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第四章 追跡! 響詩郎 救出 大作戦!
第13話 転生なるか? 白雪の賭け
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「打てる手は打ちました。あとは響詩郎さまを信じます」
そう言った白雪の顔は言葉とは裏腹に不安がありありと表れていた。
命を落とした響詩郎に対し、部族の秘宝・転生玉による魔族転生を試みた白雪だったが、施術から1分以上経過した今のところ、何も変化は起きていない。
転生玉を体内に含んだ白雪自身が感じていたことだが、絶対的に熟成時間が不足していた。
本来ならばもっと長い時間をかけて白雪の体内で妖力を練り上げるべきだったのだが、準備期間が短すぎたのだ。
息絶えた響詩郎は血の気のない顔のまま白雪の前に横たわっている。
白雪は胸によぎる不安に重苦しいため息をついた。
「姫さま……」
傍に控えている紫水には白雪の不安が手に取るように分かった。
本来、転生の施術は生きている相手に行うものであり、すでに絶命している響詩郎への施術は効果がない恐れがある。
心配停止状態の響詩郎に、ほんのわずかでも生命力の欠片が残されていれば可能性はあるが、そうでない場合はこのまま何も起きないだろう。
転生術は死者を蘇生させるための術ではないからだ。
転生術については行うのはもちろん、実際に見るのも初めてのことなので、決められた手順以外のことは分からない。
本当に響詩郎が目覚めるのかどうか、白雪にも紫水にも見当がつかなかった。
だが、このままここにいても響詩郎の体にすがりついて泣いていることくらいしか出来ないことは分かっていた。
白雪は立ち上がると袖で涙を拭う。
船の外からは戦闘によるものと思しき音が聞こえてきた。
「先に戦場にまいりますわ。響詩郎さまのお目覚めをお待ちしております」
そう言って白雪は再び戦場へと舞い戻っていった。
そう言った白雪の顔は言葉とは裏腹に不安がありありと表れていた。
命を落とした響詩郎に対し、部族の秘宝・転生玉による魔族転生を試みた白雪だったが、施術から1分以上経過した今のところ、何も変化は起きていない。
転生玉を体内に含んだ白雪自身が感じていたことだが、絶対的に熟成時間が不足していた。
本来ならばもっと長い時間をかけて白雪の体内で妖力を練り上げるべきだったのだが、準備期間が短すぎたのだ。
息絶えた響詩郎は血の気のない顔のまま白雪の前に横たわっている。
白雪は胸によぎる不安に重苦しいため息をついた。
「姫さま……」
傍に控えている紫水には白雪の不安が手に取るように分かった。
本来、転生の施術は生きている相手に行うものであり、すでに絶命している響詩郎への施術は効果がない恐れがある。
心配停止状態の響詩郎に、ほんのわずかでも生命力の欠片が残されていれば可能性はあるが、そうでない場合はこのまま何も起きないだろう。
転生術は死者を蘇生させるための術ではないからだ。
転生術については行うのはもちろん、実際に見るのも初めてのことなので、決められた手順以外のことは分からない。
本当に響詩郎が目覚めるのかどうか、白雪にも紫水にも見当がつかなかった。
だが、このままここにいても響詩郎の体にすがりついて泣いていることくらいしか出来ないことは分かっていた。
白雪は立ち上がると袖で涙を拭う。
船の外からは戦闘によるものと思しき音が聞こえてきた。
「先に戦場にまいりますわ。響詩郎さまのお目覚めをお待ちしております」
そう言って白雪は再び戦場へと舞い戻っていった。
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