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第100話
しおりを挟む10分程更に歩いて森を抜けると急に眼前がひらけ、目的地である特別校舎がぬっと出現した。
普段から、何か用が無いと一般生徒や教師は特別校舎へと訪れないし、そもそも来る事が推奨されていない。その延長線なのか周囲には人影が無く、いつも通り遠くから賑やかな声が微かに聞こえるだけだった。
気付く人は気付くだろうし、このタイミングに託けて特別校舎周辺を訪れる生徒が出てくると思っていたのだが……
「う~ん、これは想定外だなぁ」
軽く握った右手を口元にやって小さく唸り、現在考え込んでいますというポーズをとる。
「…まっ、まだ時間はたぁっぷりあるし、なんとかなるよねぇ!」
中身の無い言葉を意味もなく吐き出し、カタチだけだった体勢を解いてパッと前を見据えた。
ピン、ポン、パン、ポーン
『みなさん楽しんでますかー!!紗霧くんは監視カメラにて全体の様子を視察中でーす!!観ててほんと愉快だよー!!愉悦に浸っちゃうねwwってことで、今のじょーきょーを実況しまーす!』
申告通り声音からして、この状況を1番愉しんでそうな放送部部長による現状発表が始まった。
『えーっと、まずは捕獲された“動物”の数だけどー…なんと!!なんとなんと!!…ゼロ匹でーすwwwまぁ当たり前かー。まだ始まって15分ぐらいしか経ってないもんねー。流石に生徒会役員さんたちでもムリかー、ざんねんだなー』
コチラ側を煽っているとしか思えない口調で、『ほんとに残念、ざんねんだなぁー』と続ける。
もし彼が彼でなかったら、確実に反感を買っていただろう所業だ。
今の彼が言った事を正気時の彼が知ったら、一体どういう反応をするのだろうか。…少し気になる、かもしれない。
そのような事を思いながら、止めていた足を再び動かし始める。
さて、あの場所へ行く前に何処へ向かってみようか。
『とまあ、それはさておいてー。今回の放送の本題を発表しまーす!実はねー、とあるお方の助言に従ってルールを微ッみょーに変更することになったんだよー!これには紗霧くんもびっくりしたねーww』
は?多少と云えど今からルールを変更するだと?
思わず動かしかけた足を止め、監視カメラがあるであろう箇所を意味も無く睨み上げた。
会長達は今でこそ色ボケて役に立たなくなったが、あの人達自身の性質からいってこのようなことを指示するはずが無い。
つまりとあるお方などいう大それた人物は、この学園で1番偉いあの人のことだろう。
「(チッ、面倒くさいことをしやがって…)」
苛立っても仕方無いとは分かっているが、このルール変更に伴ってどれほどのことを変更しなくてはいけないかを考えると舌打ちの一つや二つぐらいしたくなるのも当然だと思う。
その上ルール変更内容によっては、風紀と連携を取らないと手遅れになる事態が現段階よりも引き起こされかねないのだ。
本当、最悪の一言に尽きる。
『うわあ、生徒会役員さんと風紀の人たちからカメラ越しにすごい睨まれちゃった☆でもこれ紗霧くんのせいじゃないからねー!!だからその殺気仕舞ってよーッ!!?…それじゃあ気を取り直して、みんな気になるルール変更点を言いまーす!どんどんパフパフ!!!』
俺でなく、生徒会役員とぼかしてくれた今の放送部部長の気遣いに感謝しつつ、聞き逃さないよう耳を澄ませる。
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