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短編小説

珈琲と花束

今朝もいつものように、古びた喫茶店にやって来た。

店の主人に「いつものモーニングコーヒーお願いします」と告げ、定位置となったカウンターの隅に腰掛ける。

この喫茶店は昔ながらの雰囲気が残り、温かみの感じられる居心地の良い場所だ。

コーヒーを待っていると、窓の外に目が向く。
目の前には小さな花屋があり、そこで働く女性は、今日も真剣な表情で花束を束ねている。その女性は、何度か目にしたことがあったが、今まであまり興味を持ったことはなかった。

しかし今朝は違った…
なぜだろう、彼女がとても魅力的に見えた。
彼女の手つきや表情には、花束に込めた思いが感じられ、そんな彼女に心を打たれたのか、鼓動が早く波打つのを感じた。

コーヒーを飲みながら、彼女のことを考えているうちに、どうしても話しかけたくなった。
店の主人に「お勘定お願いします」と告げて喫茶店を出ると、彼女が働く花屋へと向かった。

彼女は、花束を束ねている最中だったが、思い切って声をかけると、彼女は振り返って微笑みかけてくれた。
年甲斐もなく緊張しながらも話を続けると、彼女も微笑みながら応えてくれた。

その日から、彼女との会話が習慣になった。時には、彼女が仕事を終えてから一緒にコーヒーを飲むこともあった。彼女と過ごす穏やかな時間が、私にとっては幸せな時間だった。

しかし、彼女に恋をすることは、私にとっては不安も伴うものだった。
彼女が私をどう思っているかわからない、彼女に想いを告げる事で、この関係が終わってしまうかもしれない。
そんな不安が心をよぎるが、私は抑えきれない想いを彼女に告げることにした。

ある日、私は彼女の好きだと言う花束を持って想いの丈を告げた。

彼女は驚いた顔をして、しばらく考え込んだようだが、最終的には私の想いに応えてくれた。

彼女と私の穏やかな時間は、特別な形となって続いて行くこととなった。