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第83話
しおりを挟むとまあ、そんな戯れをして冷え切った空気も大分暖かくなったところで。
早速切り込むとしよう。何故、今この時間に、生徒会室へ柳瀬クンを連れて全員で訪れたのかを。
卓上のデジタル時計は現在、20:36を示している。
「あ、そうそう話変わるけどさぁ~、みんなに聞きたいことあんだよねぇ」
変わらない笑顔を浮かべ、言葉遣いがほんの少し荒くなってるのを自覚しつつ。
「…どぉ~して、今来たの?もう結構遅い時間だよねぇ~?」
誰かのせいで散らかった生徒会室内を背景にして。
「あ、もしかして何か用でもあったの~?俺が大体やってるから気にしなくてい~のにぃ」
心做しか、その言葉の節々に毒を含ませてしまいながら。
「それと~、みんなならよぉく知ってるはずなんだけど…確かダメだったよねぇ~?部外者をここに入れちゃったらさぁ…ね?」
遠回しでなく、驚く程に直球で。
「だからさぁ…他の誰かが見てしまう前にぃ、早く帰った方がい~よ?」
あくまで親切心を持って助言しているのだと、見知らぬ人からはそう見えるような態度をとって。
仕上げにと、更に笑ってみせた。
「「えーっとねー、僕らが放課後に遊んでたゲームを忘れちゃったからだよー!」」
一瞬も違わずに声を揃えた双子がそう答えた。この2人も、普段と変わらない笑顔をこれでもかと浮かべている。
「私は双子からそのことを聞いた時に、テーブルを汚したままだったのを思い出しましてね。丁度良いので綺麗にしようと、会長達を引っ張って来たのです」
親しみやすさしか感じさせない、完璧な和やかな笑みを貼り付けた副会長が補足する。
「あ……お、れは…副会ちょ、言った…と、り…」
「……」
書記はいつも通りの感じで言葉を発し、会長は偉そうに腕を組んで黙っている。
そのお陰で、俺達の間を天使が通りかけた。が、会長の背後から出てきた人物が声をあげたため、気まずい空気は流れない。
「そんなルールがあったのか!!!!!!知らなかったぞ!!!!!!あ、そうだぞ!!!!!!!!ならオレが部外者じゃなくなればいいんだ!!!!!それなら入っても大丈夫だろ!!!!!」
…まぁ、一部内容は若干おかしなものだったが。
いや、確かにそうだ。もし彼が生徒会役員になれば部外者ではなくなり、勝手に生徒会室に入っても何も問題はなくなる。
そう、全くもって正しいのだが、彼が今から役員になるなどというのは到底無理な話だ。
何故なら、現在空き役職は表向き1つとして無いのだから。
影の役職ならいくつか空きは作れるのだが、それらは生徒会役員として扱われない。なので当然、彼が望むモノは得られない。
「そうなんだが……、役職は今全て埋まっていてな。どうしたもんか…」
そう答えながら、僅かな間考える素振りをみせた会長は、次にとんでもないことを発した。
「…あぁ、1人辞めさせれば春人をその役職にねじ込めんな。その誰かの同意が必要となるが、やれないことはねぇ」
誰かの部分で、チラッと俺に視線をやってきた気がした。
なんだ?「それじゃあ、俺が裏に回ろっかぁ~?」とでも言って欲しいのか?
ハッ、冗談じゃない。
いくら俺でもな、流石にそれは了承出来ねぇんだよ。一応俺にも立場ってものがあるからな。
……まぁ、それも有って無いようなものだが。彼処には俺の居場所なんて無いし。
そのように口悪く心内で吐き捨てつつも、何も発言せず、表面上はずっとヘラヘラ笑っていた。
ふと脳の片隅で「(自分情緒不安定すぎるな…)」と、どこか冷静に思った。
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