上 下
26 / 54
第二章 ~第二の砦~

第十四話 形状

しおりを挟む
 まぁ、作戦を考える。なんて、言っても、特に考えることは無い。
 何故なら、本に触れてはいけない。と、しか言い切れないからだ。

「魔王様。作戦なんてものは特に無いよ」
「そっかー」
「家を出る時間は十一時頃。その、三十分前くらいに親が寝るから」
「りょーかーい」


 この後は魔王様と特に話すこともなく、時間は十時半を過ぎていた。

「おい。魔王様、そろそろ時間だからゲームやめろ」
「はいよ!」

 丁度、キリがいいのか、魔王様はゲームをあっさりやめた。

「……お前、意外と早くやめたな」
「そうだぜ! よし、行くか!」
「いいけど……。親が寝始めたばかり……」
「その点は安心しろ!」

 そう言うと、俺の体に手を当てる。

「うわっ……! と?!」

 気が付けば、家の外まで出ていた。

「これくらいの距離ならワープ出来るぜ!」
「め、飯の力って、すげぇ……」
「俺の力だ!!」

 そんなツッコミを聞いた後に歩き始める。そして、少しすると、校舎前まで、辿り着いた。

「門、閉まってるけど、ワープで中に入ろうか」
「そう……だな」

 すると、魔王様は俺に手を触れる。気が付けば、体は校庭に立っていた。

 そんな校庭から、見える景色は真っ暗な校内だった。
 砦内に何だか似ている気がする。

「よし……。行くぞ!」

 俺達は校舎裏まで向かい、詠唱を始める。
 そして、調子の良い、魔王様は難無く詠唱を行い、不思議な感覚と共に教室内の光景が目に映る。

 でも……。その景色はこの前と違った。
 机が、もう一つ追加され、一輪の花は無くなっていた。

『……? ま、まぁ、気にすることは無いか』
『何がだ……? あー、あの机か。関係ないだろ。とりあえず、外に出るぞ!』

 そう言いながら、扉を開ける。
 そこも、この前とは違った。
『端っこの部屋』と、いうのは変わらないが、手前から、一部屋……。いや、二部屋前までの床から光が見えていた。
 教室の隙間から光が見えているのだろう。

 そして、もう一つ。

 真っ黒で何も見えなかったはずの、外は夜空くらいの明るさになっていた。

『……何だか、少しだけ変わっているな』
『この前とは形状が違うかもしれないなら気を付けろよ……』
『何かあったら、お前に頼むよ。魔王様』
『おう! 任せとけ!』

 と、小さい体ながらに胸を張る。

 やっぱり、砦内の魔王様は頼り甲斐があるなー。と、関心しながら歩き始める。

 光の差し込んでいる、部屋を覗くと、暗い影で出来たような人達が授業を行っていた。黒板にもしっかり字が書いてある。

 それは、人だけを除けば、授業そのものだった。

『何だか、気持ち悪いな……』
『確かに。授業をしているのに、声は聞こえない。人は影。だしな……』

 そんな奇妙な教室を二つ抜け、暗い廊下に入る。

『この前よりは、マシだけど……。暗いな』
『確かに……そうだな』

 今回は、短くなっているのだろうか……。
 そして、黙々と歩き続け、5分くらいが経った。
 すると、光が見えてきた。
 この前よりも確実に短くなっている。

 だけど……。

『この前より、明らかに暗くなっているな』
『だな、明るさは収まっている。普通に先が見えるくらいだもんな』

 トンネルを抜ける……。と、いうよりは少し明るいところへ行く。くらいの明るさだった。

 そして、そこへ向かうと、やはり『図書室』だった。

 が、この前に比べ、本棚からは少しの光が出ているだけで、金ピカな訳では無い。
 どれくらい光っているのか、分かりやすく言うのなら、水滴が太陽に照らされるくらいだ。

 だが、広さは相変わらずだ。

『こ、怖いよぉ……』
『この前みたいに、眩しくはないぞ?』
『そこは関係ない!』

 やっぱり本なのか……。何があったんだよ。

『そ、そっか。じゃあ、魔王様はここで待機して見張っててくれよ』
『俺は、また探索してくるから』
『わ、分かったぜ』

 少し、心配だが、部屋の探索を始める。

 とりあえず見渡してみて、気になる本は無かった。
 なので、この前と同じ。
 闇に包まれた、本がある通路へ入る。

「あれ……どこだ? ……あった!」

 その闇に包まれいた本を見つける。
 この前より、黒さが無くなっていた。周りの明かりが少し収まったこともあるとは思うが。

 黒、よりは……紺に近いような色。

 触れても大丈夫な気がするが、何が起こるかは分からない。
 とりあえず……。他の場所も見てみるか。

 そう思い、俺は他の通路へと移動した。


 探し始めて、何通路だったのかも思い出せない。

 様々なジャンルがあるので、面白いことは面白いのだが……長すぎるだろ!
 魔王様との距離もあるし……さすがに危険じゃないか?

 そう思った、俺は、急いで引き返す。
 数分すると、元の場所に戻ってくる。

『だいぶ、かかってたなぁ……』

 念話で、その声が聞こえる。
 魔王様は眠そうだった。まぁ、かなりの時間を暇にさせてしまったからな。

『ごめん。ごめん。思ったより長くてさ……』

 まだ、通路はあったが、その事は黙っておこう。
 伝えたところで意味は無さそうだしな。

 そして、奥まで行って思ったことがある。

 RPGのように進むのならば……。そこにある、紺色のオーラを纏った本。
 これは絶対、鍵になってくる。

 中の形状が変わっているのなら、本を触れた時の反応も変わっているはず。
 そう思い、紺色のオーラを纏った本の所へ向かった……。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

魔法学のすゝめ!

蒔望輝(まきのぞみ)
ファンタジー
陸と海、自然に恵まれたとある惑星―― この星では、科学とともに魔法学が発展している。同時に、魔法を使える者とそうでない者との確執が絶えず生まれていた。 魔法大国の首都ペンテグルス、その外れに住むシュウ・ハナミヤは、日々の生活のためアルバイト三昧の生活を送る。しかし、偶然にも世界随一の魔法学専門学校《セントラル》の特進クラスに入学することとなる。 そこは、一流の魔法使いが集う女の子だけのクラスであった。 本作品は「小説家になろう」様でも掲載中です。 ncode.syosetu.com/n8296hi/

それはまるで魔法のようで

綿柾澄香
ファンタジー
 久島高校に通う柏木アリサは魔女であることを隠しながら、日々を過ごしていた。  そんなある日、一人の女性と出会う。とても美しいその女性は雨雲を消し去り、消えてしまう。まるで魔女のように。  その日の放課後、アリサはロンドンで魔女が武装蜂起を起こしたというニュースを知る。それにより、アリサの日常は大きく脅かされることになる、と思ったものの、実際には特に変わりなく日々は過ぎていく。  そうして魔女の武装蜂起から一週間後、アリサの住む街、秋馬市が唐突に孤立した。周囲の街々と連絡が取れなくなり、さらには物理的にも街の外に出ることができなくなったのだ。  そうして孤立した街で、アリサは事態収拾のために奔走する。 ※プロローグ、エピローグ込みで全30話です。  現代に生きる一人の魔女の物語です。  すごく読みやすい、という文章ではなく、ストーリーも若干スローテンポかもしれませんが、ラストの部分の展開だけはずっと頭の中にあって、そこに向かってなんとか書き上げました。  なので、最初のほうはあまり面白くないと思っても、最後まで読めば、きっとなにか感じるものがあるのではないか、と思います……そう思いたいです。  エピローグのラスト三行が書きたくて、頑張りました。その部分までぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。  よろしくお願いします。 イラストはノーコピーライトガール様よりお借りしました。

「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび
恋愛
「結婚しよう」 アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。 しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。 それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

月夜の理科部

嶌田あき
青春
 優柔不断の女子高生・キョウカは、親友・カサネとクラスメイト理系男子・ユキとともに夜の理科室を訪れる。待っていたのは、〈星の王子さま〉と呼ばれる憧れの先輩・スバルと、天文部の望遠鏡を売り払おうとする理科部長・アヤ。理科室を夜に使うために必要となる5人目の部員として、キョウカは入部の誘いを受ける。  そんなある日、知人の研究者・竹戸瀬レネから研究手伝いのバイトの誘いを受ける。月面ローバーを使って地下の量子コンピューターから、あるデータを地球に持ち帰ってきて欲しいという。ユキは二つ返事でOKするも、相変わらず優柔不断のキョウカ。先輩に贈る月面望遠鏡の観測時間を条件に、バイトへの協力を決める。  理科部「夜隊」として入部したキョウカは、夜な夜な理科室に来てはユキとともに課題に取り組んだ。他のメンバー3人はそれぞれに忙しく、ユキと2人きりになることも多くなる。親との喧嘩、スバルの誕生日会、1学期の打ち上げ、夏休みの合宿などなど、絆を深めてゆく夜隊5人。  競うように訓練したAIプログラムが研究所に正式採用され大喜びする頃には、キョウカは数ヶ月のあいだ苦楽をともにしてきたユキを、とても大切に思うようになっていた。打算で始めた関係もこれで終わり、と9月最後の日曜日にデートに出かける。泣きながら別れた2人は、月にあるデータを地球に持ち帰る方法をそれぞれ模索しはじめた。  5年前の事故と月に取り残された脳情報。迫りくるデータ削除のタイムリミット。望遠鏡、月面ローバー、量子コンピューター。必要なものはきっと全部ある――。レネの過去を知ったキョウカは迷いを捨て、走り出す。  皆既月食の夜に集まったメンバーを信じ、理科部5人は月からのデータ回収に挑んだ――。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...