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第四章 城下町紛争狂騒曲
最終話 だって僕らはNPCだから
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呪いの剣。
その名も『タリオ』。
今それは闇の玉座の中に収められている。
黒と白の蛇が司るこの剣を使いこなすことの出来るのは、光でも闇でもない中庸の属性を持つ僕ならではだった。
そのことを神様から指摘されて僕が知ったのは、広場での戦いの直後だった。
戦いの最後にリードを倒す不思議な鏡が現れたのも、中庸の僕を闇のミランダと光のジェネットが脇から支えてくれたことで、ちょうどいいバランスが保たれたからかもしれない。
きっと三人がそろってこその現象だったんだろう。
ミランダがそんな特性を持つ剣を作ったのは偶然だったんだろうか。
今となってはよく分からないけど、きっとこの世界の全てのことには意味があるように思えるんだ。
僕とミランダが出会ったこと。
ジェネットがミランダと戦ったことも。
「ちょっと! ジェネット! 闇の玉座の周りに白い花なんて飾ったのあんたでしょ!」
ミランダの声が洞窟内にけたたましく響き渡った。
あの王城前の広場での戦いから3日目の朝を迎えていた。
このゲーム全体を巻き込んだミランダ討伐の大騒動は、当事者である僕らの処分保留のままとなっていたのだけど、昨晩になって最終的な結論がもたらされた。
まずミランダはNPC暴走のテストケースとして、修正プログラムを施されながらの試験的存続が決定した。
とりあえずの執行猶予ってやつだ。
本人は居丈高な運営本部からのお達しに不満そうだったけど、生き残っただけでも僥倖であることは理解しているみたいで、渋々指示に従っている。
そしてジェネットはミランダに加担したことへの審判を受けたけど、彼女の支持者からの圧倒的な数の陳情によって恩赦を受け、不問となった。
あと、リードはサポートNPCとしてふさわしくない言動の数々を問われ、しばらくは謹慎処分となった。
ま、自業自得だね。
で、僕なんだけど、僕は違反行為で一度消去された身でありながら復活を遂げた希少性や感情を強く持つNPCとしての未知な部分を分析するという名目で、ミランダ同様にゲームに残れることになった。
みんな以前とは取り巻く状況が変化しているけれど、もう一度やり直せることとなり、こうしてこの騒動は終結を迎えたんだ。
「あまりにも殺風景でしたので、華やぎを持たせようかと」
にこやかにそう言うジェネットにミランダは見るからにカリカリして言葉を返す。
「華やぎなんていらないから! 闇の玉座の雰囲気台無しじゃない!」
「明日からこの洞窟もリニューアルオープンですから、お客様をお迎えするにふさわしい佇まいを、と思いまして」
ジェネットの言う通り、長らく閉鎖の憂き目にあっていたこの洞窟もいよいよ明日から再開されることになった。
炎上商法じゃないけど、良くも悪くも今回の一件で衆目を集めたミランダの治めるこの洞窟には、再開初日から多くの人出が予想された。
昨日も今日もBBS等ではこの洞窟の再開についての問い合わせが殺到している。
忙しくなりそうだな。
そしてオープン前日の今日は最新のアップデートが施行される日だ。
ジェネットが言っていた神様の贈り物っていうのが僕らに届く日でもある。
ミランダには内緒だけど、僕はこっそりジェネットに教えてもらってそれが何だか分かっているんだ。
僕はジェネットに出会ってからの日々を思い返した。
ジェネットだけはゲームオーバーを迎えても記憶を失うことがなかった。
それはジェネットが記憶を蓄積する新型のプログラムを持ったテストNPCだからだった。
これによってジェネットはこの先ずっと記憶を積み重ね続け、NPCとして成長していく。
その新型のプログラムが僕とミランダにも与えられるんだ。
これで僕らはたとえゲームオーバーを迎えても記憶までは初期化されずに残る。
手紙や記録を残さなくても、僕もミランダもお互いのことをずっと覚えていられるんだ。
神様はこのテストで自分の理想のゲームを実現するつもりらしい。
NPCが記憶を積み重ねて成長し、自分で考えて行動するシステムを持ったゲームを。
壮大な夢だけどその一歩目に僕が携われると思うと何だか誇らしい気持ちだった。
そんな夢見心地な僕をよそに、ミランダはジェネットと言い争いを続けている。
「何が客よ。どうせ私にぶっ殺されて昇天するのに歓迎してどうすんのよ。っていうか、そもそもあんたどうしてここにいるのよ」
ミランダは苛立たしげにそうまくし立てる。
ジェネットは僕たちと一緒にこの洞窟に戻ってきて常駐するようになっていた。
「何度も同じことを聞かないで下さい。あなたが再び悪さをしないよう、我が主よりお目付役を仰せつかっておりますので」
そう言うとジェネットは懲悪杖をミランダに向けた。
ああもう。
そんなことしたらミランダがどんな反応を見せるか分かりそうなものなのに。
「じょ、上等じゃない。今ここで洞窟から叩き出してあげようか」
そう言うとミランダも黒鎖杖をジェネットに突き付けた。
すぐそうやって挑発に乗る。
「私を追い出して兵士様と二人きりになろうという算段が見え隠れしますね。いやらしい」
ちょっとジェネットさん?
何言ってんの?
「バ、バッカじゃないの? あんたが邪魔なだけよ! それに言っておくけどコイツは私の家来なのよ? なに勝手に親しげにしてんのよ」
だから家来ではないとあれほど……。
刺々しい言葉を吐くミランダにジェネットは疑わしげな視線を向ける。
「あなたがどれほど兵士様と親しいのかは甚だ疑問ですね」
珍しく挑発的なジェネットの態度にミランダはヒステリックな声を上げた。
「な、何言ってんのよ! コ、コイツは私の胸を指でつついたこともあるんだからね!」
ゲッ!
コラコラーッ!
ひ、人の恥ずかしい失敗をバラすんじゃない!
「なっ。兵士様……本当ですか? マジメな方だと信じていたのに」
うぅ。
ジェネットの冷たい視線が身に突き刺さる。
「ち、違うんだ。ワザとじゃないんだ」
必死に言い訳をする僕の横でミランダは腕組みをしてニヤリと笑った。
「フフーン。どうよ」
なに勝ち誇ってるんだよミランダ。
そんな意味不明なミランダにジェネットは妙な対抗心を見せて言い返した。
「くっ……ですがそういうことならば私も負けません。何しろ私は兵士様に裸を見られていますからね。全裸ですよ? 全裸」
ば、暴露大会やめて(涙)。
何なのこの流れ。
「な、何ですって! ちょっとアンタ! どういうことよ!」
ミランダは今にも僕に噛み付きそうな顔で恐ろしい視線を向けてくる。
「あ、あれは僕のせいじゃないんだ!」
懸命に弁解をする僕にミランダは詰め寄ってこようとする。
するとその肩にジェネットが手をかけてミランダを止めた。
「とにかく。あなたがいない間、私はずいぶん兵士様と親しくさせていただいたんですよ?」
「そんなもん私とコイツの付き合いの長さに比べたら屁みたいなもんよ! やっぱりあんたはこの洞窟から叩き出してあげる必要がありそうね」
そう言ってジェネットの手を振り払うと、ミランダは怒りに任せて悪神解放の呪文を詠唱し始めちゃった。
これにジェネットも応戦する。
「望むところです。ここであなたを倒して私が兵士様と二人……じゃなくてこの洞窟を平和にするのもいいですね」
明日オープンなのに主役を退場させてどうすんですか。
お化けがいなきゃお化け屋敷にならんでしょうが。
ああもう。
言ってるそばからジェネットも断罪の矢を唱え始めちゃうし。
お願いだから上位魔法でケンカするのやめて。
「そ、そうだ。二人に報告があるんだった!」
僕はわざとらしく大きな声を上げて二人の注目を集める。
二人は詠唱をやめてこっちを見やった。
「僕、名前がついたんだよ。試しに申請してみたら許可が下りたんだ」
今まで名前のことなんて考えたことなかったけど、ミランダやジェネットと一緒にいる時間も長くなったし、名前があったほうがいいと思って。
アルフレッド・シュヴァルトシュタイン。
それが僕の名前だった。
どうだ。
カッコいいだろう。
だけど僕がその名を告げた時の二人の反応はあまりにもひどかった。
「ダサい。寒い。ダサい。三拍子そろった痛ネームね」
痛ネームって何だ!
ダサいを二度も言うな!
人が必死に考えた名前を痛ネーム呼ばわりとか鬼か!
「アルフレッドを名乗るには兵士様、お顔がちょっと……」
全世界のアルフレッドさんが全員イケメンだとでも言うのかぁ!
一人くらい地味メンがいてもいいでしょ!
「ひどいよ二人とも。せっかく自分では気に入ってるのに」
そんな僕の落胆にも構わずにミランダは言う。
「あんたの特徴は地味でありふれてるところでしょ。タロウでいいわよ」
負けじとジェネットも口を開く。
「いいえ。兵士様にはペロという名が似合うと思います。従順な兵士様にお似合いでかわいいですよ~」
何でどっちも犬みたいな名前なんだ。
僕は忠犬じゃないぞ。
「タロウよ!」
「ペロです!」
そう言い合って睨み合うと二人は再び魔法の詠唱を始める。
「だから上位魔法でケンカするのやめてってば!」
僕は必死に声を張り上げながらも、心の中でつぶやいた。
きっとこれからもこうして日々は続いていくんだろうな。
もう僕もミランダもジェネットも、それぞれのことを決して忘れない。
こんな騒々しい馬鹿騒ぎはもちろん、ほんの些細な日常の出来事さえも。
そしてこのゲームが続く限り僕らは限られたルールの中でもそれなりに楽しくやっていけるだろう。
だって僕は、いいや僕らはNPCだから。
~終幕~
***********************************
*短編後日談です。 『だって僕はNPCだから +プラス』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/540294390/283488519
その名も『タリオ』。
今それは闇の玉座の中に収められている。
黒と白の蛇が司るこの剣を使いこなすことの出来るのは、光でも闇でもない中庸の属性を持つ僕ならではだった。
そのことを神様から指摘されて僕が知ったのは、広場での戦いの直後だった。
戦いの最後にリードを倒す不思議な鏡が現れたのも、中庸の僕を闇のミランダと光のジェネットが脇から支えてくれたことで、ちょうどいいバランスが保たれたからかもしれない。
きっと三人がそろってこその現象だったんだろう。
ミランダがそんな特性を持つ剣を作ったのは偶然だったんだろうか。
今となってはよく分からないけど、きっとこの世界の全てのことには意味があるように思えるんだ。
僕とミランダが出会ったこと。
ジェネットがミランダと戦ったことも。
「ちょっと! ジェネット! 闇の玉座の周りに白い花なんて飾ったのあんたでしょ!」
ミランダの声が洞窟内にけたたましく響き渡った。
あの王城前の広場での戦いから3日目の朝を迎えていた。
このゲーム全体を巻き込んだミランダ討伐の大騒動は、当事者である僕らの処分保留のままとなっていたのだけど、昨晩になって最終的な結論がもたらされた。
まずミランダはNPC暴走のテストケースとして、修正プログラムを施されながらの試験的存続が決定した。
とりあえずの執行猶予ってやつだ。
本人は居丈高な運営本部からのお達しに不満そうだったけど、生き残っただけでも僥倖であることは理解しているみたいで、渋々指示に従っている。
そしてジェネットはミランダに加担したことへの審判を受けたけど、彼女の支持者からの圧倒的な数の陳情によって恩赦を受け、不問となった。
あと、リードはサポートNPCとしてふさわしくない言動の数々を問われ、しばらくは謹慎処分となった。
ま、自業自得だね。
で、僕なんだけど、僕は違反行為で一度消去された身でありながら復活を遂げた希少性や感情を強く持つNPCとしての未知な部分を分析するという名目で、ミランダ同様にゲームに残れることになった。
みんな以前とは取り巻く状況が変化しているけれど、もう一度やり直せることとなり、こうしてこの騒動は終結を迎えたんだ。
「あまりにも殺風景でしたので、華やぎを持たせようかと」
にこやかにそう言うジェネットにミランダは見るからにカリカリして言葉を返す。
「華やぎなんていらないから! 闇の玉座の雰囲気台無しじゃない!」
「明日からこの洞窟もリニューアルオープンですから、お客様をお迎えするにふさわしい佇まいを、と思いまして」
ジェネットの言う通り、長らく閉鎖の憂き目にあっていたこの洞窟もいよいよ明日から再開されることになった。
炎上商法じゃないけど、良くも悪くも今回の一件で衆目を集めたミランダの治めるこの洞窟には、再開初日から多くの人出が予想された。
昨日も今日もBBS等ではこの洞窟の再開についての問い合わせが殺到している。
忙しくなりそうだな。
そしてオープン前日の今日は最新のアップデートが施行される日だ。
ジェネットが言っていた神様の贈り物っていうのが僕らに届く日でもある。
ミランダには内緒だけど、僕はこっそりジェネットに教えてもらってそれが何だか分かっているんだ。
僕はジェネットに出会ってからの日々を思い返した。
ジェネットだけはゲームオーバーを迎えても記憶を失うことがなかった。
それはジェネットが記憶を蓄積する新型のプログラムを持ったテストNPCだからだった。
これによってジェネットはこの先ずっと記憶を積み重ね続け、NPCとして成長していく。
その新型のプログラムが僕とミランダにも与えられるんだ。
これで僕らはたとえゲームオーバーを迎えても記憶までは初期化されずに残る。
手紙や記録を残さなくても、僕もミランダもお互いのことをずっと覚えていられるんだ。
神様はこのテストで自分の理想のゲームを実現するつもりらしい。
NPCが記憶を積み重ねて成長し、自分で考えて行動するシステムを持ったゲームを。
壮大な夢だけどその一歩目に僕が携われると思うと何だか誇らしい気持ちだった。
そんな夢見心地な僕をよそに、ミランダはジェネットと言い争いを続けている。
「何が客よ。どうせ私にぶっ殺されて昇天するのに歓迎してどうすんのよ。っていうか、そもそもあんたどうしてここにいるのよ」
ミランダは苛立たしげにそうまくし立てる。
ジェネットは僕たちと一緒にこの洞窟に戻ってきて常駐するようになっていた。
「何度も同じことを聞かないで下さい。あなたが再び悪さをしないよう、我が主よりお目付役を仰せつかっておりますので」
そう言うとジェネットは懲悪杖をミランダに向けた。
ああもう。
そんなことしたらミランダがどんな反応を見せるか分かりそうなものなのに。
「じょ、上等じゃない。今ここで洞窟から叩き出してあげようか」
そう言うとミランダも黒鎖杖をジェネットに突き付けた。
すぐそうやって挑発に乗る。
「私を追い出して兵士様と二人きりになろうという算段が見え隠れしますね。いやらしい」
ちょっとジェネットさん?
何言ってんの?
「バ、バッカじゃないの? あんたが邪魔なだけよ! それに言っておくけどコイツは私の家来なのよ? なに勝手に親しげにしてんのよ」
だから家来ではないとあれほど……。
刺々しい言葉を吐くミランダにジェネットは疑わしげな視線を向ける。
「あなたがどれほど兵士様と親しいのかは甚だ疑問ですね」
珍しく挑発的なジェネットの態度にミランダはヒステリックな声を上げた。
「な、何言ってんのよ! コ、コイツは私の胸を指でつついたこともあるんだからね!」
ゲッ!
コラコラーッ!
ひ、人の恥ずかしい失敗をバラすんじゃない!
「なっ。兵士様……本当ですか? マジメな方だと信じていたのに」
うぅ。
ジェネットの冷たい視線が身に突き刺さる。
「ち、違うんだ。ワザとじゃないんだ」
必死に言い訳をする僕の横でミランダは腕組みをしてニヤリと笑った。
「フフーン。どうよ」
なに勝ち誇ってるんだよミランダ。
そんな意味不明なミランダにジェネットは妙な対抗心を見せて言い返した。
「くっ……ですがそういうことならば私も負けません。何しろ私は兵士様に裸を見られていますからね。全裸ですよ? 全裸」
ば、暴露大会やめて(涙)。
何なのこの流れ。
「な、何ですって! ちょっとアンタ! どういうことよ!」
ミランダは今にも僕に噛み付きそうな顔で恐ろしい視線を向けてくる。
「あ、あれは僕のせいじゃないんだ!」
懸命に弁解をする僕にミランダは詰め寄ってこようとする。
するとその肩にジェネットが手をかけてミランダを止めた。
「とにかく。あなたがいない間、私はずいぶん兵士様と親しくさせていただいたんですよ?」
「そんなもん私とコイツの付き合いの長さに比べたら屁みたいなもんよ! やっぱりあんたはこの洞窟から叩き出してあげる必要がありそうね」
そう言ってジェネットの手を振り払うと、ミランダは怒りに任せて悪神解放の呪文を詠唱し始めちゃった。
これにジェネットも応戦する。
「望むところです。ここであなたを倒して私が兵士様と二人……じゃなくてこの洞窟を平和にするのもいいですね」
明日オープンなのに主役を退場させてどうすんですか。
お化けがいなきゃお化け屋敷にならんでしょうが。
ああもう。
言ってるそばからジェネットも断罪の矢を唱え始めちゃうし。
お願いだから上位魔法でケンカするのやめて。
「そ、そうだ。二人に報告があるんだった!」
僕はわざとらしく大きな声を上げて二人の注目を集める。
二人は詠唱をやめてこっちを見やった。
「僕、名前がついたんだよ。試しに申請してみたら許可が下りたんだ」
今まで名前のことなんて考えたことなかったけど、ミランダやジェネットと一緒にいる時間も長くなったし、名前があったほうがいいと思って。
アルフレッド・シュヴァルトシュタイン。
それが僕の名前だった。
どうだ。
カッコいいだろう。
だけど僕がその名を告げた時の二人の反応はあまりにもひどかった。
「ダサい。寒い。ダサい。三拍子そろった痛ネームね」
痛ネームって何だ!
ダサいを二度も言うな!
人が必死に考えた名前を痛ネーム呼ばわりとか鬼か!
「アルフレッドを名乗るには兵士様、お顔がちょっと……」
全世界のアルフレッドさんが全員イケメンだとでも言うのかぁ!
一人くらい地味メンがいてもいいでしょ!
「ひどいよ二人とも。せっかく自分では気に入ってるのに」
そんな僕の落胆にも構わずにミランダは言う。
「あんたの特徴は地味でありふれてるところでしょ。タロウでいいわよ」
負けじとジェネットも口を開く。
「いいえ。兵士様にはペロという名が似合うと思います。従順な兵士様にお似合いでかわいいですよ~」
何でどっちも犬みたいな名前なんだ。
僕は忠犬じゃないぞ。
「タロウよ!」
「ペロです!」
そう言い合って睨み合うと二人は再び魔法の詠唱を始める。
「だから上位魔法でケンカするのやめてってば!」
僕は必死に声を張り上げながらも、心の中でつぶやいた。
きっとこれからもこうして日々は続いていくんだろうな。
もう僕もミランダもジェネットも、それぞれのことを決して忘れない。
こんな騒々しい馬鹿騒ぎはもちろん、ほんの些細な日常の出来事さえも。
そしてこのゲームが続く限り僕らは限られたルールの中でもそれなりに楽しくやっていけるだろう。
だって僕は、いいや僕らはNPCだから。
~終幕~
***********************************
*短編後日談です。 『だって僕はNPCだから +プラス』
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