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第二章 ~第二の砦~

第十七話 転入生

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 今日も、いつも通りの学校だ。
 俺は席に着き、『暇だな』と思う。そして、机にうつ伏せる。

 と、とんでもなく眠い……。

 そして、朝会が始まる。

 ……はぁ。早く終わらないかな。

「今日は転入生を紹介しまーす」

 そう言う、担任の声。
 て、転校生?

 そこまでの流れの話を全く聞いてなかったけど……マジかよ。

「それでは、紹介します。『田中(たなか) やよい』さんです」

 ガラガラ

 前の引き戸が開かれる。

「うわぁ……すっごい美人」「か、可愛くないか?!」

 教室がざわめく。
 確かに美人だ。とても綺麗な髪は、スカート丈近くまで伸びている。
 顔は……後ろなので、まだ見えない。

 だが……。俺が驚いたのは、そこだけじゃない。
 魔王様を友達のいとこ……と、話したのだが、その時の名前は『田中』だ。
 そして、転入生を除いて、田中はいない……。

 ま、マジかよ。

 前に立ち、ペコリと頭を下げる。

「よろしくお願いします。紹介があった通り、田中 やよい、と言います」


 め、めっちゃ可愛い。モデルか何かをしているのか??

 顔立ちは、とても整っている。服装、スタイルと、共にピシッとしていて、生徒会長に近い感じだ。
 生徒会長に遅れをとってない……と、いうより上なんじゃないか?!
 そして、愛想がない部分まで生徒会長そっくりだ。

「じゃあ……そこ、右端の桐生君の後ろね」

 お、俺?!
 少しだけ、周りの視線がキツくなった気がした。

 どんどんと美少女が近付いてくる。何か、テンション上がるな。
 どんどん近づき、俺の横を通り過ぎていく。

 ……緊張したー。

 と、ホッとしていた、その時……。

「……よろしくお願いします」

 耳元で囁く声が。
 その声は、明るく、愛想のある声だった。

「……ふぇ?!?!」

 言葉にならないような声が出る。
 周りは、そんな俺をジッと睨んでいた。
 み、みみ、耳、耳元で囁かれていたのバレた?!

『ふふ……』

 彼女のそんな笑い声が聞こえたような気がした。

 まぁ、それからは普通に授業が進んだ。まぁ、眠いから、俺はこっそり寝てたけど。
 そして、飯の時間。俺は弁当なので、後ろに取りに行く。
 席を立ち、後ろに行こうと一歩、足を運ぶ。

「……」

 何かにぶつかった。柔らかいものに、だ。
 俺はしっかりとぶつかった方を確認する。

「ご、ご、ごめんなさい!」

 嘘だろ、転入生の胸に激突?! しかも美人?! シャレにならねぇだろ!

「全然、気にしなくて大丈夫ですよ。それより、一緒にご飯、どうですか?」
「ほ、他の女子とかと、食べなくていいんですか?」
「……その、あなたがいいんです」

 と、頬を膨らませた。

「わ、分かりました」

 俺は彼女と席を合わせ、弁当を広げる。
 こ、こんな事をして、大丈夫なのか?! だんだん不安になってきた。
 ま、まぁ、今日も一緒に食べる予定のやつなんて、いなかったし……いいよな!

 俺は彼女と向き合う。

「あはは……何だか照れますね」

 な、何を言っているんだ、俺は!

「ですね……。でも、一つ。お願いが……」
「は、はい?」
「私と友達になって下さい」
「も、もふぃろんです!」

 か、噛んでしまった。

「友達なんですから、敬語はやめましょう」
「そ、そうで……だね」
「うん!」

 それからは夢のような光景だった。
 こういうのも何だが。彼女が俺だけに、こうして笑いかけてくれてると思うと……それは。
 ……って、何浮かれてるんだ、俺は。


 そして、飯を食べ終わり、少し話をした後、彼女と別れた。

 ……楽しかったのはいいんだけれど。こっから怖えぇ!!
 男子共にぶち殺されるんじゃないか? 命日だから、神様が特別に幸せをくれたんじゃないか?

 ブルブル震えながら、席を立ち、自ロッカーへ弁当箱をしまう。
 その時……いきなり肩を叩かれた。

「お前、凄いなー!」「どうやったんだ?!」

 と、一斉に男共に囲まれる。

 そして、そこからは質問攻め。俺は何とか返していく。ちょこっとボケを入れながら。

「ははっ……! お前って、成績良いし、ピシッとしてるから、絡みづらいと思ってたけど、面白いなぁ!」
「これからも話そーぜー」

 と、ほとんどの男子が去っていった。

 俺は『陰キャ』から『普通』に進化した!
 こ、こんなに話したのは久しぶりな気がするぜ……。

 そして、残った男子達と歓談をしていると、チャイムが鳴り響いた。

「桐生 宗一さん。桐生 宗一さん。生徒会室まで来てください。繰り返し……」

「お前じゃん。やっぱり凄いなー! 二日連続だぜ?」
「そう……だな!」

 昨日のことを思い出し、少しだけテンションが上がってしまった。
 う、浮気か? いや、やよいとは友達だからな!

「じゃあ、また話そうぜー」

 そう言われるのに、対して、手を振り返す。
 そして、生徒会長まで向かい、部屋の前に立つ。

「し、失礼しまーす……」

 部屋に入ると、生徒会室に生徒会長が一人。
 コホンと咳払いをしていた。

「何の用でしょうか」
「……嘘つき」
「え?! な、何か悪いことをしましたか?」

 俺は気に障ることをしてしまったみたいだ……。
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