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ただいま参上
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「ただいまぁ」
「おかえり。お風呂湧いてるわよ。先に入っちゃいなさい」
「ん~。今日のご飯何~?」
「炊き込みご飯とトンカツ」
「うわ、最高じゃん。一気に胃袋が空っぽになったよ」
「はいはい、用意しておくから。ほら、着替えとバスタオル」
「ありがと~」
部屋着とタオルを受け取ったご主人様は、そのままお風呂へ直行した。
キッチンからは油が跳ねる音がパチパチ聞こえる。ご飯のお出汁の匂いもおいらの鼻を刺激した。
しばらくすると、お風呂から上がってきたご主人様が髪を拭きながら部屋に入ってくる。
「あ~、いい匂い。ビール飲みたい」
「はい、冷やしといたわよ」
「さすが~。湯上がりの一杯って最高なんだよね」
プシュッと缶を開けると、ご主人様は一気にビールを喉に流し込んでぷはぁっとオヤジくさい声を上げた。
「っあああ!生き返る!」
「女の子がはしたない声出さないの」
「いいじゃん。こういう事ができるのが一人暮らしの特権っていうか…」
「…」
「…」
「………何でいんの⁉」
ビシッと指を指された先で、エプロン姿のその人は呆れたように言った。
「相変わらず鈍い子ね~。ここまで世話焼かれておいて何言ってるのよ」
「いや、あまりに会話がナチュラルすぎて気がつけなかったんだってば!どうやって入ったわけ⁉」
「合鍵」
「違う!いや、違わないけどそういう事じゃなくて!来るなら前もって言っといてよ、お母さん!」
そう、今日はご主人様のママがおうちに来ていた。
*
「理久からあなたの生活ぶりを聞いて、抜き打ちチェックしに来たのよ。あなたの事だから怠惰な毎日を送ってるんだろうと思ってたけど、やっぱりね。あ、ワイシャツにアイロンかけといたわよ」
「それについてはありがとう!でも、合鍵持ってるからって普通家主がいないのに勝手に入る⁉」
「連絡してから来たんじゃ、抜き打ちの意味ないでしょ?」
「もっともだけども!おかわり!」
あれこれ文句を言いながらも、その抜き打ちで来たママの料理をバクバク食べているご主人様。矛盾してるんだよなぁ。
おいらはドッグフードを食べながら、二人の様子を眺めてる。師匠と同じく、ママの目はご主人様によく似ている。いや、ご主人様と師匠がママに似たのか。垂れ気味の目はおっとりしてそうな印象を与えるけど、のんびりしてるご主人様とは違ってママの性格はどっちかって言うとせっかちだ。でも、おせっかいで優しいところはそっくり。
「あ、そうそう。この週末はずっといるからね」
「何で⁉」
「何でも何も、たった一日足らず様子見るためだけにわざわざ新幹線に乗ってまで来たりしないわよ。実は明日、こっちでずっと楽しみにしてたミュージカルがあるのよね♪」
「もしかしなくてもそっちがメインだよね⁉」
「だって、娘がこっちにいるのにわざわざホテル取るのもったいないじゃない」
「あ、今ものすごく血の繋がりを感じた。間違いなく理久の母親だよこの人」
「心配しなくても、泊めてもらうだけの世話はするつもりよ。とむ君ともい~っぱい遊びたいしね」
「キャン!」
貴重な休みのダラダラがぁ!なんて頭を抱えているご主人様には悪いけど、おいらとしてはママがいるのは願ってもない話だ。この週末は退屈せずに済みそうだな。
「それはそうと、従兄弟のケンちゃん。秋に結婚するらしいわよ。早いものねぇ、昔はあんなに小さかったのに」
「話題のチョイスまでそっくりだよ!やめて、何かがグサグサ胸を抉ってくるから!」
「あなたもそろそろ浮いた話の一つくらいないの?結婚とまでは言わないから、せめて彼氏の一人くらい…」
「わー、わー!何も聞こえません!」
この光景も何だかデジャヴを感じるなぁ。外見はそっくりな親子だけど、ママの性格を受け継いだのは師匠だけみたいだ。ご主人様のこの感じは誰の遺伝子から来ているんだろう。
その後もママから精神攻撃を受け続けたご主人様だったけど、ご飯はお腹がいっぱいになるまで堪能していた。
*
「何て言うか、眠い筈なのに一度起こされると意外と二度寝ってできないもんなんだね」
「わふっ」
ウキウキとミュージカルを観に出かけていったママを見送ったご主人様は、ボケーッとテレビを見ている。テーブルには、ママが作っていってくれていたお昼ご飯のお皿が空っぽになって残ったままだ。
平日よりはお寝坊さんだけど、いつものご主人様と比べると今日はとても早起きだった。おいらは学生だった頃のご主人様を知らないから、ママと過ごすご主人様の姿はいつ見ても新鮮だ。もうすぐ夕方だけど、ママはまだ帰ってこない。
「あ~、暇だ。休みの日ってこんなに時間あったっけ?」
「クゥーン」
「そうだね。せっかくだから思いっきり遊ぼっか!」
ご主人様の言葉においらはテンションが上がる。ジャンプしたり周りを走り回ったり、とにかくはしゃいだ。
「よーしよしよし。いっぱいわしゃわしゃしちゃうぞ~」
笑顔のおいらに、ご主人様もデレデレだ。顔を包んでくしゃくしゃ撫でたり、抱っこをしてキスをしたり、めちゃくちゃ構ってくれた。おいらも嬉しくなって、ゴロンと寝転ぶとお腹を見せた。
「や~ん。可愛いでちゅね~。もふもふでちゅね~」
赤ちゃん言葉でお腹を触りまくるご主人様。おいらも大興奮でイチャイチャしていた。
でもその時、外の廊下から聞き覚えのある足音が聞こえた。
「キャンキャン!」
「え、ちょ、とむ?」
一目散に玄関に向かうおいらに、ご主人様はもふもふしていた手をそのままにポカンとしている。
「ただいまぁ!」
「キャン!キャンキャン!」
「あらとむ君、出迎えてくれたの~?」
帰ってきたママに飛びつくと、ママはニコニコしながらおいらを撫でてくれる。
「いい子ね~。で?あなたは床にへたり込んで何してるの?」
「くっ…所詮私は繋ぎの女…!」
自分よりもママの方を優先したおいらに、ご主人様は悔しそうに唇を噛んでいた。
だって、どこの世界においてもママっていうのは絶対的な存在だと思うんだ。犬ってのは縦社会がハッキリしてるからね。
*
「───それじゃ、行くわね」
「はいはい。気をつけてね」
日曜日のお昼過ぎ。玄関で靴をトントンと鳴らすママにご主人様が声をかける。
「あなたもちゃんと明日会社に行くのよ」
「わかってるわかってる」
「ああ、そうそう。トイレットペーパーが切れそうだったから買い置きしてあるからね。あと、冷凍庫に数日分のおかずを作って入れてあるからお弁当にするなりなんなり好きに食べなさい。一応、一食分ずつに分けてあるから。それから、冬物のスーツや上着なんかは全部クリーニングに出してもう受け取ってるからクローゼットにしまってあるわよ。とむ君の健康にも良くないから、掃除はこまめにね。忙しいのはわかるけど、たまには家に顔出しなさい。お父さんも心配してるんだからね。それじゃ、お母さん新幹線の時間があるから。元気でやるのよ」
早口でそれだけの事を伝えると、ママはじゃ!と手を挙げて帰っていった。
「あ、嵐のような数日だった…」
ドアが閉まった瞬間、ぐったりと床に崩れ落ちるご主人様の膝に前足を乗せる。仕方ないよ、ご主人様。前科があり過ぎるのが悪いと思うんだ。
「…」
「?クゥーン?」
黙ってドアを見つめるご主人様に首を傾げると、ハッとこっちを向いたご主人様が笑って言った。
「あ、ごめんごめん。いたらいたでうるさいけど、いなくなったらそれはそれで寂しいもんだね」
その気持ちはよくわかる。おいらも毎日そんな思いでご主人様を送り出しているからだ。
その夜。ご主人様はママの作った晩ご飯を食べ、ママが磨いてくれたお風呂に浸かり、そしてママが干してくれたふかふかのお布団で眠りについた。
ただいま参上、最強オカン。
「おかえり。お風呂湧いてるわよ。先に入っちゃいなさい」
「ん~。今日のご飯何~?」
「炊き込みご飯とトンカツ」
「うわ、最高じゃん。一気に胃袋が空っぽになったよ」
「はいはい、用意しておくから。ほら、着替えとバスタオル」
「ありがと~」
部屋着とタオルを受け取ったご主人様は、そのままお風呂へ直行した。
キッチンからは油が跳ねる音がパチパチ聞こえる。ご飯のお出汁の匂いもおいらの鼻を刺激した。
しばらくすると、お風呂から上がってきたご主人様が髪を拭きながら部屋に入ってくる。
「あ~、いい匂い。ビール飲みたい」
「はい、冷やしといたわよ」
「さすが~。湯上がりの一杯って最高なんだよね」
プシュッと缶を開けると、ご主人様は一気にビールを喉に流し込んでぷはぁっとオヤジくさい声を上げた。
「っあああ!生き返る!」
「女の子がはしたない声出さないの」
「いいじゃん。こういう事ができるのが一人暮らしの特権っていうか…」
「…」
「…」
「………何でいんの⁉」
ビシッと指を指された先で、エプロン姿のその人は呆れたように言った。
「相変わらず鈍い子ね~。ここまで世話焼かれておいて何言ってるのよ」
「いや、あまりに会話がナチュラルすぎて気がつけなかったんだってば!どうやって入ったわけ⁉」
「合鍵」
「違う!いや、違わないけどそういう事じゃなくて!来るなら前もって言っといてよ、お母さん!」
そう、今日はご主人様のママがおうちに来ていた。
*
「理久からあなたの生活ぶりを聞いて、抜き打ちチェックしに来たのよ。あなたの事だから怠惰な毎日を送ってるんだろうと思ってたけど、やっぱりね。あ、ワイシャツにアイロンかけといたわよ」
「それについてはありがとう!でも、合鍵持ってるからって普通家主がいないのに勝手に入る⁉」
「連絡してから来たんじゃ、抜き打ちの意味ないでしょ?」
「もっともだけども!おかわり!」
あれこれ文句を言いながらも、その抜き打ちで来たママの料理をバクバク食べているご主人様。矛盾してるんだよなぁ。
おいらはドッグフードを食べながら、二人の様子を眺めてる。師匠と同じく、ママの目はご主人様によく似ている。いや、ご主人様と師匠がママに似たのか。垂れ気味の目はおっとりしてそうな印象を与えるけど、のんびりしてるご主人様とは違ってママの性格はどっちかって言うとせっかちだ。でも、おせっかいで優しいところはそっくり。
「あ、そうそう。この週末はずっといるからね」
「何で⁉」
「何でも何も、たった一日足らず様子見るためだけにわざわざ新幹線に乗ってまで来たりしないわよ。実は明日、こっちでずっと楽しみにしてたミュージカルがあるのよね♪」
「もしかしなくてもそっちがメインだよね⁉」
「だって、娘がこっちにいるのにわざわざホテル取るのもったいないじゃない」
「あ、今ものすごく血の繋がりを感じた。間違いなく理久の母親だよこの人」
「心配しなくても、泊めてもらうだけの世話はするつもりよ。とむ君ともい~っぱい遊びたいしね」
「キャン!」
貴重な休みのダラダラがぁ!なんて頭を抱えているご主人様には悪いけど、おいらとしてはママがいるのは願ってもない話だ。この週末は退屈せずに済みそうだな。
「それはそうと、従兄弟のケンちゃん。秋に結婚するらしいわよ。早いものねぇ、昔はあんなに小さかったのに」
「話題のチョイスまでそっくりだよ!やめて、何かがグサグサ胸を抉ってくるから!」
「あなたもそろそろ浮いた話の一つくらいないの?結婚とまでは言わないから、せめて彼氏の一人くらい…」
「わー、わー!何も聞こえません!」
この光景も何だかデジャヴを感じるなぁ。外見はそっくりな親子だけど、ママの性格を受け継いだのは師匠だけみたいだ。ご主人様のこの感じは誰の遺伝子から来ているんだろう。
その後もママから精神攻撃を受け続けたご主人様だったけど、ご飯はお腹がいっぱいになるまで堪能していた。
*
「何て言うか、眠い筈なのに一度起こされると意外と二度寝ってできないもんなんだね」
「わふっ」
ウキウキとミュージカルを観に出かけていったママを見送ったご主人様は、ボケーッとテレビを見ている。テーブルには、ママが作っていってくれていたお昼ご飯のお皿が空っぽになって残ったままだ。
平日よりはお寝坊さんだけど、いつものご主人様と比べると今日はとても早起きだった。おいらは学生だった頃のご主人様を知らないから、ママと過ごすご主人様の姿はいつ見ても新鮮だ。もうすぐ夕方だけど、ママはまだ帰ってこない。
「あ~、暇だ。休みの日ってこんなに時間あったっけ?」
「クゥーン」
「そうだね。せっかくだから思いっきり遊ぼっか!」
ご主人様の言葉においらはテンションが上がる。ジャンプしたり周りを走り回ったり、とにかくはしゃいだ。
「よーしよしよし。いっぱいわしゃわしゃしちゃうぞ~」
笑顔のおいらに、ご主人様もデレデレだ。顔を包んでくしゃくしゃ撫でたり、抱っこをしてキスをしたり、めちゃくちゃ構ってくれた。おいらも嬉しくなって、ゴロンと寝転ぶとお腹を見せた。
「や~ん。可愛いでちゅね~。もふもふでちゅね~」
赤ちゃん言葉でお腹を触りまくるご主人様。おいらも大興奮でイチャイチャしていた。
でもその時、外の廊下から聞き覚えのある足音が聞こえた。
「キャンキャン!」
「え、ちょ、とむ?」
一目散に玄関に向かうおいらに、ご主人様はもふもふしていた手をそのままにポカンとしている。
「ただいまぁ!」
「キャン!キャンキャン!」
「あらとむ君、出迎えてくれたの~?」
帰ってきたママに飛びつくと、ママはニコニコしながらおいらを撫でてくれる。
「いい子ね~。で?あなたは床にへたり込んで何してるの?」
「くっ…所詮私は繋ぎの女…!」
自分よりもママの方を優先したおいらに、ご主人様は悔しそうに唇を噛んでいた。
だって、どこの世界においてもママっていうのは絶対的な存在だと思うんだ。犬ってのは縦社会がハッキリしてるからね。
*
「───それじゃ、行くわね」
「はいはい。気をつけてね」
日曜日のお昼過ぎ。玄関で靴をトントンと鳴らすママにご主人様が声をかける。
「あなたもちゃんと明日会社に行くのよ」
「わかってるわかってる」
「ああ、そうそう。トイレットペーパーが切れそうだったから買い置きしてあるからね。あと、冷凍庫に数日分のおかずを作って入れてあるからお弁当にするなりなんなり好きに食べなさい。一応、一食分ずつに分けてあるから。それから、冬物のスーツや上着なんかは全部クリーニングに出してもう受け取ってるからクローゼットにしまってあるわよ。とむ君の健康にも良くないから、掃除はこまめにね。忙しいのはわかるけど、たまには家に顔出しなさい。お父さんも心配してるんだからね。それじゃ、お母さん新幹線の時間があるから。元気でやるのよ」
早口でそれだけの事を伝えると、ママはじゃ!と手を挙げて帰っていった。
「あ、嵐のような数日だった…」
ドアが閉まった瞬間、ぐったりと床に崩れ落ちるご主人様の膝に前足を乗せる。仕方ないよ、ご主人様。前科があり過ぎるのが悪いと思うんだ。
「…」
「?クゥーン?」
黙ってドアを見つめるご主人様に首を傾げると、ハッとこっちを向いたご主人様が笑って言った。
「あ、ごめんごめん。いたらいたでうるさいけど、いなくなったらそれはそれで寂しいもんだね」
その気持ちはよくわかる。おいらも毎日そんな思いでご主人様を送り出しているからだ。
その夜。ご主人様はママの作った晩ご飯を食べ、ママが磨いてくれたお風呂に浸かり、そしてママが干してくれたふかふかのお布団で眠りについた。
ただいま参上、最強オカン。
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