4 / 12
初恋を知った魔法使いは世界を崩壊させる
魔法使いはシンデレラを連れ去りました
しおりを挟むその途端、ぽわんっとキラキラと輝く黒銀の靄がレーラを包み込んだ。
あまりにも突然のことに驚いて、レーラは声を出せない。
そしてその次の瞬間には黒銀の靄は消え去り、そこにはとても美しく愛らしい美少女が立っていた。
元々着ていたドレスと同じプリンセスラインドレスは、決して何色にも染まらぬ純粋な漆黒で、ウエスト部分には、まるで闇夜の満月のような黄金色のリボンが結んである。
足元を飾るのは宝石のオニキスで出来たヒールの靴で、しかしどうなっているのか、硬質そうなそれは、硬すぎるということはなく、恐らく長時間履いていても足が痛くなることはないだろう。
「わぁ…!すごい…っ!」
すっかり変わった自分の姿を見下ろして、レーラは小さく感嘆の声をあげた。
「…あっ、この格好って、全部バジェスの色だね。全身がバジェス包まれて守られてるみたいで、なんだか安心するなぁ」
って、恥ずかしいこと言っちゃったな。
そう言って柔らかい笑顔を浮かべ、微かに頬を赤く染めながらテレている。
「(……っ!それ、なんて殺し文句…ッ!!あぁもうっ、今すぐレーラをここから連れ去らって、2人だけの世界に行きたい…!)」
バジェスはそんなレーラを間近で目撃して、内心悶絶していた。ついでにヤンデレ度も上がった。
「…か、かわいいよ、レーラ…。君が僕の色を身に着けているというのが、こんなにも嬉しいことだなんて…今までの僕なら想像すらできなかったよ…。あぁ、他のやつにかわいらしい君を見て欲しくなし見たやつの眼球を抉り取ってしまいたいけど、僕の色を纏う君を見せつけてもやりたい…」
胸焼けしそうなほど甘ったるい目でレーラを見つめる。ヤンデレらしく、心做しか不穏なことも言っていた。
不幸か幸か、レーラはそのセリフに気づかなかった。
「(まぁ、今はそれはいいか…。えっと、僕達が乗って行く馬車は何にしようかな…。あぁ、あれにしよう。あれが1番僕と相性が良さそうだし、何よりレーラの気配が強い)」
何もない空中から艶のある黒い杖を取り出し、それに向けて魔法を放った。キラキラ輝く黒銀の靄はレーラの時と同じようにそれを包み込み、一瞬の後には立派な黒塗りの馬車が出来ていた。
「すごい…。黒薔薇が一瞬で馬車になっちゃった…!」
またしても感嘆の声をあげ、黒塗りの馬車となった元黒薔薇を見上げる。近づいてよく見ると、馬車の外装に薔薇の花や葉の美しいレリーフが彫ってあった。
「僕は最強の魔法使いだからね。これぐらい簡単さ」
そう言ってから、バジェスはレーラに掌を上にして右手を差し出した。
「さっきも言ったと思うけど、一緒にここを出てくれませんか。─いや、僕に連れ去られてくれないかな、レーラ。どうやら僕は、君を愛してしまったようなんだ」
「…えぇ、勿論よ、バジェス。実は私も、貴方のことが好きになっていたみたいなの」
レーラは、差し出されたその掌の上にそっと自分の小さな手を重ねながら言った。
「─私をここから連れ去って、魔法使いさん」
「喜んで、My Lady」
騎士が姫に忠誠を誓うように、バジェスはレーラの手の甲に優しく口付けた。そして、レーラにはバレないようにそっと、“お互いが死んでも決して離れられない”という内容の契約魔法を発動させた。
これで、レーラは僕だけのものだ。
そう思い、バジェスは再びうっそりと暗く微笑んだ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
初瀬 叶 短編集
初瀬 叶
恋愛
今まで投稿した短編2作品に新作をプラスして短編集にしました。お楽しみいただけると嬉しいです。
※相変わらずのゆるふわ設定です
※私の頭の中の異世界のお話ですので、史実等に基づくものではありません。ご理解下さい
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ヤンデレ王太子と、それに振り回される優しい婚約者のお話
下菊みこと
恋愛
この世界の女神に悪役令嬢の役に選ばれたはずが、ヤンデレ王太子のせいで悪役令嬢になれなかった優しすぎる女の子のお話。あと女神様配役ミスってると思う。
転生者は乙女ゲームの世界に転生したと思ってるヒロインのみ。主人公の悪役令嬢は普通に現地主人公。
実は乙女ゲームの世界に似せて作られた別物の世界で、勘違いヒロインルシアをなんとか救おうとする主人公リュシーの奮闘を見て行ってください。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる