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第92話 (福野side)

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 悲鳴の中心地が移動してくる。
 それを察知した護は、本日で1番嫌そうな顔をした。オレの趣味である放課後カップル探しに付き合わされてる時のような表情だ。

「はいみんな黙ってねー」

「はいさっさとこれ引いてねー」

「「僕達の貴重な時間を潰さないでよー?」」

 同じ男子高校生とは到底思えない、幼く高めな声が二重に聞こえてくる。今さっき双子だということにガッカリしたが、オレは別に双子が嫌いなわけではない。


 寧ろ大好きだ。
 愛してると言っても過言ではない。

 二次元の双子キャラと同じく2人がそっくりなところ、共依存気味なところ、何か隠してそうなところ……全てが好きだ。だって質の良い萌の気配しかしないからな!
 

 しかし何故だろう、今の双子の言ってる内容が若干黒い気がする。

 いやきっと気のせいだオレの癒し枠萌の塊が腹黒になってしまうだなんてそんなバカな事あるはずがないきっとそうだ。


 必死に自分に言い聞かせていると、よく知った人物の憐れんだ声が頭上に降ってきた。

「馬鹿はアンタでしょ、何急に頭抱えてしゃがみ込んでるのさ。普通に他の人の迷惑になるよ、

「な、なにゆえオレの考えが分かったのか!?はッ、もしかして脳内を覗いた…?冬希のエッチスケッチワンタッチ!!!」

「覗いてないし、アンタ口に出して言ってたよ。やっぱり馬鹿だね。だからボクから残念(笑)なんて呼ばれるんだよ、残念(笑)。ってか、それいつの時代のネタだよ、古すぎ」

「いいジャマイカ!オレは気にしないぞよ!!www……でも残念(笑)はやめて欲しい、かなぁって、思ったり、するんですが…どう?」

「アンタがアンタでいる限り多分無理だね」

「oh……」

 とてもいい笑顔で言い切った冬希を見上げて思った。


 “この子は実によき受けちゃんになる”と。
 
 よし、そうと決まれば早速薄い本を書くために、また多くの同士達のためにもネタとカプリングをメモらなくてはいけない。
 えっと、紙とペンはどこに入れたんだっけ…

 
「実行したら殺るから」

「!?!?!?」

 その小さな身体のどこにそんな力があったのかと、正直今すぐ問い詰めたい程の握力で顔面を鷲掴みにされる。

 いや待ってこれじゃ書くやる前に殺られてしま…


「鮫嶋、離してやってくれないか?」

 圧死させられる前に救いの声がかかり、あっさりと顔面が解放される。あぁ、イケメンが更にイケメンに見える。

 持つべきものはイケメンな幼馴染なのだと再認識すると同時に、とりあえず拝んでおいた。そして引かれた。これなんて悲しい現実。

 
  
「ねぇ楓、なんか変なコがいるよー?」

「本当だね奏、なんか残念なコだねー」

「「とりあえず突撃しよっか!」」

 現実にひしがれたのでシイタケ栽培に励んでいると、素晴らしいユニゾンが耳に飛び込んできた。

 地面に向けていた顔を上げると、そこには大変可愛らしい笑顔を浮かべた双子がいた。それぞれ穴の空いた大きな箱と、ふわふわな何かが入ったカゴを持っており、じっとこちらを見下ろしている。

 
 オレ、今度こそ死んだかもしれない──


 いつの間にか遠くに避難していた護と冬希をどう巻き込もうかを考えつつ、なんとかして生き延びようと口を開いた。




〘福野side end〙

 
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