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第43話 (副会長side)
しおりを挟む〘副会長side〙
本日は転入生が来る日。
昨日ジャンケンで会長に勝ってしまったため、私が出迎えをする羽目になってしまいました。正直とても面倒ですね。
だって、前の高校で何やら問題を起こされたらしい人ですよ。というか、入学式から半月も経っていませんし。
そんな人を、貴重な私の自由時間を削って、朝早くから出迎えに行かなくてはならないだなんて…本当憂鬱です。
校舎と寮から徒歩20分ぐらい離れている、無駄に大きな正門を見上げながら思わずため息をつきました。
しかも何故か、昨日ドヤっていたあの会長を思い出してしまい、転入生のことに関して感じていたストレスにプラスされ、ムカつき度まで上がってしまいました。
まぁ、このストレスは想像上の会長を何回も引っ叩くことで解消しましたが。
ふふふ、いい気味ですね…。
ふと腕時計を確認すると、転入生が来るという7:30を余裕で30分以上越えていることに気がつきました。
「……転入初日から遅刻ですか…。転入生は、情報通りの問題児のようですね…」
門を睨みつけるかのように見ながら、誰ともなくボソッと呟いたその時でした。
「ちょっ…!!そこのヤツどけぇぇぇえええぇッ!!!!!!?」
上空から人の声がしたと思ったら、何かが超高速で落ちてくる気配を感じたため、ほとんど反射で横に避ける。
次の瞬間、“それ”は先程まで私が立っていた場所に、すごい音をたてながら不時着しました。その衝撃で地面は多少抉れ、モワモワと土ぼこりがたち上がります。
「~~っ!いってぇ…」
思わず、といった様子で声を漏らしつつ、普通に立ち上がった“それ”の正体は小柄な人間(?)でした。何故“(?)”がついたのかというと、その人はとても不思議な格好をしていたからです。
頭はアフロとはまた違った、モジャモジャとした、強いて言えば毬藻のような黒い髪をしています。前髪も長く、顔は半分ぐらい見えません。辛うじて分厚い黒縁眼鏡をかけている事が分かるぐらいです。ぱっと見、決して清潔とは言えませんね。切らなくともいいので、せめてトリートメントぐらいして欲しいです。品位が疑われますよ、本当。
というか、何故この人は上空から降って来たのでしょうか。しかも、あんな盛大に地面へ不時着していたのに、何故怪我ひとつしている様子が見られないのか。
…やはりこの人は、人外か何かなのでしょうか。
「避けるだなんて酷いんだぞ!!!俺が怪我をしたらどうするんだよ!!あ、お前イケメンだな!!!俺は優しいからな!!謝ったら許してやるよ!!!!」
どうしましょう、この物体が喚いていることの意味が全く分からないです。
とりあえず微笑んでおきました。
いつもより結構引きつったものになっている自覚はあります。
もしかしてというか、もしかしなくても、この人は多分……うん、これ以上考えるのは止めましょう。私の心の平穏のために。
そうではないことを祈りますが、9割9部そうなんだろうなぁと、諦めに似た予感があります。最悪です。
「…ところで貴方はどちら様でしょうか。名前と入場許可証の提示をお願いします」
「人に何か聞くときは自分から言わないといけないんだぞ!!!まぁいいけどな!!!俺は柳瀬春人!!俺は人気者だからな!!!叔父さんがどうしてもって言ってたらしいから、東条高校を辞めて、今日からここに入ることになったんだ!!!!で、お前は誰だ!!?」
この物体は何故話すごとに一々自分自慢を入れるのですかね。なんです?入れないと死ぬのですか?(笑)
しかもずっと大声で話すだなんて。そんな大声で言わなくとも聞こえてますよ。これは馬鹿なのでしょうか。…うんまぁ、馬鹿なのでしょうね。
「……入場許可証の提示をお願いします」
こんなものの相手をしていたくないと思いながら、淡々とした口調でマニュアル通りの事務的発言をしました。
あぁ、一刻も早く彼に会ってこの疲れを癒したいです。
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