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第147話 急襲!
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馬車が街道を進んでいく。
人通りの多い街道ではあるが、その混雑具合にはムラがある。
比較的閑散とした場所もあり、この十数分ほどは一台の馬車、1人の通行人ともすれ違うことがなかった。
「お2人とも、ご気分はいかがですか?」
ジリアンは馬車に揺られながらヴァージルやウェンディーの顔色を見た。
まだ8歳と6歳の兄妹は少しばかりの仮眠を取ったおかげで、多少スッキリとした顔をしている。
「心配ないよ。ありがとう。ジリアン、リビー」
「ワタシも大丈夫よ」
2人はそう言うと笑顔で頷いた。
両親と離れて不安な時間を過ごしている2人だが、幼いなりに精一杯耐えているのだ。
そしてジリアンらに心配をかけまいとしている。
その健気さにジリアンは胸が熱くなるのを感じた。
(ついこの前まで赤子だったお2人が少しずつ成長されている)
思えばジリアンもリビーも、ヴァージルやウェンディーがまだ乳飲み子だった頃から見守り続けて来た。
息子と娘をその腕に抱いて幸せそうに微笑むクローディアを見て、自分たちも幸せを感じたものだ。
ジリアンもリビーも自身の子供はいない。
だからこそヴァージルやウェンディーを己の子供のようにかわいがってきた。
(ヴァージル様もウェンディー様もいつかは大人になり立派な人物になられるだろう。それをこの目で見届けるためにも、絶対にお2人をお守りせねば……)
ジリアンがそう思ったその時だった。
唐突に風切り音と金属音が聞こえると、馬車が大きな衝撃に襲われ、馬の嘶きが聞こえたのだ。
「うわっ!」
「きゃっ!」
思わず倒れ込みそうになるヴァージルとウェンディーをジリアンは必死に支えた。
小姓2人は堪え切れずに床に倒れ込む。
ジリアンが何事かと訝しむと同時に、御者台に御者の男と共に座るリビーが声を張り上げた。
「敵襲だ!」
リビーの叫びに、反射的にジリアンが幌の前面から御者台に顔を出すと、馬車を引く馬の脇腹に一本の矢が突き立っていた。
リビーが抜き身の剣を握っており、飛んできた矢をそれで数本叩き落としたことが窺えるが、それでも全てを防ぎ切れず一本が馬の脇腹に刺さってしまったのだろう。
馬は苦しげに喘ぎ、走ることが出来ずに足が止まってしまう。
「敵襲です! お2人とも頭を低くして床に伏せて下さい!」
ジリアンは荷台を振り返ってそう言うと、荷台の後方に向かいながら小姓らに言い放つ。
「おまえたちはお2人を守れ!」
小姓らはその言葉に頷き、床に伏せるヴァージルやウェンディーの上に覆い被さるようにうずくまった。
「リビー! 前は任せた!」
そう叫ぶとジリアンは右手に剣、左手に盾という装備で馬車の後方に出た。
すると後方から数頭の馬に跨った男たちが、ものすごい勢いで駆けてくる。
その全員が弓に矢を番えていて、ジリアンに向けて一斉に矢を放ってきた。
だがジリアンはその全てを剣で叩き落とし、盾で防ぐ。
「ナメるなよ!」
そして長剣を地面に突き立てると、腰帯から短剣を引き抜いてそれを鋭く投げ放った。
矢のように宙を舞う刃は接近してきた馬上の男の首を深々と切り裂く。
「くはっ!」
男はたまらずに落馬して地面に転がった。
ジリアンは即座にそこに駆け寄り、長剣を男の心臓に正確に突き立てる。
男は双眸を見開き、口から大量の血を吐いて絶命した。
それを見た他の男たちが剣や槍を手に、馬から降りてジリアンに迫って来る。
その後方からも続々と男の仲間らが出て来て、総勢7人がジリアンを取り囲んだ。
ジリアンは彼らを冷然と睨みつけると言った。
「追い剥ぎか? なら相手が悪かったな」
ジリアンは地面に横たわる男の遺体を剣先で指し示し、7人の男らを睨みつけて言葉を続ける。
「すぐにおまえらもこうなるぞ」
そう言うジリアンに男らは一斉に襲いかかった。
男たちは各々が手にした剣や槍、斧を振るってジリアンを葬り去ろうとする。
だがジリアンは彼らの繰り出す武器を的確に盾で弾いていなし、素早い動きで間合いを詰めると敵に鋭い斬撃を浴びせた。
「ぎゃあっ!」
容赦なく振るわれるジリアンの刃によって急所を深々と斬り裂かれた男は、致命傷を負って悲鳴と血飛沫を上げながら倒れ込む。
その体をガクガクと震わせながら苦しげに喘ぐ敵を見下ろして、ジリアンは吠えた。
「どうした! そんな程度でワタシをやろうってのか! 甘いんだよ!」
「チッ! 怯むな! たった1人の女相手に負けたら恥だぞ! 全員で一斉にかかれ!」
男たちはジリアンを斬り殺すべく、苛烈に刃を振るって一気に襲いかかるのだった。
☆☆☆☆☆☆
「おまえは荷台に入っていな!」
リビーはそう言って御者の男を荷台に追い立てると、左右両手に一本ずつ剣を握って御者台を降りた。
前方から馬に乗った男たちが迫って来る。
その数は7名。
おそらく後方のジリアンの元にも同程度の敵が迫っているのだろう。
ジリアンと男らが交戦する怒声や斬り結ぶ金属音が後方から聞こえて来た。
その音に耳を傾けながら、リビーは自分を取り囲む7人の男たちを睨みつける。
数的に大きく不利な状況だが、リビーの闘争心は微塵も揺らがなかった。
自分が倒れれば背後の荷台にうずくまっているヴァージルやウェンディーを守る者は誰もいなくなる。
自分は不倒の壁とならねばならぬのだ。
リビーは気合いの声を上げて敵を迎え撃つ。
「かかってきな! ダニアの女の怖さを思い知らせてやるよ!」
人通りの多い街道ではあるが、その混雑具合にはムラがある。
比較的閑散とした場所もあり、この十数分ほどは一台の馬車、1人の通行人ともすれ違うことがなかった。
「お2人とも、ご気分はいかがですか?」
ジリアンは馬車に揺られながらヴァージルやウェンディーの顔色を見た。
まだ8歳と6歳の兄妹は少しばかりの仮眠を取ったおかげで、多少スッキリとした顔をしている。
「心配ないよ。ありがとう。ジリアン、リビー」
「ワタシも大丈夫よ」
2人はそう言うと笑顔で頷いた。
両親と離れて不安な時間を過ごしている2人だが、幼いなりに精一杯耐えているのだ。
そしてジリアンらに心配をかけまいとしている。
その健気さにジリアンは胸が熱くなるのを感じた。
(ついこの前まで赤子だったお2人が少しずつ成長されている)
思えばジリアンもリビーも、ヴァージルやウェンディーがまだ乳飲み子だった頃から見守り続けて来た。
息子と娘をその腕に抱いて幸せそうに微笑むクローディアを見て、自分たちも幸せを感じたものだ。
ジリアンもリビーも自身の子供はいない。
だからこそヴァージルやウェンディーを己の子供のようにかわいがってきた。
(ヴァージル様もウェンディー様もいつかは大人になり立派な人物になられるだろう。それをこの目で見届けるためにも、絶対にお2人をお守りせねば……)
ジリアンがそう思ったその時だった。
唐突に風切り音と金属音が聞こえると、馬車が大きな衝撃に襲われ、馬の嘶きが聞こえたのだ。
「うわっ!」
「きゃっ!」
思わず倒れ込みそうになるヴァージルとウェンディーをジリアンは必死に支えた。
小姓2人は堪え切れずに床に倒れ込む。
ジリアンが何事かと訝しむと同時に、御者台に御者の男と共に座るリビーが声を張り上げた。
「敵襲だ!」
リビーの叫びに、反射的にジリアンが幌の前面から御者台に顔を出すと、馬車を引く馬の脇腹に一本の矢が突き立っていた。
リビーが抜き身の剣を握っており、飛んできた矢をそれで数本叩き落としたことが窺えるが、それでも全てを防ぎ切れず一本が馬の脇腹に刺さってしまったのだろう。
馬は苦しげに喘ぎ、走ることが出来ずに足が止まってしまう。
「敵襲です! お2人とも頭を低くして床に伏せて下さい!」
ジリアンは荷台を振り返ってそう言うと、荷台の後方に向かいながら小姓らに言い放つ。
「おまえたちはお2人を守れ!」
小姓らはその言葉に頷き、床に伏せるヴァージルやウェンディーの上に覆い被さるようにうずくまった。
「リビー! 前は任せた!」
そう叫ぶとジリアンは右手に剣、左手に盾という装備で馬車の後方に出た。
すると後方から数頭の馬に跨った男たちが、ものすごい勢いで駆けてくる。
その全員が弓に矢を番えていて、ジリアンに向けて一斉に矢を放ってきた。
だがジリアンはその全てを剣で叩き落とし、盾で防ぐ。
「ナメるなよ!」
そして長剣を地面に突き立てると、腰帯から短剣を引き抜いてそれを鋭く投げ放った。
矢のように宙を舞う刃は接近してきた馬上の男の首を深々と切り裂く。
「くはっ!」
男はたまらずに落馬して地面に転がった。
ジリアンは即座にそこに駆け寄り、長剣を男の心臓に正確に突き立てる。
男は双眸を見開き、口から大量の血を吐いて絶命した。
それを見た他の男たちが剣や槍を手に、馬から降りてジリアンに迫って来る。
その後方からも続々と男の仲間らが出て来て、総勢7人がジリアンを取り囲んだ。
ジリアンは彼らを冷然と睨みつけると言った。
「追い剥ぎか? なら相手が悪かったな」
ジリアンは地面に横たわる男の遺体を剣先で指し示し、7人の男らを睨みつけて言葉を続ける。
「すぐにおまえらもこうなるぞ」
そう言うジリアンに男らは一斉に襲いかかった。
男たちは各々が手にした剣や槍、斧を振るってジリアンを葬り去ろうとする。
だがジリアンは彼らの繰り出す武器を的確に盾で弾いていなし、素早い動きで間合いを詰めると敵に鋭い斬撃を浴びせた。
「ぎゃあっ!」
容赦なく振るわれるジリアンの刃によって急所を深々と斬り裂かれた男は、致命傷を負って悲鳴と血飛沫を上げながら倒れ込む。
その体をガクガクと震わせながら苦しげに喘ぐ敵を見下ろして、ジリアンは吠えた。
「どうした! そんな程度でワタシをやろうってのか! 甘いんだよ!」
「チッ! 怯むな! たった1人の女相手に負けたら恥だぞ! 全員で一斉にかかれ!」
男たちはジリアンを斬り殺すべく、苛烈に刃を振るって一気に襲いかかるのだった。
☆☆☆☆☆☆
「おまえは荷台に入っていな!」
リビーはそう言って御者の男を荷台に追い立てると、左右両手に一本ずつ剣を握って御者台を降りた。
前方から馬に乗った男たちが迫って来る。
その数は7名。
おそらく後方のジリアンの元にも同程度の敵が迫っているのだろう。
ジリアンと男らが交戦する怒声や斬り結ぶ金属音が後方から聞こえて来た。
その音に耳を傾けながら、リビーは自分を取り囲む7人の男たちを睨みつける。
数的に大きく不利な状況だが、リビーの闘争心は微塵も揺らがなかった。
自分が倒れれば背後の荷台にうずくまっているヴァージルやウェンディーを守る者は誰もいなくなる。
自分は不倒の壁とならねばならぬのだ。
リビーは気合いの声を上げて敵を迎え撃つ。
「かかってきな! ダニアの女の怖さを思い知らせてやるよ!」
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