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第35話

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 を取り戻した俺は、慶の腕の中で至って冷静に思考を巡らせていた。

 さて、どう振る舞えば先程までのをなかった事に出来るだろうか。まぁ完全には無理だろうが、ある程度はこのあとの言動によっては誤魔化せるはずだ。

 肩越しにちらりと会長と副会長を見る。
 2人は未だに謎な言い合いを続けており、俺達の様子には全く気付いていない。
 良かった。会長と副会長は聡すぎるところがあるから誤魔化すのはかなり難しいし、むしろ余計な事までバレそうだからな。

 慶1人だけなら何とかなりそうだ。それに、あの時思った事を声にも顔にも出してなかったしな。


「あ~…慶、ごめんねぇ。もう大丈夫だよぉ~」

「ん……よか、た…。…ね…真琴…な、で…怖…?」

 よしよしと、抱きしめたまま今度は頭を撫でられる。
 あぁ、なんて優しいんだろう。なんだかほわほわする。

 もう少しこれにひたっていたくなる自分を振り払って、やはり聞いてきた慶にいつものチャラ会計な俺で答える。

「なんで怖がっていたのかって~?だってぇ、魔王様副会長が御降臨なされたからねぇ。それが怖いのは当たり前でしょ~?」

「そ、だけど……。で、も…副会、長…いつも、より…怖、なか、た…。それ、に…そのこと…じゃなくt…」

「ん~。ほら今日はさぁ、色々あったからねぇ。それで疲れてたからその分ダメージが大きかったんじゃないかなぁ~?」

 それ以上言わせないと言外に言わんばかりに、慶の言葉に声を重ねる。ここから先の俺の内側には、例え生徒会メンバーだとしても入って来て欲しくない。

「……そ、いう…もの…?」

「そうそう~。あ、そういえば、会長達はいつまでああしてるつもりなんだろうねぇ~」

 心情を察したのか、慶はあれ以上コチラに踏み込んでくることはなく、半信半疑という感じながらも、ひとまず納得してくれた。

 それに肯定してから、ごく自然に話題をすり替える。
 もうこの話はしていたくない。更にボロが出ても困るし。

「確か、に……。…も…てんにゅ、せ…迎え…行かせる…?」

「あ、それいいねぇ~。」

「ん…なら、そ、する…?」

「そうしよっか~」

 よし、いい感じに誤魔化せた。
 というか、その流れであの2人のどちらかに転入生を迎えに行かせる事が決定されたし、ラッキー。
 後から文句言われても、聞いてなかったのが悪いんだし。うんうん、だからこれでオールオッケーだ。 


「あ、転入生の情報きた~」

「…どう…?」

 自分の席に座った俺の背後に慶が立ち、肩に頭を乗せてきた。特に疑問にも思わず、そのまま2人でパソコンの画面を見る。

「「………」」

 内容は至って普通だった。

 そう、普通だったのだ。一部を除いてだが。
 ほぼ何も無さすぎて、それが逆に怪しい。

 だから、帰ってからちょっとハッキングして、より詳しく調べてみる事に決めた。


 そういや、何故顔写真が載ってないのだろう?
 あまりにも自然すぎて、一瞬そんな事も考え付かなかった。これも怪しいな。




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