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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくは今はネコ気分じゃないんだよ
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些か機嫌の宜しくないぼくにとっては、若干不本意なお茶会。
目の前にはアレックという『エロエロしい』の非常に高ランクな存在がいるんだが、如何せん、彼は非情な神の悪意により、バリタチという忌まわしき呪いに掛かっている。
出来る事ならば『格好良い』の奇跡ランクであるぼくが、今すぐにでもその呪いから解き放って、中イキをキメる喜びをアレックに教えてあげたい所なんだがね……。
それには残念ながら、絶対的に、ぼくの経験値が足りな過ぎる。
世野悟の方はフリーセックス状態だったが、アドルは紛れも無く未経験だから。
やんごとなき御方々の言う『友達』が、いわゆるセックスフレンドだという、実に馬鹿馬鹿しくも重要な情報を得たわけだが……さて、どうしよう。
アレックの外見はとても素晴らしい。その仕草も、タチの癖にけしからんぐらい素晴らしい。
だからと言って、抱けないタチをただ眺めて時間を潰すのは何だか勿体ない。
せっかく、滅多に来られないだろう王城の中にいるというのに。
「アレックは疲れていないのか?」
様子見がてら、ぼくは問い掛けた。
アレックが、何の事かと補足を求めるように首を捻る。
実はさっきから、ぼく達の視線は絡み合いっぱなしだ。
ぼくがアレックの外見や仕草を見て楽しんでいたように、彼もまた、ぼくの顔面をずっと見ていた。
だがアレックが満足そうな表情をしているのは、ぼくが『格好良い』の奇跡ランクだから、という理由だけじゃない。
明らかに彼は、さっきのぼくの反応が面白かったんだろう。
「だから……。兄さんは随分と疲れていたようだからね。アレックは、食事会までの間、自室で休んでいなくて平気?」
「ん~? ……あぁ。エイベルとセックスしたから疲れてないか、って事か。」
ぼくが言葉を選んでやったというのに、アレックはわざと明け透けな物言いをして来た。
彼の瞳に悪戯っぽい色がちらほら見えるから、間違い無くぼくを揶揄っているんだ。
案外『友達』の話も、王城内か、彼の周囲だけで横行しているだけかも知れないね。話半分ぐらいで聞いていた方がいいかな。
「全然、疲れてないぞ。タチだからな。それに……意外と何にも知らなくって可愛いアドル、が楽しめたから、逆に元気になったかも。」
さっきの『友達』の話でもそうだが、ぼくをネコにしようと画策しているのか、アレックがこうやってバリタチ感を出して来るのがやや癇に障る。
確かにぼくは絶対にネコにならない、とは言わない。
むしろ世野悟の感覚があるから、後ろを弄られるのが気持ち良いのも知っている。恐らくその内にネコもするだろう、とも思っている。
だが……。だがその相手は、アレックじゃあない。
「そうか。なら……楽しい思い出も、勝手に、作った事だし。そろそろ部屋に戻って、食事会の支度でもしておいたらどう?」
はい、ぼくの外面もこれが精一杯みたいだ。
もう少し耳障りの良い言葉で済ませたかったんだが、あからさまに追い払いたい意思が前面に現れてしまったね。
不愉快そうな表情になるかと思ったアレックだが、予想外に、彼はにこやかに瞳を細めた。
「冷たいなぁ、アドル……。タチ相手にでも優しくしとけば後々で、何か良い事でもあるかも知れないぞ?」
「……そう? じゃあ、この次は優しくしてあげるよ。」
「そんな事を言って……。俺が居なくなったら、部屋の外をうろつく気だろ?」
「………。そんなわけないじゃないか。」
「アドル?」
「何かな?」
不自然に微笑み合う、ぼくとアレック。
……何故だ。何故に分かったんだ、アレックよ。
ぼくはアレックを追い出してから、一人で部屋の外に出るつもりでいた。
母も兄もお籠もり中だからね、行けると思ったんだよ。
アレック……母からか、あるいは側妃様にでも何か言われているな。
彼もぼくを部屋から出さない気なんだろう。
このままだと本当にぼくは、タチと二人で見つめ合いながら、食事会までの時間を潰す事になってしまう。
そうするしか、無いのか……。
諦め掛けたぼく。だが。
非情な神でもまだ、ぼくを見捨ててはいなかった。
従者がぼくに、来客を告げる。
「アンドリュー第三王子殿下がいらっしゃいま…」
「通して、すぐ、すぐに案内して。」
ぼくは噛み気味に、慌ただしく従者を急かした。
アンドリュー王子と言えば、ぼくより一つ年下の十四歳。
まだまだタチ・ネコのどちらかは確立していないだろうし、ぼくの勘によると、彼はネコだと思うんだ。
「アドルって……分かりやすっ。」
黙れ、アレック。
ぼくには今、ネコちゃんの癒しが必要なんだから。
目の前にはアレックという『エロエロしい』の非常に高ランクな存在がいるんだが、如何せん、彼は非情な神の悪意により、バリタチという忌まわしき呪いに掛かっている。
出来る事ならば『格好良い』の奇跡ランクであるぼくが、今すぐにでもその呪いから解き放って、中イキをキメる喜びをアレックに教えてあげたい所なんだがね……。
それには残念ながら、絶対的に、ぼくの経験値が足りな過ぎる。
世野悟の方はフリーセックス状態だったが、アドルは紛れも無く未経験だから。
やんごとなき御方々の言う『友達』が、いわゆるセックスフレンドだという、実に馬鹿馬鹿しくも重要な情報を得たわけだが……さて、どうしよう。
アレックの外見はとても素晴らしい。その仕草も、タチの癖にけしからんぐらい素晴らしい。
だからと言って、抱けないタチをただ眺めて時間を潰すのは何だか勿体ない。
せっかく、滅多に来られないだろう王城の中にいるというのに。
「アレックは疲れていないのか?」
様子見がてら、ぼくは問い掛けた。
アレックが、何の事かと補足を求めるように首を捻る。
実はさっきから、ぼく達の視線は絡み合いっぱなしだ。
ぼくがアレックの外見や仕草を見て楽しんでいたように、彼もまた、ぼくの顔面をずっと見ていた。
だがアレックが満足そうな表情をしているのは、ぼくが『格好良い』の奇跡ランクだから、という理由だけじゃない。
明らかに彼は、さっきのぼくの反応が面白かったんだろう。
「だから……。兄さんは随分と疲れていたようだからね。アレックは、食事会までの間、自室で休んでいなくて平気?」
「ん~? ……あぁ。エイベルとセックスしたから疲れてないか、って事か。」
ぼくが言葉を選んでやったというのに、アレックはわざと明け透けな物言いをして来た。
彼の瞳に悪戯っぽい色がちらほら見えるから、間違い無くぼくを揶揄っているんだ。
案外『友達』の話も、王城内か、彼の周囲だけで横行しているだけかも知れないね。話半分ぐらいで聞いていた方がいいかな。
「全然、疲れてないぞ。タチだからな。それに……意外と何にも知らなくって可愛いアドル、が楽しめたから、逆に元気になったかも。」
さっきの『友達』の話でもそうだが、ぼくをネコにしようと画策しているのか、アレックがこうやってバリタチ感を出して来るのがやや癇に障る。
確かにぼくは絶対にネコにならない、とは言わない。
むしろ世野悟の感覚があるから、後ろを弄られるのが気持ち良いのも知っている。恐らくその内にネコもするだろう、とも思っている。
だが……。だがその相手は、アレックじゃあない。
「そうか。なら……楽しい思い出も、勝手に、作った事だし。そろそろ部屋に戻って、食事会の支度でもしておいたらどう?」
はい、ぼくの外面もこれが精一杯みたいだ。
もう少し耳障りの良い言葉で済ませたかったんだが、あからさまに追い払いたい意思が前面に現れてしまったね。
不愉快そうな表情になるかと思ったアレックだが、予想外に、彼はにこやかに瞳を細めた。
「冷たいなぁ、アドル……。タチ相手にでも優しくしとけば後々で、何か良い事でもあるかも知れないぞ?」
「……そう? じゃあ、この次は優しくしてあげるよ。」
「そんな事を言って……。俺が居なくなったら、部屋の外をうろつく気だろ?」
「………。そんなわけないじゃないか。」
「アドル?」
「何かな?」
不自然に微笑み合う、ぼくとアレック。
……何故だ。何故に分かったんだ、アレックよ。
ぼくはアレックを追い出してから、一人で部屋の外に出るつもりでいた。
母も兄もお籠もり中だからね、行けると思ったんだよ。
アレック……母からか、あるいは側妃様にでも何か言われているな。
彼もぼくを部屋から出さない気なんだろう。
このままだと本当にぼくは、タチと二人で見つめ合いながら、食事会までの時間を潰す事になってしまう。
そうするしか、無いのか……。
諦め掛けたぼく。だが。
非情な神でもまだ、ぼくを見捨ててはいなかった。
従者がぼくに、来客を告げる。
「アンドリュー第三王子殿下がいらっしゃいま…」
「通して、すぐ、すぐに案内して。」
ぼくは噛み気味に、慌ただしく従者を急かした。
アンドリュー王子と言えば、ぼくより一つ年下の十四歳。
まだまだタチ・ネコのどちらかは確立していないだろうし、ぼくの勘によると、彼はネコだと思うんだ。
「アドルって……分かりやすっ。」
黙れ、アレック。
ぼくには今、ネコちゃんの癒しが必要なんだから。
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