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第三章 迫り来る命の終わり
第5話 雷奈の帰宅
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正午過ぎになって雷奈はバスハウスに戻ってきた。
「おかえりなさい。雷奈さん」
「ただいま。弥生」
出迎えてくれた弥生に笑顔を返す余裕もなく、雷奈は居間のソファーに腰をかけた。
「響詩郎は?」
「少し熱が出ているみたいで、今は眠っています」
「そう……」
浮かない顔の雷奈を案じ、弥生は努めて明るい声を出した。
「あ、でも心配しないようにって言っていましたよ。解熱剤を飲んで眠っているから、夕方までには熱も下がるだろうって。響詩郎さん。雷奈さんに心配かけたくないんだと思います」
弥生の気遣いに雷奈の心は少しだけ和んだ。
「そう。弥生。響詩郎のこと見ててくれてありがとね」
「いえ、たいしたお役には立てていませんけど。でも、お二人とも互いを大事に思っていらっしゃるんですね。分かります」
「そ、そんなことないわよ」
そう言って少しバツが悪そうにする雷奈に、弥生は内心で苦笑した。
(心配していなければそんな顔はしませんよ)
「と、とにかく弥生も今のうちに少し寝ておいて。今夜から明日の朝まで忙しくなるわよ」
そう言い残して雷奈はシャワールームに消えた。
弥生は決意の表情で今夜すべきことを自分に言い聞かせるように呟いた。
「響詩郎さんの呪いを解くためにも私があの呪いのニオイを追跡しないと。おじいちゃん。禅智の名を汚さぬよう精進します」
「おかえりなさい。雷奈さん」
「ただいま。弥生」
出迎えてくれた弥生に笑顔を返す余裕もなく、雷奈は居間のソファーに腰をかけた。
「響詩郎は?」
「少し熱が出ているみたいで、今は眠っています」
「そう……」
浮かない顔の雷奈を案じ、弥生は努めて明るい声を出した。
「あ、でも心配しないようにって言っていましたよ。解熱剤を飲んで眠っているから、夕方までには熱も下がるだろうって。響詩郎さん。雷奈さんに心配かけたくないんだと思います」
弥生の気遣いに雷奈の心は少しだけ和んだ。
「そう。弥生。響詩郎のこと見ててくれてありがとね」
「いえ、たいしたお役には立てていませんけど。でも、お二人とも互いを大事に思っていらっしゃるんですね。分かります」
「そ、そんなことないわよ」
そう言って少しバツが悪そうにする雷奈に、弥生は内心で苦笑した。
(心配していなければそんな顔はしませんよ)
「と、とにかく弥生も今のうちに少し寝ておいて。今夜から明日の朝まで忙しくなるわよ」
そう言い残して雷奈はシャワールームに消えた。
弥生は決意の表情で今夜すべきことを自分に言い聞かせるように呟いた。
「響詩郎さんの呪いを解くためにも私があの呪いのニオイを追跡しないと。おじいちゃん。禅智の名を汚さぬよう精進します」
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