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第一章 ~第一の砦~
第二話 迷路
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この牢は机が端っこに一つ置いてあるだけで他には何も無い。
『まず、ここからどうやって出るんだ?』
『それは……あれだ』
勢いのある掛け声を自分からしておいて何も思いついてないのか……。
『普通にガチャって……』
そんな牢があってたまるか!
仮に試してみたとして何が起きるか分からないから触れるのは危険だろ……。
『触れてみて罠でも発動したらどうするんだよ……』
『確かにそうだな……なら、、んー』
『……とりあえず、あの机開けてみるか?』
この机は上と下に一つずつ引き出しがあるだけでそれ以外には何も無い。
まず俺は上の引き出しを開ける。
中身はスルメイカが二、三個入っている袋。
『そうか……! 思いついたぞ!』
と、魔王様が何か閃いたかのように明るい声を出す。
『その袋に入っているスルメイカを使って牢を開けるんだよ。良くあるだろ? 鉄で出来ている長い棒でガチャガチャって開けるの』
魔王様はドラマか何かを見ていたのか……? と、思うくらいにそういう事を言うよな。
『無理だろ』
『やってみなきゃ分からないだろー!』
『……じゃあ下の引き出しを開けてみてからな』
下の引き出しは空っぽだった。
どうやってここから出ろと……?
そう思いながらも魔王様に文句を言われると面倒なのでスルメイカを手に持ち扉近くに向かう。
『それで開けてみろって』
言われるがまま俺は扉に手をかける。
あれ……結局無用意に扉に触れちゃった。まぁ何も起こらなくて良かったぜ。
そして扉を抑えようと少し前に押す。
ガチャ
なんと扉はそのまま前に開かれたのだ。
『……よし。行くか』
俺は少し呆然としていたが魔王様にそう言われたので牢から出た。牢から出ると前には同じような形状の牢。左にながい通路とそれに接する牢。右は行き止まりになっていた。恐らく一番右側の牢だったのだろう。
手に持っていたスルメイカを念のためリュックに詰めた。
どんな物がどこで役立つかは分からないからな。
そして俺は左側。広い通路の方を向き歩き始める。
俺は歩きながら、この砦について話す。
『ここまでザル警備だと逆に罠か何かじゃないか?』
『んー……今はまだ、わからないから少し気をつけながら歩いた方がいいかもな』
気をつけろと言われたので辺りを見渡しながら歩くと一つの事に気づき驚き声を上げてしまう。
牢の中はあいだあいだに人が入っていたのだ。正確には人型の何か。目がついてるだけ。霧がぼやけて出来たような感じだった。
『な、なかなかに怖いな……』
『この人型の何かは敵の可能性もありえるって事だけ覚えておいてくれ』
と、牢から出てから割と頼りがいのある魔王様。
これで体まで通常サイズなら完璧なんだが。
と、歩き始めて遠くからは決して見えなかった十字路を発見する。
『ま、曲がるか?』
『右に曲がってみるぞ』
こんだけ広いからかここまではザル警備なのか? まぁ分からないがそろそろ何かが起こる気がする。
まぁ魔王様が言うのなら従って右に曲がるが。
右に曲がり数十メートルすると、また十字路に出る。
『ここは?』
『左』
その後も歩き続けたが十字路。
どこを歩いても十字路。
まもなく一時間経つのではないのだろうか。
俺と魔王様は途方に暮れていた。
そんな時、奥をじっくり見ても十字路の無い道があった。
『魔王様ぁ! あれじゃないですか』
『本当だ……! 絶対にあれだろ!』
今までは死にかけのような声を出していたがトーンが一気に上がる。
俺は疲れてきっていた足に鞭打って全力で走る。
『……』
俺と魔王様は同じ場所。一番最初の場所に戻ってきていた。
『今日は帰りませんか……? 何か策を打たないと意味が無いような……』
『俺も流石に疲れた……早く砦を落とさないとだが……賛成だ』
魔王様はまだ歩いてないで乗ってるだけだから気持ち楽だったんだろうな……と、思っていると慣れない感覚と共にバス停後ろに戻ってきていた。
時間がそこそこ経っていたのか日は沈んできていた。
戻った瞬間は後ろに放り出されるような感じだったから誰かがいなくて良かったとホッとしながらも今回の砦に関して疑問点が出てくる。
『守ろうとする守護兵がいないことも気になったけどあの道は何だよ……』
『俺にも全くわからん。流石にあれじゃあ迷路だよな』
と、二人で考え家に帰る。
家に帰ってからもベットで寝転び考える。
寝転んで考えていると魔王様の発言の一つを思い出す。
「……! 魔王様? 確か勇者が力を得る。そしてその人の思い出で砦の形状はまるっきり『変わる』って言ったよな」
「言ったぞー、それがどうした?」
「ならさ……あの複雑な道。俺らが今、頭の中で考えこんがらがっているのと一緒で勇者が力を得た人間が迷ってるから複雑って事じゃないか?
つまり力を得た人間の方を何とかしないと一生、砦は落とせないし水晶の近くには近寄れないってことはないか?」
「……確かに。それなら辻褄が合う……かもしれない」
「俺が勝手な推測で今、考えてみたんだけど。その人間は犯罪者の可能性が高いと思う。
牢獄の時点でそもそもおかしいとは思ったんだが、それなら警察とかだってありえる。
だけどな。あの『ザル警備』。こんなのを警察がやるとは思えない……だから勇者と契約した人間は犯人だと思う」
「その推測。だいたい合ってるかもな……」
仮に合っていたとして、そんなやつと俺は話せるとも思えないしどうすればいいのかも分からない。
――早速行き止まりなのか??
『まず、ここからどうやって出るんだ?』
『それは……あれだ』
勢いのある掛け声を自分からしておいて何も思いついてないのか……。
『普通にガチャって……』
そんな牢があってたまるか!
仮に試してみたとして何が起きるか分からないから触れるのは危険だろ……。
『触れてみて罠でも発動したらどうするんだよ……』
『確かにそうだな……なら、、んー』
『……とりあえず、あの机開けてみるか?』
この机は上と下に一つずつ引き出しがあるだけでそれ以外には何も無い。
まず俺は上の引き出しを開ける。
中身はスルメイカが二、三個入っている袋。
『そうか……! 思いついたぞ!』
と、魔王様が何か閃いたかのように明るい声を出す。
『その袋に入っているスルメイカを使って牢を開けるんだよ。良くあるだろ? 鉄で出来ている長い棒でガチャガチャって開けるの』
魔王様はドラマか何かを見ていたのか……? と、思うくらいにそういう事を言うよな。
『無理だろ』
『やってみなきゃ分からないだろー!』
『……じゃあ下の引き出しを開けてみてからな』
下の引き出しは空っぽだった。
どうやってここから出ろと……?
そう思いながらも魔王様に文句を言われると面倒なのでスルメイカを手に持ち扉近くに向かう。
『それで開けてみろって』
言われるがまま俺は扉に手をかける。
あれ……結局無用意に扉に触れちゃった。まぁ何も起こらなくて良かったぜ。
そして扉を抑えようと少し前に押す。
ガチャ
なんと扉はそのまま前に開かれたのだ。
『……よし。行くか』
俺は少し呆然としていたが魔王様にそう言われたので牢から出た。牢から出ると前には同じような形状の牢。左にながい通路とそれに接する牢。右は行き止まりになっていた。恐らく一番右側の牢だったのだろう。
手に持っていたスルメイカを念のためリュックに詰めた。
どんな物がどこで役立つかは分からないからな。
そして俺は左側。広い通路の方を向き歩き始める。
俺は歩きながら、この砦について話す。
『ここまでザル警備だと逆に罠か何かじゃないか?』
『んー……今はまだ、わからないから少し気をつけながら歩いた方がいいかもな』
気をつけろと言われたので辺りを見渡しながら歩くと一つの事に気づき驚き声を上げてしまう。
牢の中はあいだあいだに人が入っていたのだ。正確には人型の何か。目がついてるだけ。霧がぼやけて出来たような感じだった。
『な、なかなかに怖いな……』
『この人型の何かは敵の可能性もありえるって事だけ覚えておいてくれ』
と、牢から出てから割と頼りがいのある魔王様。
これで体まで通常サイズなら完璧なんだが。
と、歩き始めて遠くからは決して見えなかった十字路を発見する。
『ま、曲がるか?』
『右に曲がってみるぞ』
こんだけ広いからかここまではザル警備なのか? まぁ分からないがそろそろ何かが起こる気がする。
まぁ魔王様が言うのなら従って右に曲がるが。
右に曲がり数十メートルすると、また十字路に出る。
『ここは?』
『左』
その後も歩き続けたが十字路。
どこを歩いても十字路。
まもなく一時間経つのではないのだろうか。
俺と魔王様は途方に暮れていた。
そんな時、奥をじっくり見ても十字路の無い道があった。
『魔王様ぁ! あれじゃないですか』
『本当だ……! 絶対にあれだろ!』
今までは死にかけのような声を出していたがトーンが一気に上がる。
俺は疲れてきっていた足に鞭打って全力で走る。
『……』
俺と魔王様は同じ場所。一番最初の場所に戻ってきていた。
『今日は帰りませんか……? 何か策を打たないと意味が無いような……』
『俺も流石に疲れた……早く砦を落とさないとだが……賛成だ』
魔王様はまだ歩いてないで乗ってるだけだから気持ち楽だったんだろうな……と、思っていると慣れない感覚と共にバス停後ろに戻ってきていた。
時間がそこそこ経っていたのか日は沈んできていた。
戻った瞬間は後ろに放り出されるような感じだったから誰かがいなくて良かったとホッとしながらも今回の砦に関して疑問点が出てくる。
『守ろうとする守護兵がいないことも気になったけどあの道は何だよ……』
『俺にも全くわからん。流石にあれじゃあ迷路だよな』
と、二人で考え家に帰る。
家に帰ってからもベットで寝転び考える。
寝転んで考えていると魔王様の発言の一つを思い出す。
「……! 魔王様? 確か勇者が力を得る。そしてその人の思い出で砦の形状はまるっきり『変わる』って言ったよな」
「言ったぞー、それがどうした?」
「ならさ……あの複雑な道。俺らが今、頭の中で考えこんがらがっているのと一緒で勇者が力を得た人間が迷ってるから複雑って事じゃないか?
つまり力を得た人間の方を何とかしないと一生、砦は落とせないし水晶の近くには近寄れないってことはないか?」
「……確かに。それなら辻褄が合う……かもしれない」
「俺が勝手な推測で今、考えてみたんだけど。その人間は犯罪者の可能性が高いと思う。
牢獄の時点でそもそもおかしいとは思ったんだが、それなら警察とかだってありえる。
だけどな。あの『ザル警備』。こんなのを警察がやるとは思えない……だから勇者と契約した人間は犯人だと思う」
「その推測。だいたい合ってるかもな……」
仮に合っていたとして、そんなやつと俺は話せるとも思えないしどうすればいいのかも分からない。
――早速行き止まりなのか??
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