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第60話
しおりを挟む魔王様降臨を全力で避けたい双子がなんとか説得して。数分後、柳瀬クンはようやく副会長の居場所を聞き出すことを諦めた。
いかにも「仕方ないな!!!」的なことを言いそうな表情をしている柳瀬クンを見て、双子は同時に安堵からくるため息をついていた。
周囲の生徒達は未だ鳥のように騒がしい。
それをBGMに、普段から右腕につけている愛用の腕時計を確認すると、ここに来てからすでに30分近く経っていた。つまり、あと30分後には5時間目の始まりを告げるチャイムが鳴る。
…早く、何か腹に入れなくては。
今日はもう、放課後まで各自のクラスにて授業を受けることにしたのだから。
「よぉっし、それじゃあみんな上に行くよぉ~」
「えー、もうちょっといいじゃん!」
「あともう少しここにいようよ!」
「「ねー!!」」
柳瀬クンから少し離れてから、まるでお菓子を買って欲しいと駄々をこねる幼子のように、じたばたと手足を上下させてここぞとばかりに主張してくる双子。
「…ん、…う、さい……苦手…けど、まだ…いた…」
うるさいのは苦手だが、自分の言葉を聞き取ってみせた柳瀬クンのことが気になるから双子の意見に賛成だ。と、大体そのような意味のことを言いながら、コクコクと頷く慶。
「俺も同じだ。もう少しコイツを見ていたいからな」
見ていない僅かな間に、すっかり顔色を元に戻していたらしい。偉そうに両腕を組みながらそう言い、柳瀬クンを視界に入れてニヤリと口角を上げる会長。
それぞれの反応に多少違和感を覚えたが、特に意外性を感じる程ではなかったため、すぐにそれを頭の隅に放り投げた。
「でもぉ、あと30分ぐらいで昼休憩時間が終わっちゃうよぉ?次は出る予定だしぃ、何か食べないと~」
「だったら龍雅達もここで食べたらいいだろ!!!!!そうしたらどっちもできるぞ!!!!!あ、これがいっせきにちょうってやつだな!!!!!」
これぞ名案だ!、とばかりに柳瀬クンが声をあげる。その声音が輝いており、自分の案が採用されるはずだと、そう信じて微塵も疑っていないのが窺える。
「あ、あのね、柳瀬君」
「春人って呼べって言っただろ恋春!!!」
「う、うん、そうだったね。春人君あのね、生徒会の皆様は2階席だから、ここで一緒に食べるのはむりだと思う、んだけど…」
可愛いよりの平凡な子─恋春というらしい─は、こちら側の事情を柔らかくした言葉に直し、至って穏やかに柳瀬クンを諭そうとしてくれた。
「そうなのか?!!!!!でもおかしいだろ!!!!!なんで2階席でって決まってるんだよ!!!!!どこで食べてもいいだろ!!!!!」
生徒会役員は必ず2階席でないといけない、という校則はないから、確かにどこで食べるのも個人の自由だ。
しかし、俺達が下で食事を摂ると、今のように周囲が騒がしくなり、ゆっくりとしたい生徒の迷惑になる。また、俺達自身も休まらないという理由で、必然と2階席で食事をすることが代々暗黙の了解となっていた。
「えっとね、で、でもそうなってるから…」
「あっ!!!じゃあオレ達が2階席に移動したらいいんだ!!!!!な、それならどっちもできるだろ!!!!!」
2階席は一般生徒や教師は利用出来ない。これは暗黙の了解ではなく、校則で決まっているものだ。理由は恐らく、上記と似たようなものだと思われる。
「実はね春人、校則で2階席は、生徒会と風紀以外利用禁止になっているんだ」
先程の爽やかっぽいイケメンが、恋春クンの援護をしてくれた。因みに不良っぽいイケメンは、あれからずっとこちらを睨んで黙っている。特に殺気もこもっていないし、怖くもないので無視しているが。
「そうなのか!!!!!校則ならしょうがないな!!!!!!!なら、龍雅達もここで一緒に食べよう!!!!!!!」
話題が一周して元に戻ってきた。
「だ、だからね…」
「はっ、いいだろう。俺も今日はここで食ってやるよ」
この不毛な会話に終止符を打つように、会長がそんなことを言い出した。ここの誰よりも、己の影響力を熟知しているはずの会長が。
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