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本編●主人公、獲物を物色する

ぼくの顔面偏差値は本当に面倒

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問題。
顔面タイプが『格好良い』の奇跡ランクなぼくは、どのような扱いになるか。

答え。
成人前の状態である今のぼくは、王子と同等の扱いになる。
ぼくが成人した以降は、国王と同等以上の扱いになる。


これが『ぼくの奇跡問題』だ。
成人前と成人後で扱いがやや異なるから、少し難しかったかな?
高ランクで『麗しい』なエイベル兄さんが、公爵と侯爵の間……筆頭侯爵扱いなんだから、高ランクより一つ上の奇跡ランクは公爵と同等になりそうな気がするから、これは引っ掛け問題だったね。

そもそも奇跡ランクは、イコール、神ランクとも言われているんだ。
だから単純に爵位が一つ上とか、二つ上とか、そういうものではないらしい。


……頭が痛くなるのは、ここからだよ?

ぼくの顔面タイプが『格好良い』という点が、また厄介な所なんだ。

『格好良い』を担当するサトゥルーは、六大神の主神でもある。
その所為か、この国で『格好良い』なタイプの顔面偏差値を持っている人は殆どいない。
先生が言うには、少なくとも国内には『格好良い』の中ランクすら確認されていないという事だ。
近隣諸国まで範囲を広げても、まずお目に掛かれないんだとか。

――― 特徴のない日本人顔に似た西洋人なんて、そりゃあ少ないだろな。

……まったくその通りだ。世野悟は黙っていれば、それはそれは『格好良い』だからね。
そう簡単にこの顔面が存在してたまるか。だが、ぼく以外にも存在してくれれば触れるのに。

あぁもう、とにかく。
主神と同じ顔面タイプだから、他の顔面タイプよりも、気持ち上寄り……という微妙な扱いが生じるんだ。
他の顔面タイプの奇跡ランクが国王と同等までなのに対して、『格好良い』に限っては同等以上だ。
成人した後のぼくに対しては、国王側からすれば、自国より大きい、又は古い格式ある国の王のように扱わなきゃならない。

……とか。
ほんと、勘弁して……。
母が浮かない表情になるのも無理はないね。




講義を一通り受けた後、ぼくはテーブルに着いて食事を摂る事になった。

ぼくの向かい側には先生一人だけ。
母とウェラン司祭はソファ席でいただくようだ。


あぁやっとお昼ご飯だ。
とても楽しみにしていたし、お腹も空いているし、さぁ楽しもう。
……じゃあないんだよ。

これは実戦なんだ。
今の知識を身に着けるべく、即座に。ぼくは試される。

実践テーマは。
楽しい食事中に『格好良い』の奇跡ランクが取るべき、取るよう求められる態度。


更にその状況で、先生は自分の正体を明かした。

本名、オウルヴェイア・ステル。
隣国ではないが、近隣にある神聖国家の、国王の、兄……。
王兄の、ステル公爵という事だ。

実践テーマである『楽しい食事』の前に、『やや格上な神聖国家の公爵と』という重たい文章が付いてしまった。




夕食程はこってりしていない、だが繊細な盛り付けをされた料理が目の前に置かれている。
飲み物は水と、炭酸果実水が用意された。

ぼくは向かい側の『愛くるしい』な先生に微笑み掛ける。

「あの、ステル先生。」
「違いまぁす……。」

さっそくの駄目出しを受ける。

「アドル様。『格好良い』の奇跡ランクの貴方は、私の事は、オルビーと……愛称でお呼び捨てください。」
「いえ、でも。先生を呼び捨てには…」
「違います、よ?」

やや顎を引いて、オルビー……呼ばせて貰おう……先生が『愛くるしい』な目線をぼくだけに向ける。
実践モードなのか、さっきとは彼の口調が違っている。

「先生と呼びたければ、『格好良い』の奇跡に相応しい伝え方が、ありますね? お教えしましたね?」

せっかくの『愛くるしい』だが、ただ楽しんで見てはいられない。
ぞくぞくするような視線を浴びながら、ぼくは考える。


彼を満足させられそうな対応を確かに、ぼくは教わっていた。
だがそれをすると、ぼくの……アドル的にも、サトル的にも……羞恥心が大変な事になってしまうのが、目に見えているんだ。

だが、そうしないと話が進まない。
やや逡巡したが。


「……ねぇ、オルビー?」

ぼくはばりばりの作り笑顔を、少しだけ首も傾げてオルビー先生に見せる。
先生の目が期待を表した。

「ぼくは、オルビー先生と呼びたいんだが……駄目、かな? ぼくに色々と教えてくれるオルビーに、ぼくなりの敬意を払いたいんだ。……いいよね?」
「……合格です。それならば相手も『えぇ喜んで』と言いやすいでしょう。……私もです。」


先生が満足してくれたようで良かったが。

普段とあまり変わらないぞと言われるかも知れないが。


ほくは恥ずかしかった。
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