34 / 120
第28話
しおりを挟むふと目が覚めた。
アラームはまだ鳴っていない。
ポケットに入れていたスマホを取り出して時間を確認すると、大体40分は経っていた。
あと20分は寝れたのに……何故起きたんだ。
少し寝ぼけた頭でそう思う。
〘流ッ石主人格サマ。ボクに言われる前に起きたね〙
銀蝶がそう言ったのを聞いたと同時に、誰かがこちらへ近づいてくる気配がした。あぁ、だから目が覚めたのか。
木々の茂みの隙間からそっと覗う。
よく見ると、その人物は背の高い黒髪の生徒だと分かった。
風紀委員会に所属していることを示す、白の腕章を右腕に着けている。普通は黒色で誇りと正義を表す椿と竜胆の模様が刺繍されているのだが、この生徒のは金色でそれが刺繍されていた。
これを着けられるのは、この学園で1人しかいない。
神無月葵─会長と大変仲が悪く、俺達の1つ年上である風紀委員長だ。
この人とはこの学園で初めて会ったはずなのだが、当初から色々とかまってもらっていた。始めは世話好きな人なのかと思って納得していたが、接しているとすぐにそうではないことに気づいた。
そういうのはどちらかと言うと、委員長達と同年で風紀副委員長である長月朔夜の方だ。あの人は根っからのお兄ちゃん気質を持っている。
だから、気になったかつての俺は一度だけ、委員長に“何故俺にかまってくれるのか”と聞いたことがある。
しかし、委員長はどこか悲しそうな表情をしただけで、質問には答えてくれなかった。
その理由は今でも分からない。
閑話休題。
さて、どうしたものか。
確実にこちらへと近づいてくる委員長を横目に見ながら、“出ていくか”それとも“気づかれないうちに退散するか”のどちらを選ぼうか考える。
……うん、よし。バレた時がキャラ的にあれだし、自分から出ていった方がいいか。
委員長はこんな所まで見回りをしているのか、時々立ち止まって植物の間を見ている。
このベンチの所にいたことがバレてしまえば、安心できる場所がなくなってしまうので、委員長が向こう側を見たらすぐに出て行くことにした。
……………よし、今だっ!
音をたてず、静かに目標地点へと走る。
一応、ここに来た時から気配は消しているので、それで気付かれることはない。
ちらっと委員長を見ると、もうすぐでこちら側に向き直りそうだったが、ぎりぎりで間に合った。息は上がっていない。
「あれぇ?委員長じゃ~ん」
ヘラリと、何食わぬ顔で笑顔を浮かべながらそう声を上げ、マイペースに歩いてあちらへ向かった。
45
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
噂の補佐君
さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。
[私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。
個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。
そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!?
無自覚美少年な補佐が総受け
*
この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。
とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。
その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。
もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
無自覚な
ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。
1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに
イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。
それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて
いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外
何をやっても平凡だった。
そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる
それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない
そんな存在にまで上り積めていた。
こんな僕でも優しくしてくれる義兄と
僕のことを嫌ってる義弟。
でも最近みんなの様子が変で困ってます
無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
地味で冴えない俺の最高なポディション。
どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。
オマケに丸い伊達メガネ。
高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。
そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。
あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。
俺のポディションは片隅に限るな。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる