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1.幼少期。

3.異能検査はパニック。

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学園に足を踏み入れると、在校生から番号が書かれた紙が渡される。・・・多分、異能検査の順番なのだろう。


『0937』


随分、新入生だけなのに数が多いなぁ・・・。確かに、マンモス校ではあるけれど、こんなに人がいるもんなんだな。・・・でも、俺は『呪われた子供』。地味で目立たない生活を送りたい・・・。


先に、紙を受け取っていた悠里と陽葵が自慢げに紙を見せびらかす。


「じゃーん♪俺は、0777番だぜ!ラッキーセブンだ!やっほう!!」
「私は、0888番ですよー?アキちゃんは?」

「・・・俺は、0937番だった。何で、またこんなに番号に違いが出るんだろうね?」
「あー。聞いてみたら、ランダムで選ばれるらしい。しかも、0937番が一番最後だとか。暁人はある意味、運が高いのかも知れねーな。」
「それに、ジンクスで一番最初と最後になった人はSSクラスに自動的に選ばれるんだとか。そういう事が多いんだって。」


・・・この俺が?そんな力・・・。いや、異世界に来れるだけの力があるだけはあるのだけど。でも、そんなジンクス、信じられるはずがない。だって、俺にはそれを享受できるだけの覚悟も何もない。きっと、皆を不幸にしてしまう。



俺は、首を大きく横に振る。


「・・・そんな事なんて、ないよ。」


その声は、小さく消えた。何故なら、一番最初に異能検査をした娘がSSランクの持ち主で、自動的にクラスもSSクラスに所属する事になって。皆はその力に見惚れていたようだった。



あぁ、やっぱり、すごい人はいるものだなぁ。俺は、順番が来るまで、静かに、隅っこで待機していた。・・・こんな俺に、期待なんてしてほしくない。







悠里と陽葵は二人とも宣言通り、Sクラス選ばれた。俺も、二人のいるクラスに所属したい。でも、それは・・・力を誤魔化さないといけないのかもしれないし、力が足りないのかもしれない。そもそも、この世界の住人ではなかったのだから。一番下のクラスになるのかもしれない。


・・・もう、誰も傷つけたくないんだ。俺は、弱虫モンブランなのだから。弱くて、誰よりも甘い。




悠里が俺の近くに駆け寄ってくる。


「暁人!もうすぐ、お前の番だぞっ!!皆、お前に期待している。異能検査会場に人がいっぱい集まっているぜ!しかも、SSクラスの面々も見守っているんだって!!黄色い悲鳴が凄かったな。」


「・・・そう、なんだ・・・。でも、現実を見たら、皆も、幻滅するよ。」


そう、言い残してそろりと会場に向かっていくのだった。






俺は、日頃の癖で天に祈りを捧げる。


『神よ。自分に加護をもたらしてください。』


そして、異能検査をする為の水晶玉と傍にはしゃべる猫がいた。・・・審査員かな?しっぽが二又に分かれている。


「これから、お前の異能検査を行う。この水晶玉と、心眼を持つ私には隠し事など出来ぬ。心して、かかれ。」
「・・・はい。」


俺は、水晶玉に触れる。水晶玉の中が大きく反応してー・・・は意識を奪われ、水晶玉が爆散した。


「・・・この俺様、アレス様にかかれば、これくらいはちょろいもんだぜ。」


あぁ、神様が俺の身体に宿ってしまった。こうなっては、俺には、どうする事も出来ない。猫さんも、驚いて目を見開く。



「にゃっ!?お前の異能は『神降ろし』かっ!?これは・・・SSクラスに所属するに相応しい・・・!」


猫さんの宣言に皆、歓声を上げる。俺は、神様の力がなければ、何も出来やしないのに。一人では、ダメダメな人間なんだ・・・。
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