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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくは初めての時はタチでと決めているから
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「はぁ~あ。やれやれ……。」
見せ付けるような溜息、そして肩まで竦めて。
アレックはアンディを解放した。
いや、解放と言うよりも……触っているのが嫌になったかのように。
半ば突き飛ばす勢いで、アンディの身体を離した。
「あっ!」
「危ないっ。」
咄嗟に腕を伸ばすと、辛うじて間に合ったようだ。
バランスを崩したアンディの身体が、ぼくの腕の中にすっぽりと収まる。
アンディを受け止めながら、ぼくは危険な事をしたアレックを睨み付けた。
だが彼は冷ややかな眼差しで、非難混じりのぼくの視線を真っ向から受け止め。口元だけ、にやりと笑みを浮かべている。
こんなに『エロエロしい』の高ランクなのに、その笑みは作り物っぽく見えた。
「アレック……?」
「まぁそういう事だ。種明かしはしてやったんだから、後は……分かるな?」
いや、分からないよ、アレック。
キミは、ぼくとアンディのどちらに向けて言っているんだ?
アンディが抱かれる格好をして訪ねて来たんだから、抱けという事か。今から。
それには少々、時期を間違えてはいないかな。
「あの……。」
「あ。あぁ、済まない。」
そっと声を掛けられて、ぼくはアンディを抱えたままでいる事に気が付いた。
名残惜しい気がするものの、ぼくは手放そうとしたんだが。驚くべき事に、アンディがぼくの腕を離してくれなかった。
これは……ある意味、ラッキーすけべ? いやいや、すけべと呼ぶ程の事じゃない。
「御免なさい、僕……。アドルさんが、ネコなんじゃないかって…」
「はあぁぁっっ?」
至近距離のアンディが、思いもよらぬ爆弾を落とすから。
ぼくの咽喉から変な声が出た。
「だって、アレクセイ王子と……。」
「違うよっ、全っ然、違うよっ!」
「……違うんですか?」
「違いますねえぇ。」
ぼくの言いっぷりに。ホッとしたアンディ。噴き出すアレック。
「アレックうぅ~。キミのっ、キミの所為だよっ。」
「いやいやぁ、アドルのイメージだろ。俺は知らないぞ?」
「へっぇ~? そうかなぁ? じゃあ誰が言いふらしたのかな? ねぇ誰かな?」
「さぁ~? 部屋から出るアドルが、しどけなくて色っぽく見えた誰かが、言いふらしたんじゃないか? いやぁ~、見てる人は見てるって事だな。……童貞だって言いふらされるよりはマシなんじゃ?」
白々しい。
アレック、その顔は……クロ、だ。
それに今は、ぼくが未経験なのは関係無いだろうが。
くいっ、くいっ。
「寧ろアレックの方が、ずっと儚げでネコっぽかった。」
「アドル、儚げを間違って覚えてるぞ?」
「いや流石は『エロエロしい』なぁ、と…」
「おい。顔面タイプへの偏見やめろ童貞。」
くいっ。
くい、くいっ。
「あの……。」
「あぁ、ご免ご免。」
腕が引っ張られるなぁと思ったら、アンディからのアピールだった。
そうだそうだ。アレックと馬鹿な言い争いをしている場合じゃない。
「アドルさんって、もしかして…」
「童貞だってさ。」
「キミが言うな。」
おずおずと問い掛けたアンディに答えたのはアレック。
ぼくは非常に間抜けな状況で暴露されてしまった。
赤く染まった頬もそのままに、腕の中からぼくを見上げるアンディ。
窺うような表情が、色っぽくもあどけなくもあり、それを見たら自然と顔が綻ぶ。
アンディのぷるんとした唇が開いて、ぼくはそこから紡ぎ出される言葉を待った。
「実は僕もまだ、で……。この、容姿だから……。」
「ぼくには魅力的だよ? ぼくはアンディの顔、好きだな。」
花が開くように嬉しそうな表情になるアンディ。
俯いて耐えている表情も悪くないが、こういう表情の方がやっぱり良いね。
「だから、あの……もし。……良かったら、だけど…」
一生懸命に、ぼくに伝えようとしているアンディ。
「アレックは黙っていてよ?」
「何も言ってないだろ……。」
アレックに釘を刺しておく。また強めに何か言われたら、溜まったもんじゃない。
舌打ちする辺り、油断出来ないな。
「アドルさんに、僕の初めて、を……貰って欲しいな、っ…」
「アンディはネコだよね?」
「え……? あっ、はい…」
「ぼくで良ければ喜んで。」
ぼくは同じ轍は踏まない。
相手の立ち位置、指差し確認は大事だ。
見せ付けるような溜息、そして肩まで竦めて。
アレックはアンディを解放した。
いや、解放と言うよりも……触っているのが嫌になったかのように。
半ば突き飛ばす勢いで、アンディの身体を離した。
「あっ!」
「危ないっ。」
咄嗟に腕を伸ばすと、辛うじて間に合ったようだ。
バランスを崩したアンディの身体が、ぼくの腕の中にすっぽりと収まる。
アンディを受け止めながら、ぼくは危険な事をしたアレックを睨み付けた。
だが彼は冷ややかな眼差しで、非難混じりのぼくの視線を真っ向から受け止め。口元だけ、にやりと笑みを浮かべている。
こんなに『エロエロしい』の高ランクなのに、その笑みは作り物っぽく見えた。
「アレック……?」
「まぁそういう事だ。種明かしはしてやったんだから、後は……分かるな?」
いや、分からないよ、アレック。
キミは、ぼくとアンディのどちらに向けて言っているんだ?
アンディが抱かれる格好をして訪ねて来たんだから、抱けという事か。今から。
それには少々、時期を間違えてはいないかな。
「あの……。」
「あ。あぁ、済まない。」
そっと声を掛けられて、ぼくはアンディを抱えたままでいる事に気が付いた。
名残惜しい気がするものの、ぼくは手放そうとしたんだが。驚くべき事に、アンディがぼくの腕を離してくれなかった。
これは……ある意味、ラッキーすけべ? いやいや、すけべと呼ぶ程の事じゃない。
「御免なさい、僕……。アドルさんが、ネコなんじゃないかって…」
「はあぁぁっっ?」
至近距離のアンディが、思いもよらぬ爆弾を落とすから。
ぼくの咽喉から変な声が出た。
「だって、アレクセイ王子と……。」
「違うよっ、全っ然、違うよっ!」
「……違うんですか?」
「違いますねえぇ。」
ぼくの言いっぷりに。ホッとしたアンディ。噴き出すアレック。
「アレックうぅ~。キミのっ、キミの所為だよっ。」
「いやいやぁ、アドルのイメージだろ。俺は知らないぞ?」
「へっぇ~? そうかなぁ? じゃあ誰が言いふらしたのかな? ねぇ誰かな?」
「さぁ~? 部屋から出るアドルが、しどけなくて色っぽく見えた誰かが、言いふらしたんじゃないか? いやぁ~、見てる人は見てるって事だな。……童貞だって言いふらされるよりはマシなんじゃ?」
白々しい。
アレック、その顔は……クロ、だ。
それに今は、ぼくが未経験なのは関係無いだろうが。
くいっ、くいっ。
「寧ろアレックの方が、ずっと儚げでネコっぽかった。」
「アドル、儚げを間違って覚えてるぞ?」
「いや流石は『エロエロしい』なぁ、と…」
「おい。顔面タイプへの偏見やめろ童貞。」
くいっ。
くい、くいっ。
「あの……。」
「あぁ、ご免ご免。」
腕が引っ張られるなぁと思ったら、アンディからのアピールだった。
そうだそうだ。アレックと馬鹿な言い争いをしている場合じゃない。
「アドルさんって、もしかして…」
「童貞だってさ。」
「キミが言うな。」
おずおずと問い掛けたアンディに答えたのはアレック。
ぼくは非常に間抜けな状況で暴露されてしまった。
赤く染まった頬もそのままに、腕の中からぼくを見上げるアンディ。
窺うような表情が、色っぽくもあどけなくもあり、それを見たら自然と顔が綻ぶ。
アンディのぷるんとした唇が開いて、ぼくはそこから紡ぎ出される言葉を待った。
「実は僕もまだ、で……。この、容姿だから……。」
「ぼくには魅力的だよ? ぼくはアンディの顔、好きだな。」
花が開くように嬉しそうな表情になるアンディ。
俯いて耐えている表情も悪くないが、こういう表情の方がやっぱり良いね。
「だから、あの……もし。……良かったら、だけど…」
一生懸命に、ぼくに伝えようとしているアンディ。
「アレックは黙っていてよ?」
「何も言ってないだろ……。」
アレックに釘を刺しておく。また強めに何か言われたら、溜まったもんじゃない。
舌打ちする辺り、油断出来ないな。
「アドルさんに、僕の初めて、を……貰って欲しいな、っ…」
「アンディはネコだよね?」
「え……? あっ、はい…」
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ぼくは同じ轍は踏まない。
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