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第一章 長身女戦士ヴィクトリア
第14話 ノアはアルフレッドが好き
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「ノアはアルフレッドのことが好きになった。だから一緒に連れて歩きたいのだ。城下町で逢引せぬか?」
はっ?
今なんと?
ノアの言葉の意味が分からずに僕は口を開けたまま固まった。
僕を好きに?
いや君、ついさっきまで敵対して戦っていたし、僕を殺そうとしてたよね?
なぜそうなる。
唖然としている僕の両隣ではミランダとアリアナも同様に固まっている。
ジェネットだけは黙ったまま表情を動かさずにじっとノアを見つめていた。
ノアはそんなジェネットの視線を無視して僕に目を向ける。
「ノアと共に行くぞ。アルフレッド」
「い、いや。急にそんなこと言われても……」
予想だにしなかったノアの申し出に僕は頭も口もうまく回らなくなって、ただ目を白黒させるだけだった。
そんな僕の胸ぐらを右から掴んだのはミランダだった。
「アル! あんたついにこんな子供にまで手を出すようになったわけ? この変態ロリ野郎!」
「ご、誤解だよミランダ。僕、そんなことしてないから!」
必死に弁解の声を上げる僕だけど、ミランダに続いて左からアリアナが僕の首を締め上げる。
「さすがにこの子に手を付けようとするのは、人としてどうなのかな。ロリ君」
「うぐぐ……。僕の名前はアルですよ。ちょっかいなんて出してないってば!」
僕はミランダとアリアナに責められ左右に引っ張られるうちに目が回ってきた。
見かねたジェネットが2人の頭をポカッと叩いて止めてくれる。
「2人とも落ち着きなさい」
頭をはたかれて怒りを剥き出しにするミランダと、恨みがましげな視線を向けるアリアナだけど、ジェネットは2人を一瞥すると涼しい顔でノアに視線を向けた。
「ノア。私達はアル様がこの数時間の間をどう過ごされてきたのかまだお聞きしていないのです。あなたはどうしてアル様と知り合われたのですか?」
ノアはじっとジェネットを見つめ返すと簡単に説明した。
僕がヴィクトリアのパートナーとして現れ、自分を打ち破ったことを。
そして僕は王城の帰りに道でヴィクトリアに捕まえられて仲間になり、彼女のNPC転身試験に同行することになった経緯を手短に話した。
一連の説明を受けたミランダたち3人はようやく合点がいったというように各々頷いた。
「やはりそういうことでしたか。ご苦労なされたのですね。アル様」
「アル君。相変わらずの巻き込まれ体質だね。とにかくお疲れさま」
「何やってんのよアル。あんたって変な女に絡まれる運命なの?」
うん。
その代表格は君だけどね、ミランダ。
「それにしてもそんな面倒くさいことになったのは、結局はあんたのお節介のせいだからね。アル。それはあんたの甘さよ」
「うん……」
確かにミランダの言う通りだ。
脅されて他に選択肢はなかったとはいえ、最終的に僕は積極的にヴィクトリアの味方をしていたのだから。
本来の業務を放り出してまですることかと言われれば、反論の言葉もない。
「おとなしく皮を剥がれてゲームオーバーになっていればすぐに戻って来られたのに」
「鬼か! ひどすぎるわ!」
相変わらずミランダのどSっぷりに辟易する僕だけど、ふいにジェネットが僕に視線を送って来たのを感じた。
それは一瞬のことだったけれど、僕はそこに何か彼女の意思を感じたんだ。
……何だろう?
「事情は分かりました。ではノア。アル様のご同行申請書にサインをして下さい」
そう言うとジェネットは闇の祭壇近くに置かれた大きな石造りのテーブルの上に申請書と思しき紙を置いた。
紙?
ずいぶんとアナログだな……いや待てよ。
何かおかしいぞ。
確か以前、ジェネットが僕をこの闇の洞窟から連れ出す時はメイン・システム上から運営本部に直接申請してたけど……仕様が変わったんだろうか。
というかまったく縁もゆかりもないノアがいきなり僕を連れ出すことなんて出来るのかな。
「ちょっとジェネット。あんた何勝手なことをしてんのよ」
「そうだよジェネット。帰って来たばかりなのにアル君またすぐ出かけるなんてかわいそうだよ」
そう言ってミランダとアリアナがジェネットに詰め寄ろうとしたけれど、それよりも早くノアがテーブルに手をついて紙にサインをする。
その瞬間だった。
テーブルの表面が緑色に光り、そこからいきなり人影が現れたんだ。
「あれは……」
そこで僕は気が付いた。
ジェネットが用紙を置いたそのテーブルの上に、白亜の大理石で出来た台座が置かれていたことに。
それは先日、運営本部から僕らに贈呈された、3Dホログラムを映し出すための台座だったんだ。
その時は触れた人のイメージ映像が正確に投影されない不具合があったんだけど、すぐにメンテナンスの人が来てくれて調整してくれてからは直ったようだった。
ジェネットはそれがテーブルの上に敷かれていたことを知っていて、そこにノアを誘導したみたいだ。
そして現れたホログラムを見て僕は絶句する。
「なっ、何これ……」
それは僕が大きな皿に寝かされていて、その僕にノアが左手で竜酒をかけながら右手でフォークを突き立てようとしているところだった。
それはまるで彼女が今まさに食事を始めようとしているようなシーンだ。
そして食べられようとしているのは僕だ。
「は、はああっ? ぼ、僕を食べるつもり?」
驚愕する僕とは対照的にジェネットは冷静にホログラムを見つめている。
そして僕と同じように驚いて目の前のホログラムを見上げているノアに厳しい視線を向けた。
「引っ掛かりましたねノア。これはあなたが頭の中で思い描くイメージを映像化する装置なのですよ。あなたはアル様を誘い出して、食べようとしていた。そうでしょう? 白状しなさい!」
ジェネットに問い詰められたノアは悔しげに唇を噛んだ。
「くっ……ノアは……ノアはアルフレッドが好きなのだ」
アルフレッドが好き(食料として)。
ってことかコンチクショウ!
何という予想の斜め上。
「何かおかしいとは思いましたが、まさかアル様を食べようとしていたとは」
呆れてそう嘆息するジェネットの隣に並び立ち、ミランダが顔をしかめる。
「アルなんか食べたらオナカ壊してレベルが下がるわよ」
どういう意味だ!
ミランダに続いてアリアナが僕の肩に手を置いて言う。
「よかったねアル君。好きって言われてホイホイついて行ったら、今頃ノアに食べられて竜人のウンチとしてコンティニューすることになってたよ」
「い、嫌な想像させないでよ」
そんなことはありえないけど、想像するのも嫌すぎる。
それにしても……あの闘技場で竜酒をかぶった僕をノアがじろじろと見ていたのは、食欲からくるものだったのか。
食べ物として見られたことなんて今まで一度もないから、今もじっと僕を凝視するノアの視線に何とも言えない恐怖と困惑を感じた。
肉食獣に狙われる草食動物ってこんな気分なのかな。
そ、そんなに見ても君の食糧にはならないからね!
それにしてもひょんなところで例の台座が役に立ったな。
その台座の前でふてくされたように頬を膨らませているノアにジェネットは厳しい顔つきで懲悪杖を向けた。
それでもジェネットは決して好戦的ではなく、むやみにノアを刺激することのないよう穏やかな口調を保ちながら言う。
「いかなる理由があろうともアル様に危害を加えることはこの私が許しません。ですが無用な争いは避けるべきというのが神の御意思です。ここにはランクAのキャラが3人います。あなたも優れた戦士とお見受けしますが、ここで私たち3人と争うような愚は冒さないでしょう? ならばここで引いていただけるとありがたいのですが。いかがですか?」
それだけ言うとジェネットは口を閉ざして懲悪杖を構えたまま動きを止めた。
もちろん視線はノアに定めたままだ。
ノアもジェネットの気迫を感じて押し黙っている。
無益な戦いを避けようとするジェネットだけど、それに賛同しない人がいた。
僕の隣に若干1名。
「ちょっとジェネット。そいつがそのまま引き下がっても、私の腹の虫は収まらないわよ」
ですよねぇ。
ミランダは売られたケンカは買わずにいられない気性の持ち主だ。
先ほどのノアの態度にすこぶるご機嫌斜めの彼女は、ジェネットを押し退けるようにしてノアの前に出る。
「心配しなくても他の2人には手出しさせないわよ。ちゃんとタイマンでこの私が直々にボコボコにしてあげるから安心しなさい」
そう言って黒鎖杖を突き付けるミランダにノアも蛇竜槍で応戦しようとする。
ああもう。
すぐケンカしたがるんだから。
「ミランダ。あなたはどうしてそう堪え性がないのですか。無用な争いからは何も生まれませんよ」
「あっそ。でも私はあんたと違って魔女だから、無用であろうがなかろうが争いは大好きなの」
僕とアリアナは押し問答をする魔女と聖女を見ながら困り果てていたけれど、そこでふとその場に変化が起きた。
3Dホログラムがいきなり変わったんだ。
ノアに食べられそうになっている僕は消え、そこには大人の姿になったノアが凛々しい表情で立っていた。
あれは変幻玉で変化したノアだ。
突然の変化にミランダとジェネットが口論を止め、不機嫌そうにしていたノアもホログラムを見上げて表情を一変させた。
ノアの瞳がキラキラと輝き、その頬は紅潮している。
その姿を見た僕は、彼女が変幻玉を欲した理由にようやく気が付いた。
「ノア……もしかしたらまたあの姿になりたいのかな」
きっとそうだ。
ノアは変幻玉で大人に変わった自分の姿をことのほか気に入り、また変身したいと思っているんだ。
それもあって僕のところにわざわざやってきたのか。
僕が食べられるのは勘弁してほしいけど、変幻玉を販売する店の宅配サービスを利用すればわざわざ城下町まで出向かなくても購入は可能だ。
ノアには少し待ってもらうことになるけれど、変幻玉さえ手に入れば僕のことはあきらめて帰ってくれるかもしれないし、それが一番無難な方法じゃないだろうか。
僕がそんなことを考えていたその時だった。
訪問者を告げる警報が鳴り響いたのは。
はっ?
今なんと?
ノアの言葉の意味が分からずに僕は口を開けたまま固まった。
僕を好きに?
いや君、ついさっきまで敵対して戦っていたし、僕を殺そうとしてたよね?
なぜそうなる。
唖然としている僕の両隣ではミランダとアリアナも同様に固まっている。
ジェネットだけは黙ったまま表情を動かさずにじっとノアを見つめていた。
ノアはそんなジェネットの視線を無視して僕に目を向ける。
「ノアと共に行くぞ。アルフレッド」
「い、いや。急にそんなこと言われても……」
予想だにしなかったノアの申し出に僕は頭も口もうまく回らなくなって、ただ目を白黒させるだけだった。
そんな僕の胸ぐらを右から掴んだのはミランダだった。
「アル! あんたついにこんな子供にまで手を出すようになったわけ? この変態ロリ野郎!」
「ご、誤解だよミランダ。僕、そんなことしてないから!」
必死に弁解の声を上げる僕だけど、ミランダに続いて左からアリアナが僕の首を締め上げる。
「さすがにこの子に手を付けようとするのは、人としてどうなのかな。ロリ君」
「うぐぐ……。僕の名前はアルですよ。ちょっかいなんて出してないってば!」
僕はミランダとアリアナに責められ左右に引っ張られるうちに目が回ってきた。
見かねたジェネットが2人の頭をポカッと叩いて止めてくれる。
「2人とも落ち着きなさい」
頭をはたかれて怒りを剥き出しにするミランダと、恨みがましげな視線を向けるアリアナだけど、ジェネットは2人を一瞥すると涼しい顔でノアに視線を向けた。
「ノア。私達はアル様がこの数時間の間をどう過ごされてきたのかまだお聞きしていないのです。あなたはどうしてアル様と知り合われたのですか?」
ノアはじっとジェネットを見つめ返すと簡単に説明した。
僕がヴィクトリアのパートナーとして現れ、自分を打ち破ったことを。
そして僕は王城の帰りに道でヴィクトリアに捕まえられて仲間になり、彼女のNPC転身試験に同行することになった経緯を手短に話した。
一連の説明を受けたミランダたち3人はようやく合点がいったというように各々頷いた。
「やはりそういうことでしたか。ご苦労なされたのですね。アル様」
「アル君。相変わらずの巻き込まれ体質だね。とにかくお疲れさま」
「何やってんのよアル。あんたって変な女に絡まれる運命なの?」
うん。
その代表格は君だけどね、ミランダ。
「それにしてもそんな面倒くさいことになったのは、結局はあんたのお節介のせいだからね。アル。それはあんたの甘さよ」
「うん……」
確かにミランダの言う通りだ。
脅されて他に選択肢はなかったとはいえ、最終的に僕は積極的にヴィクトリアの味方をしていたのだから。
本来の業務を放り出してまですることかと言われれば、反論の言葉もない。
「おとなしく皮を剥がれてゲームオーバーになっていればすぐに戻って来られたのに」
「鬼か! ひどすぎるわ!」
相変わらずミランダのどSっぷりに辟易する僕だけど、ふいにジェネットが僕に視線を送って来たのを感じた。
それは一瞬のことだったけれど、僕はそこに何か彼女の意思を感じたんだ。
……何だろう?
「事情は分かりました。ではノア。アル様のご同行申請書にサインをして下さい」
そう言うとジェネットは闇の祭壇近くに置かれた大きな石造りのテーブルの上に申請書と思しき紙を置いた。
紙?
ずいぶんとアナログだな……いや待てよ。
何かおかしいぞ。
確か以前、ジェネットが僕をこの闇の洞窟から連れ出す時はメイン・システム上から運営本部に直接申請してたけど……仕様が変わったんだろうか。
というかまったく縁もゆかりもないノアがいきなり僕を連れ出すことなんて出来るのかな。
「ちょっとジェネット。あんた何勝手なことをしてんのよ」
「そうだよジェネット。帰って来たばかりなのにアル君またすぐ出かけるなんてかわいそうだよ」
そう言ってミランダとアリアナがジェネットに詰め寄ろうとしたけれど、それよりも早くノアがテーブルに手をついて紙にサインをする。
その瞬間だった。
テーブルの表面が緑色に光り、そこからいきなり人影が現れたんだ。
「あれは……」
そこで僕は気が付いた。
ジェネットが用紙を置いたそのテーブルの上に、白亜の大理石で出来た台座が置かれていたことに。
それは先日、運営本部から僕らに贈呈された、3Dホログラムを映し出すための台座だったんだ。
その時は触れた人のイメージ映像が正確に投影されない不具合があったんだけど、すぐにメンテナンスの人が来てくれて調整してくれてからは直ったようだった。
ジェネットはそれがテーブルの上に敷かれていたことを知っていて、そこにノアを誘導したみたいだ。
そして現れたホログラムを見て僕は絶句する。
「なっ、何これ……」
それは僕が大きな皿に寝かされていて、その僕にノアが左手で竜酒をかけながら右手でフォークを突き立てようとしているところだった。
それはまるで彼女が今まさに食事を始めようとしているようなシーンだ。
そして食べられようとしているのは僕だ。
「は、はああっ? ぼ、僕を食べるつもり?」
驚愕する僕とは対照的にジェネットは冷静にホログラムを見つめている。
そして僕と同じように驚いて目の前のホログラムを見上げているノアに厳しい視線を向けた。
「引っ掛かりましたねノア。これはあなたが頭の中で思い描くイメージを映像化する装置なのですよ。あなたはアル様を誘い出して、食べようとしていた。そうでしょう? 白状しなさい!」
ジェネットに問い詰められたノアは悔しげに唇を噛んだ。
「くっ……ノアは……ノアはアルフレッドが好きなのだ」
アルフレッドが好き(食料として)。
ってことかコンチクショウ!
何という予想の斜め上。
「何かおかしいとは思いましたが、まさかアル様を食べようとしていたとは」
呆れてそう嘆息するジェネットの隣に並び立ち、ミランダが顔をしかめる。
「アルなんか食べたらオナカ壊してレベルが下がるわよ」
どういう意味だ!
ミランダに続いてアリアナが僕の肩に手を置いて言う。
「よかったねアル君。好きって言われてホイホイついて行ったら、今頃ノアに食べられて竜人のウンチとしてコンティニューすることになってたよ」
「い、嫌な想像させないでよ」
そんなことはありえないけど、想像するのも嫌すぎる。
それにしても……あの闘技場で竜酒をかぶった僕をノアがじろじろと見ていたのは、食欲からくるものだったのか。
食べ物として見られたことなんて今まで一度もないから、今もじっと僕を凝視するノアの視線に何とも言えない恐怖と困惑を感じた。
肉食獣に狙われる草食動物ってこんな気分なのかな。
そ、そんなに見ても君の食糧にはならないからね!
それにしてもひょんなところで例の台座が役に立ったな。
その台座の前でふてくされたように頬を膨らませているノアにジェネットは厳しい顔つきで懲悪杖を向けた。
それでもジェネットは決して好戦的ではなく、むやみにノアを刺激することのないよう穏やかな口調を保ちながら言う。
「いかなる理由があろうともアル様に危害を加えることはこの私が許しません。ですが無用な争いは避けるべきというのが神の御意思です。ここにはランクAのキャラが3人います。あなたも優れた戦士とお見受けしますが、ここで私たち3人と争うような愚は冒さないでしょう? ならばここで引いていただけるとありがたいのですが。いかがですか?」
それだけ言うとジェネットは口を閉ざして懲悪杖を構えたまま動きを止めた。
もちろん視線はノアに定めたままだ。
ノアもジェネットの気迫を感じて押し黙っている。
無益な戦いを避けようとするジェネットだけど、それに賛同しない人がいた。
僕の隣に若干1名。
「ちょっとジェネット。そいつがそのまま引き下がっても、私の腹の虫は収まらないわよ」
ですよねぇ。
ミランダは売られたケンカは買わずにいられない気性の持ち主だ。
先ほどのノアの態度にすこぶるご機嫌斜めの彼女は、ジェネットを押し退けるようにしてノアの前に出る。
「心配しなくても他の2人には手出しさせないわよ。ちゃんとタイマンでこの私が直々にボコボコにしてあげるから安心しなさい」
そう言って黒鎖杖を突き付けるミランダにノアも蛇竜槍で応戦しようとする。
ああもう。
すぐケンカしたがるんだから。
「ミランダ。あなたはどうしてそう堪え性がないのですか。無用な争いからは何も生まれませんよ」
「あっそ。でも私はあんたと違って魔女だから、無用であろうがなかろうが争いは大好きなの」
僕とアリアナは押し問答をする魔女と聖女を見ながら困り果てていたけれど、そこでふとその場に変化が起きた。
3Dホログラムがいきなり変わったんだ。
ノアに食べられそうになっている僕は消え、そこには大人の姿になったノアが凛々しい表情で立っていた。
あれは変幻玉で変化したノアだ。
突然の変化にミランダとジェネットが口論を止め、不機嫌そうにしていたノアもホログラムを見上げて表情を一変させた。
ノアの瞳がキラキラと輝き、その頬は紅潮している。
その姿を見た僕は、彼女が変幻玉を欲した理由にようやく気が付いた。
「ノア……もしかしたらまたあの姿になりたいのかな」
きっとそうだ。
ノアは変幻玉で大人に変わった自分の姿をことのほか気に入り、また変身したいと思っているんだ。
それもあって僕のところにわざわざやってきたのか。
僕が食べられるのは勘弁してほしいけど、変幻玉を販売する店の宅配サービスを利用すればわざわざ城下町まで出向かなくても購入は可能だ。
ノアには少し待ってもらうことになるけれど、変幻玉さえ手に入れば僕のことはあきらめて帰ってくれるかもしれないし、それが一番無難な方法じゃないだろうか。
僕がそんなことを考えていたその時だった。
訪問者を告げる警報が鳴り響いたのは。
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