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第7章
第3話 あんまん
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俺が部屋に戻るとエミリーとサン・チュが泣きつくように『ご飯を食べたい!』と、言ったので着替えを済ませ、すぐ外に出た。
「とりあえず……ここの宿は安いから、しばらく過ごすとして……飯は街中に食べに行くか?」
「「賛成! 早く食べに行こう!」」
二人の息はピッタリだった。
俺は食ったから何とかなってるけど……こいつら相当腹が減っているな。
「ねぇねぇ。私、美味しそうな店があったから、そこに行きたい!」
「ん……いいよ。エミリーもいいよな?」
「飯……飯……飯」
もう俺達のことなんて眼中に無いんだろうな。
「じゃあ、私に付いてきて!」
「おう! ……近いところにあるのか?」
「ちょっとだけ……遠いかな」
「なら、そこら辺の屋台で軽く食べてから行こうぜ」
「賛成です! 賛成ですー!」
一日、食べないだけでここまで食に飢えてられるのはとても幸せなことだ。と、思う。
「で、何を食べるのー?」
「んー……」
と、話しているとスラム街と普通の街並みの切れ目のような場所に出る。
段々と店が広がり美味しそうな匂いが広がってくる。
「歩きながらこれだ! って思ったやつにしようぜ」
「あれだ! それだ! これだ!」
隣のエミリーがある食品、全てに指をさし食べたいとただをこね始める。
わたあめやりんご飴といった腹にたまらなそうな物からチョコプリンやシュークリームといった微妙なものまで。
そんな時、俺の目に一つの食品が映る。
「……あれだ!」
「たしかにお腹にたまるしいいかもね!」
「あれなら食べていいんですね……!」
と、俺達が食べることにした物。
それは、甘いものを皮が包み温かく、冷えきった心を癒してくれる。
そう……『あんまん』だ。
普段、俺は肉まんやピザまんしか食べない。
だが……ここはお菓子地区。
そんなものは置いていないだろう。たまにはあんまんもいいしな。
「あんまん三つ下……痛っ!」
俺の両足が蹴られる。
蹴られた方を見ると「もっと食わせろ」と、言わんばかりに睨んでくる。
「すみません……あんまん六……痛いって!」
こんなやり取りをしていると結局、あんまんは三十個まで到達していた。
「もう増やさないからな! あんまん三十個下さい!」
「まいど!」
上機嫌の店主はあんまん一つ一つを袋に閉じて大きな袋に入れた後、俺に渡した。
「とりあえず、そこら辺に座って食べますか」
「じゃあ、そこに座ろっかー!」
と、ベンチを指さす。
丁度、三人がけのベンチだ。
「おい、、座る前に袋を奪って食べようとするな!」
エミリーさんは食になるとどうしてここまでだらしなくなってしまうのだろうか……。
そう思いながらベンチに腰をかける。
「はい、どうぞ」
俺は大きな袋から、あんまんを取り出しやすいように広げる。
その瞬間、俺の顔面に空気を切り裂くような風が吹き荒れる。
……攻撃が何か分からないけど食べ物を取る時にそんなのを使うな!
「美味いぞ……! これは!」
と、俺の手に持っている袋から次々とあんまんをかっさらっていく。
隣からはあんこの甘い匂いがしてきて食欲をそそる。
……俺も食べるか。
袋からあんまんを取り出し、口に運ぶ。
その時、鼻筋に湯気が当たる。それが、また心地よい。
『これが肉まんやピザまんだったらなー……』
と、少し頭で思ってしまったが、そのまま口に運び、かぶりつく。
こ、これはっ……!?
ふわふわの生地にあんこ……それもこしあんがいい感じにマッチする。
何だ? 何だ? このマッチは甘さがあるからこそ分かる、このふわふわの生地の良さ。
その生地に染み込むようにこしあんが埋め尽くされている……!
「う、美味い……」
「「ですよね!」」
これなら、あんまんはあまり食べずに避けてきたがいくらでも食べれそうだ……!
そう思い、大きな袋に手を突っ込む。
ゴソゴソシャッシャッ
袋にあんまんは残っていなかった。
俺は袋の中を何度も回すように手をグルグルさせたり袋を裏返したり振り回したりする。
だが、あんまんは出てこない。
どこかに消えてしまったのだろうか。パラレルワールドか何かに飛ばされてしまったのだろうか。
俺は落胆するように肩を落とす。
すると……女神様か何かが俺の肩に手を乗せる。
「ほら……ここにありますよ」
俺は声がかかった方に顔を上げる。
エミリーだ。エミリーが手にあんまんを持っていたのだ。
「ぁぁ。女神様……そのあんまんを下さい」
「分かりま……せん」
パクッ
あんまんはエミリーのブラックホール(胃袋)に飛ばされてしまった。
「ふぅ……満足です! サン・チュさんの行きたい店とやらに行きましょう!」
「あれだけ食って、まだ食うのかよ!」
「まぁまぁ、そう怒らないの! 行こう行こう!」
サン・チュも物凄いスピードで食ってた張本人だからな……。
こっそり食ってしまったせいで怒りづらい俺は肩を落とし、とぼとぼとサン・チュが紹介したいという店に向かった。
取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術
カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム
迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経
おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知
つまようじ回避マン
お色家 変装『舞妓』
地球のゲームでもあったようなレベルの煽り
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力
「とりあえず……ここの宿は安いから、しばらく過ごすとして……飯は街中に食べに行くか?」
「「賛成! 早く食べに行こう!」」
二人の息はピッタリだった。
俺は食ったから何とかなってるけど……こいつら相当腹が減っているな。
「ねぇねぇ。私、美味しそうな店があったから、そこに行きたい!」
「ん……いいよ。エミリーもいいよな?」
「飯……飯……飯」
もう俺達のことなんて眼中に無いんだろうな。
「じゃあ、私に付いてきて!」
「おう! ……近いところにあるのか?」
「ちょっとだけ……遠いかな」
「なら、そこら辺の屋台で軽く食べてから行こうぜ」
「賛成です! 賛成ですー!」
一日、食べないだけでここまで食に飢えてられるのはとても幸せなことだ。と、思う。
「で、何を食べるのー?」
「んー……」
と、話しているとスラム街と普通の街並みの切れ目のような場所に出る。
段々と店が広がり美味しそうな匂いが広がってくる。
「歩きながらこれだ! って思ったやつにしようぜ」
「あれだ! それだ! これだ!」
隣のエミリーがある食品、全てに指をさし食べたいとただをこね始める。
わたあめやりんご飴といった腹にたまらなそうな物からチョコプリンやシュークリームといった微妙なものまで。
そんな時、俺の目に一つの食品が映る。
「……あれだ!」
「たしかにお腹にたまるしいいかもね!」
「あれなら食べていいんですね……!」
と、俺達が食べることにした物。
それは、甘いものを皮が包み温かく、冷えきった心を癒してくれる。
そう……『あんまん』だ。
普段、俺は肉まんやピザまんしか食べない。
だが……ここはお菓子地区。
そんなものは置いていないだろう。たまにはあんまんもいいしな。
「あんまん三つ下……痛っ!」
俺の両足が蹴られる。
蹴られた方を見ると「もっと食わせろ」と、言わんばかりに睨んでくる。
「すみません……あんまん六……痛いって!」
こんなやり取りをしていると結局、あんまんは三十個まで到達していた。
「もう増やさないからな! あんまん三十個下さい!」
「まいど!」
上機嫌の店主はあんまん一つ一つを袋に閉じて大きな袋に入れた後、俺に渡した。
「とりあえず、そこら辺に座って食べますか」
「じゃあ、そこに座ろっかー!」
と、ベンチを指さす。
丁度、三人がけのベンチだ。
「おい、、座る前に袋を奪って食べようとするな!」
エミリーさんは食になるとどうしてここまでだらしなくなってしまうのだろうか……。
そう思いながらベンチに腰をかける。
「はい、どうぞ」
俺は大きな袋から、あんまんを取り出しやすいように広げる。
その瞬間、俺の顔面に空気を切り裂くような風が吹き荒れる。
……攻撃が何か分からないけど食べ物を取る時にそんなのを使うな!
「美味いぞ……! これは!」
と、俺の手に持っている袋から次々とあんまんをかっさらっていく。
隣からはあんこの甘い匂いがしてきて食欲をそそる。
……俺も食べるか。
袋からあんまんを取り出し、口に運ぶ。
その時、鼻筋に湯気が当たる。それが、また心地よい。
『これが肉まんやピザまんだったらなー……』
と、少し頭で思ってしまったが、そのまま口に運び、かぶりつく。
こ、これはっ……!?
ふわふわの生地にあんこ……それもこしあんがいい感じにマッチする。
何だ? 何だ? このマッチは甘さがあるからこそ分かる、このふわふわの生地の良さ。
その生地に染み込むようにこしあんが埋め尽くされている……!
「う、美味い……」
「「ですよね!」」
これなら、あんまんはあまり食べずに避けてきたがいくらでも食べれそうだ……!
そう思い、大きな袋に手を突っ込む。
ゴソゴソシャッシャッ
袋にあんまんは残っていなかった。
俺は袋の中を何度も回すように手をグルグルさせたり袋を裏返したり振り回したりする。
だが、あんまんは出てこない。
どこかに消えてしまったのだろうか。パラレルワールドか何かに飛ばされてしまったのだろうか。
俺は落胆するように肩を落とす。
すると……女神様か何かが俺の肩に手を乗せる。
「ほら……ここにありますよ」
俺は声がかかった方に顔を上げる。
エミリーだ。エミリーが手にあんまんを持っていたのだ。
「ぁぁ。女神様……そのあんまんを下さい」
「分かりま……せん」
パクッ
あんまんはエミリーのブラックホール(胃袋)に飛ばされてしまった。
「ふぅ……満足です! サン・チュさんの行きたい店とやらに行きましょう!」
「あれだけ食って、まだ食うのかよ!」
「まぁまぁ、そう怒らないの! 行こう行こう!」
サン・チュも物凄いスピードで食ってた張本人だからな……。
こっそり食ってしまったせいで怒りづらい俺は肩を落とし、とぼとぼとサン・チュが紹介したいという店に向かった。
取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術
カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム
迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経
おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知
つまようじ回避マン
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