるで二人きりのような雰囲気を醸し出している。
カウチで寛いだ姿勢のぼくは、膝枕に寝かせたアリーの髪を楽しんでいた。
とても綺麗な直毛で、すぐに指の間をすり抜けてしまうのが逆に楽しい。
膝枕の始めの内は緊張していたアリーも、少しずつでも慣れてくれたようだ。
今は時折、唇をきゅっと結んだりするが、擽ったそうな表情で眦を細めてぼくを見上げていた。
……そろそろ、良い頃合いかな。
「昨日は御免ね? せっかく案内してくれていたのに。」
ぼくは軽い雰囲気で伝えた。
日本的な感覚で言えば、謝る気があるんならちゃんとそれなりの態度で謝るべきなんだろうが。この世界ではぼくは『格好良い』の奇跡ランクだから。
ちょっとした事でしっかりと謝罪をしてしまうと、相手が委縮してしまう……だけならまだしも。その場を見た他の人から、「その程度の事で奇跡ランクに謝罪をさせるとは何事か」と、騒ぎになってしまう可能性があるらしいんだ。
「いえ、そんな……。い、いいんです。」
短い言葉だが、アリーはそれで何の事かを察してくれたようだ。
「僕が場に残っても何にもならなかったでしょうし。それに……あの時にアドルさんが、アレクセイ王子を連れ出そうと考えたのであれば。そう、なるべきなんですから……。」
「そうか。なら、良かった。」
アリーはあの時の事を怒ったりはしていない、ように見える。
今一つ、完全に納得はしていない事が窺えるが。それに……何かが心に引っ掛かっているような様子もあった。
小難しい建前を言えば。
王子であれば本来、そうした不本意な心情を上手く隠すべきだ。等と思う所だが。
ぼくの話題なんか、どうせ詰まらないものしか無いんだから。
アリーが何か思うものがあるんなら、それを聞いてみようじゃないか。
少なくともそうしている間は、こうやってくっ付いて、アリーの髪を撫でていられるんだから。
「アリー? 何か、思う所があるなら言ってごらん?」
「ですが……。」
「大丈夫。アリーとぼくの考えが異なっていたとしても、それはぼく達が別人なんだから当たり前だろう? それだけでアリーの事を嫌いになったりはしないよ。……それに。ぼくもアリーに、ぼくが考える事を色々と言ったんだ。アリーにも、言って貰った方が嬉しい。」
勝手に怒りを感じて、アリーに説教紛いの事まで言っておいて……とは思うが。
人間は誰しも勘違いや間違いをするものだし、後から考えが変わる事だって少なくないんだから。後の事を考え過ぎたり遠慮したりで、お互いに何も言えなくなるよりは良いと思うんだ。
「……だから、ね? アリー?」
「んっ……。」
催促するように、アリーの唇を突っつく。
眉を顰めたアリーから可愛い声が聞こえて、ぼくは心の中でガッツポーズを取る。
アリーは言おうかどうしようか迷ったが、最終的にはぼくの視線から逃げられずに口を開いた。
「僕は……。もし、また昨日のようなアレクセイ王子を見掛けたとしても……やっぱり、僕が何か手出しする事は無いと思います。」
「へぇ、そうなんだ。どうして?」
大人し気な印象のアリーが、そんな風にはっきりと言うもんだから。
ぼくはある意味、興味を引かれた。
アレックの事が苦手だからとか、嫌いだからとかの理由じゃあ無さそうだ。
「それは……。だって、アレクセイ王子はタチなんですから。ちゃんと自分で、抵抗するべきです。タチとして、ネコに暴力を振るうような事は出来ないというのなら、潔く諦めたら良いんです。」
あっ、ぼくが思っていたよりも長文で来たよ。
ちっとも言い淀んでいない辺り、常日頃から思っているんだろうなぁ。
「醜い僕が言うのもおこがましいとは、分かっていますが……タチとして、情けないと思いませんか? 僕は、アレクセイ王子のように、誰かに無理矢理された経験はありませんが。もしも僕が、不本意な性交渉を強いられたのであれば、相手を傷付けてでも抵抗すると言い切れますよ?」
アリーは、賢い美青少年が、自分の考える正しい理屈を披露するような表情をしているが。
あぁこれは……何と言おうか……。
アリー。キミはとっても、タチに厳しいんだね……。
「そう言えば……アリー。こんな所に隠れていたんだね。どうりで……。パーティ会場でアリーの姿を見掛けないと思ったよ。」
「あ、はい……。パーティの時は、つい……抜け出してしまうんです。」
このままでは場の雰囲気が……いや、ぼくの居心地が悪くなる。
そう考えたぼくは、かなり唐突に話を変えた。
話してごらん、と自分からアリーに話させた癖にだ。
アリーは訝しがりもせず、素直に答えてくれた。
ぼくにはこんなにチョ……げふんげふん。素直で可愛いのに。
タチに厳しいとは。
ぼくも気を付けなくちゃ、ね。
それでもガラス一枚、ドア一枚を挟んだだけで、人々の賑やかさとは隔絶されたように……まるで二人きりのような雰囲気を醸し出している。
カウチで寛いだ姿勢のぼくは、膝枕に寝かせたアリーの髪を楽しんでいた。
とても綺麗な直毛で、すぐに指の間をすり抜けてしまうのが逆に楽しい。
膝枕の始めの内は緊張していたアリーも、少しずつでも慣れてくれたようだ。
今は時折、唇をきゅっと結んだりするが、擽ったそうな表情で眦を細めてぼくを見上げていた。
……そろそろ、良い頃合いかな。
「昨日は御免ね? せっかく案内してくれていたのに。」
ぼくは軽い雰囲気で伝えた。
日本的な感覚で言えば、謝る気があるんならちゃんとそれなりの態度で謝るべきなんだろうが。この世界ではぼくは『格好良い』の奇跡ランクだから。
ちょっとした事でしっかりと謝罪をしてしまうと、相手が委縮してしまう……だけならまだしも。その場を見た他の人から、「その程度の事で奇跡ランクに謝罪をさせるとは何事か」と、騒ぎになってしまう可能性があるらしいんだ。
「いえ、そんな……。い、いいんです。」
短い言葉だが、アリーはそれで何の事かを察してくれたようだ。
「僕が場に残っても何にもならなかったでしょうし。それに……あの時にアドルさんが、アレクセイ王子を連れ出そうと考えたのであれば。そう、なるべきなんですから……。」
「そうか。なら、良かった。」
アリーはあの時の事を怒ったりはしていない、ように見える。
今一つ、完全に納得はしていない事が窺えるが。それに……何かが心に引っ掛かっているような様子もあった。
小難しい建前を言えば。
王子であれば本来、そうした不本意な心情を上手く隠すべきだ。等と思う所だが。
ぼくの話題なんか、どうせ詰まらないものしか無いんだから。
アリーが何か思うものがあるんなら、それを聞いてみようじゃないか。
少なくともそうしている間は、こうやってくっ付いて、アリーの髪を撫でていられるんだから。
「アリー? 何か、思う所があるなら言ってごらん?」
「ですが……。」
「大丈夫。アリーとぼくの考えが異なっていたとしても、それはぼく達が別人なんだから当たり前だろう? それだけでアリーの事を嫌いになったりはしないよ。……それに。ぼくもアリーに、ぼくが考える事を色々と言ったんだ。アリーにも、言って貰った方が嬉しい。」
勝手に怒りを感じて、アリーに説教紛いの事まで言っておいて……とは思うが。
人間は誰しも勘違いや間違いをするものだし、後から考えが変わる事だって少なくないんだから。後の事を考え過ぎたり遠慮したりで、お互いに何も言えなくなるよりは良いと思うんだ。
「……だから、ね? アリー?」
「んっ……。」
催促するように、アリーの唇を突っつく。
眉を顰めたアリーから可愛い声が聞こえて、ぼくは心の中でガッツポーズを取る。
アリーは言おうかどうしようか迷ったが、最終的にはぼくの視線から逃げられずに口を開いた。
「僕は……。もし、また昨日のようなアレクセイ王子を見掛けたとしても……やっぱり、僕が何か手出しする事は無いと思います。」
「へぇ、そうなんだ。どうして?」
大人し気な印象のアリーが、そんな風にはっきりと言うもんだから。
ぼくはある意味、興味を引かれた。
アレックの事が苦手だからとか、嫌いだからとかの理由じゃあ無さそうだ。
「それは……。だって、アレクセイ王子はタチなんですから。ちゃんと自分で、抵抗するべきです。タチとして、ネコに暴力を振るうような事は出来ないというのなら、潔く諦めたら良いんです。」
あっ、ぼくが思っていたよりも長文で来たよ。
ちっとも言い淀んでいない辺り、常日頃から思っているんだろうなぁ。
「醜い僕が言うのもおこがましいとは、分かっていますが……タチとして、情けないと思いませんか? 僕は、アレクセイ王子のように、誰かに無理矢理された経験はありませんが。もしも僕が、不本意な性交渉を強いられたのであれば、相手を傷付けてでも抵抗すると言い切れますよ?」
アリーは、賢い美青少年が、自分の考える正しい理屈を披露するような表情をしているが。
あぁこれは……何と言おうか……。
アリー。キミはとっても、タチに厳しいんだね……。
「そう言えば……アリー。こんな所に隠れていたんだね。どうりで……。パーティ会場でアリーの姿を見掛けないと思ったよ。」
「あ、はい……。パーティの時は、つい……抜け出してしまうんです。」
このままでは場の雰囲気が……いや、ぼくの居心地が悪くなる。
そう考えたぼくは、かなり唐突に話を変えた。
話してごらん、と自分からアリーに話させた癖にだ。
アリーは訝しがりもせず、素直に答えてくれた。
ぼくにはこんなにチョ……げふんげふん。素直で可愛いのに。
タチに厳しいとは。
ぼくも気を付けなくちゃ、ね。
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