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第79話
しおりを挟むでもまぁ、それも仕方の無いことかもしれない。
間近で見た委員長の瞳の下には、薄く隈が浮かんでいた。これを見るに、きっと残業が通常運転の委員長にとっても今は大変な状況下に陥っているのだろう。
…俺が引き篭もっていたここ1週間で、あの委員長がこうなる程の出来事が起こった。いや現在進行形起こっている、ということか。
思い当たる事…強いていうならば、会長達が何故かほとんどの仕事を放棄していることだろうか。
だがそれではないだろう。
何故なら俺が、学園に影響が出ないよう、彼らがほぼ義務を果たしていない事実が露見しないよう、全力でそれらをカバーしているからな。
では、一体この学園内で何が起こっている?
…他に1つだけ思い当たる節はあるが、現段階では憶測の域を出ない。ある意味被害妄想とも言えるだろう。かといって、この件を調べる暇など今の俺には存在しない。
よって、今取れる最も適した選択肢も1つしかない。
そう、委員長にカマをかけてみることだ。
今の委員長は、過度な疲労と寝不足、それに伴う自身による無意識下の行為に対する混乱のせいで思考力が普段より低下している。かかってくれる可能性はかなり高い。
「アハハッ、そんな焦んなくてだいじょ~ぶだって!委員長ここ最近あれのせいで大変なんでしょ~?隈ちゃんもヒドいしぃ、あんま寝れてない感じっぽいねぇ」
「……あぁ、実はそうなんだ…。例の転入生が人気生徒ばかりを侍らせているせいで、生徒達の不満を増幅させてしまっていてな…。お陰で風紀の人員をフルで動員しなくてはならないし、あまり休む暇も無い…」
まんまとかかってくれた委員長は、そう言うや否や両手で頭を抱えてしまった。
「うわぁ~、やっぱ大変そ~だねぇ。(…そういえば、副委員長は至っていつも通りだったような…?あの人すごいな)」
あーあ、正解だったか。
というか、こんなことでここ1週間の疑問の解を得る事になるとはな。
転入生に侍っている人気生徒、恐らくその中には会長達が含まれているのだろう。
あんなに拒絶反応を起こしていた副会長が含まれているかは不明だが、会長達はあの転入生を気に入っていた。
だからまぁ、そう考えると納得といえば納得だ。
名家中の名家の出といえども、会長達はまだ高校生。つまり発展途中である10代の子どもだ。
ならば一時の感情に振り回される事もあるだろう。俺自身は、その過程も今しか味わえないものだと思っている。
だから彼らには、今だけのものを存分に味わって欲しいと願ってしまう。外へ出てしまえば、抱く様々なモノ全てをドブへ棄てなくてはならなくなるのだから。
まぁ、現在進行形で大変な目にあっている委員長達には悪いと思うが。裏で手を回してコッソリと手伝うから、どうか俺の我が儘を許して欲しい。
…きっと、あと少し経てば必ず戻ってくれるはずだから。
そんなことを胸の内で吐露しながら、他人事のような言葉を発してヘラヘラと笑った。
…そう、きっと。
それまでは俺が踏ん張って、頑張るから。
だからさ、ある程度気が済んだらちゃんと義務を果たしなよ?
〈真琴自身は気が付いていない、心の叫び〉
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