41 / 43
41話 変装
しおりを挟む
皇帝の件と聞いて、監禁中の皇帝に何か変化があったのかと警戒したが、モーデルさんが話してくれた内容は、世界樹が帝都を覆った時のことだった。
根の張った状態の皇帝が、『全ての富も快楽も私のもの!』とか言いながら、呪文とも呻き声とも聞こえる言葉を発し、枝を操り襲ってきたというのを、目撃者した人が多数いるらしい。
そしてそれとは別、まだ根が張る前の皇帝は、延びてきた枝から必死に逃げようとしていたという、そんな発言をする目撃者も何人かいるようだ。
皇帝は世界樹を操っていたか、それとも操られていたか、それを判断するにしても、後者の目撃談は皇帝を庇っている可能性もあるから、もう少し情報が欲しいところではあるな。
「皇帝について、ご報告は以上です」
「報告してくれてありがとう、モーデルさん。興味深い話だった」
「いえ、それでもう一つご報告が。城内の回復した者ですが、帝都の救助活動に部隊を編成して向かうそうです」
こんな騒ぎの後、城内に入り込み皇帝を監禁したのが、サジタリウス家の紋章を付けた人間なのだ。
ひと悶着起こるかもとは、俺でなく家臣さん達も警戒はしていたが、全ての力を帝都の救助に使ってくれるのか。
これは有り難いね。
「それならその人達も含め、救助活動をする人達を、全て俺の前に連れてきてくれる?」
「はい、それは可能だと思いますが、何を?」
「体力と魔法を持続的に回復させる魔法を、その人達に掛けさせてもらう。ほら、この魔法……この効果が約二時間続く」
「これは!?」
今まで救助の指揮をとっているせいで、疲れの見え始めたモーデルさん。
彼女への回復ついでに、説明も不要になるだろうと、二つの魔法を掛けると目茶苦茶驚いた顔をする。
きっと体力魔力の回復が、この一瞬で確認出来たのだろう。
だがさすが親衛騎士団長になった人、驚いているだけでなく、これが救助活動でどれほど有益なことかを、直ぐに理解したようだ。
「急ぎ全員を集めてきます! 失礼します!」
一礼した後、鎧をガチャガチャガチャと鳴らしながら、城内へと爆走していった。
◆◆◆
モーデルさんが爆走していった後、黒いマスカレードマスクを取り出し、ある物に改造を始めた。
それは変装の定番アイテム、黒ぶち伊達メガネ。
家臣さん達は俺と初対面になるが、帝城の中の人間にはそうではない人が、ごくわずかだけどいる。
俺を世話してくれていたメイドさんや、淫乱童貞ビッチだった俺を目撃した人達だ。
俺を覚えているかは分からないが、仙人設定となった俺が、あの淫乱童貞ビッチとソックリでは、ちょっと都合が悪いからね。
「よし、出来た。おお! 名探偵だよ、名探偵!」
指でグリグリと改造すること数分。
思い描く黒ぶちメガネが出来上がり、装着した姿を窓ガラスに写してみれば、名探偵な感じで大満足。
「お待たせいたしました。先ずは一階にいた者に声を掛けましたので、順にこの場に参ります……あの、そのお姿は?」
また爆走して戻って来たモーデルさんが、俺の顔を見て不思議がる。
「ああ、これは魔道具だよ」
「そうですか。とてもお似合いです」
そうか、この世界で見たことのない黒ぶちメガネだが、変じゃないのならひと安心。
さあ、それじゃあ変装も決まったことだし、全力でいこうか。
根の張った状態の皇帝が、『全ての富も快楽も私のもの!』とか言いながら、呪文とも呻き声とも聞こえる言葉を発し、枝を操り襲ってきたというのを、目撃者した人が多数いるらしい。
そしてそれとは別、まだ根が張る前の皇帝は、延びてきた枝から必死に逃げようとしていたという、そんな発言をする目撃者も何人かいるようだ。
皇帝は世界樹を操っていたか、それとも操られていたか、それを判断するにしても、後者の目撃談は皇帝を庇っている可能性もあるから、もう少し情報が欲しいところではあるな。
「皇帝について、ご報告は以上です」
「報告してくれてありがとう、モーデルさん。興味深い話だった」
「いえ、それでもう一つご報告が。城内の回復した者ですが、帝都の救助活動に部隊を編成して向かうそうです」
こんな騒ぎの後、城内に入り込み皇帝を監禁したのが、サジタリウス家の紋章を付けた人間なのだ。
ひと悶着起こるかもとは、俺でなく家臣さん達も警戒はしていたが、全ての力を帝都の救助に使ってくれるのか。
これは有り難いね。
「それならその人達も含め、救助活動をする人達を、全て俺の前に連れてきてくれる?」
「はい、それは可能だと思いますが、何を?」
「体力と魔法を持続的に回復させる魔法を、その人達に掛けさせてもらう。ほら、この魔法……この効果が約二時間続く」
「これは!?」
今まで救助の指揮をとっているせいで、疲れの見え始めたモーデルさん。
彼女への回復ついでに、説明も不要になるだろうと、二つの魔法を掛けると目茶苦茶驚いた顔をする。
きっと体力魔力の回復が、この一瞬で確認出来たのだろう。
だがさすが親衛騎士団長になった人、驚いているだけでなく、これが救助活動でどれほど有益なことかを、直ぐに理解したようだ。
「急ぎ全員を集めてきます! 失礼します!」
一礼した後、鎧をガチャガチャガチャと鳴らしながら、城内へと爆走していった。
◆◆◆
モーデルさんが爆走していった後、黒いマスカレードマスクを取り出し、ある物に改造を始めた。
それは変装の定番アイテム、黒ぶち伊達メガネ。
家臣さん達は俺と初対面になるが、帝城の中の人間にはそうではない人が、ごくわずかだけどいる。
俺を世話してくれていたメイドさんや、淫乱童貞ビッチだった俺を目撃した人達だ。
俺を覚えているかは分からないが、仙人設定となった俺が、あの淫乱童貞ビッチとソックリでは、ちょっと都合が悪いからね。
「よし、出来た。おお! 名探偵だよ、名探偵!」
指でグリグリと改造すること数分。
思い描く黒ぶちメガネが出来上がり、装着した姿を窓ガラスに写してみれば、名探偵な感じで大満足。
「お待たせいたしました。先ずは一階にいた者に声を掛けましたので、順にこの場に参ります……あの、そのお姿は?」
また爆走して戻って来たモーデルさんが、俺の顔を見て不思議がる。
「ああ、これは魔道具だよ」
「そうですか。とてもお似合いです」
そうか、この世界で見たことのない黒ぶちメガネだが、変じゃないのならひと安心。
さあ、それじゃあ変装も決まったことだし、全力でいこうか。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
地球からきた転生者の殺し方 =ハーレム要員の女の子を一人ずつ寝取っていきます
三浦裕
ファンタジー
「地球人てどーしてすぐ転生してくんの!? いや転生してもいいけどうちの世界にはこないで欲しいわけ、迷惑だから。いや最悪きてもいいけどうちの国には手をださんで欲しいわけ、滅ぶから。まじ迷惑してます」
地球から来た転生者に散々苦しめられたオークの女王オ・ルナは憤慨していた。必ずやあのくそ生意気な地球人どもに目にものみせてくれようと。だが――
「しっかし地球人超つえーからのう……なんなのあの針がバカになった体重計みたいなステータス。バックに女神でもついてんの? 勝てん勝てん」
地球人は殺りたいが、しかし地球人強すぎる。悩んだオ・ルナはある妙案を思いつく。
「地球人は地球人に殺らせたろ。むっふっふ。わらわってばまじ策士」
オ・ルナは唯一知り合いの地球人、カトー・モトキにクエストを発注する。
地球からきた転生者を、オークの国にあだなす前に殺ってくれ。
「報酬は……そうじゃのう、一人地球人を殺すたび、わらわにエ、エッチなことしてよいぞ……?」
カトーはその提案に乗る。
「任せとけ、転生者を殺すなんて簡単だ――あいつはハーレム要員の女を寝取られると、勝手に力を失って弱る」
毎日更新してます。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる