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第36話

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 少しして。

 俺と慶は、転入生の情報が送られてきたことを生徒会トップ1とトップ2の2人に伝えるタイミングを見計らっていた。
 しかし、会長と副会長による謎の言い合いは更に数十分も続き、珍しくいい加減少しイライラしてきていた慶が2人に右ストレートを与えて終了させた。

「「~~~ッ」」

 実は慶が【soleilソレイユ】で1番力が強い。だから、2人は痛みのあまりうずくまって悶絶しているが、かなり手加減されていたのだと分かる。多分、慶が本気の5割ぐらいの力を出していたら、普通に壁まで吹っ飛んでいたことだろう。

「……じご、じ、とく…」

「どんまい~☆あ、会長と副会長、2人でじゃんけんしてよぉ」

 まるで蔑むような目で2人を見下ろす慶と、そんな2人を見てケラケラ笑っている俺。
 もし、ここに一般生徒や教師がいたら、この様子を思わず二度見することだろう。それぐらいカオスだ。


「……あ"?じゃんけんだァ?」

「…何故私がそれを行わなければいけないのです??」

 時間差で俺の言葉に反応した2人は、やはり反対した。

「け~い」

「………」

 呼ばれた慶は、俺の言葉の意味を正確に理解したのか、無言で再び会長達を見下ろす。


「…チッ……あー、わぁーったよ。クソッ、やりゃいいんだろ、やりゃあ」

「わ、分かりましたよ…。ですから慶、そんな目で見ないで下さい」

 どこか少し怯えた様子の2人は、渋々じゃんけんを行うことを了承した。なるほど、【soleilソレイユ】の真の裏ボスは慶だったのか(笑)まさかのワンコによる恐怖政治ww

「よぉしッ!じゃあ、俺が掛け声言うねぇ。さぁ、会長と副会長、早く立って立ってぇ!」

 床にうずくまっていた2人は、大分痛みも引いてきたのか、思いのほか速く立ち上がって向き合った。

「いっくよぉ~。…最初はぐ~、じゃんけんポンッ!」




 結果。
 会長がグー、副会長がパー。

「あ、私が勝ちました」

「この俺様が負けた、だと…ッ!」

 副会長はそうあっさりと、ただ事実のみを無感動に言った。相変わらず姿勢はピシッと整っている。

 で、負けた会長は、同じく事実のみを言っているが、口調にすごく感情がこもっている。しかも若干項垂れてるし。

 あぁ会長…一人称が俺様になる程悔しかったのか…

 真面目にウケるww
 え、じゃんけんごときでムキになる会長って面白すぎない??


 まぁ、この場合は会長の方がある意味勝ちなんだけどな。

「じゃあ転入生の迎え、副会長よろしくねぇ」

「はぁ!?何故ですか!?」

「副会、長…じゃんけん、勝った……。勝った、方…迎え、行く…決め、た…」

「ハッ!俺をいつもコケにしていた報いだな」

 さっきまですごくへこんでいた会長が、次の瞬間にはザマァと言わんばかりの表情で、めっちゃ偉そうにして副会長を見ていた。変わり身の速さよww


「はぁ…分かりましたよ…。それで、転入生に関する資料は送られてきましたか?」

 深々とため息をついて了承した副会長は、次に送られてくるはずのデータに関して聞いてきた。

「副会長達が言い合いをしてた時にねぇ~。今から皆のパソコンに共有するよ~」

 自分のパソコンで素早く色々と入力して、秒で生徒会メンバー全員に共有させた。

「あぁ水無月、ありがとうございます」

 共有されたデータを早速確認した副会長は、次第に顔を強張こわばらせていった。
 普段顔に貼り付けている笑みが引きつって、いつも以上に目が笑っていない。

 まぁ、そうなる気持ちは分かるけどさ。
 でも、俺だったらそんなヘマしない。やるなら完璧にがモットーだからな。

 現に、俺はいつも浮かべている笑みが作った人工物だと誰も気付いていない。まぁ、そもそもの前提からして違うのだから当然と言えば当然なのだが。



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