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初恋を知った魔法使いは世界を崩壊させる
魔法使いは最愛の人を見つけました
しおりを挟むシンデレラが不遇な目に合っているのを、僕はずっと見ていた。僕は魔法使いだから、簡単に彼女を救う事も可能だったが、シナリオ通りにしないといけないので何もしなかった。そのことに対して、特に疑問にも思わなかった。
「貴方は?」
そうして今、シンデレラと初めて目が合った。
背中を何かが走り抜けるような感覚がして、次の瞬間からはシンデレラの周りがキラキラ輝いているように見え始めた。
彼女の仕草や言動の何もかもが、僕の目にかわいらしいものとして映った。
そう、僕はシンデレラに一目惚れしてしまったのだ。
「ぼ、僕は…」
シナリオにはない出来事に内心戸惑う。
本来僕は、シンデレラに恋をしないはずなのだ。
いや、そもそも自己を持たない存在であるよう設定されているのだ。だから、初めて持った“欲”というものへの耐性が全く無かったため、思うがままに行動した…して、しまった。
「僕の名はバジェス、魔法使いさ。シンデレラ、僕は君にとびっきりの魔法をかけに来たんだ」
僕には許されていない、彼女の手を握るという行為をし、うっそりと内心微笑んだ。
そうして、彼女が徐々に僕のことだけを見てくれるようになるという、ちょっとしたおまじない程度の魔法をコッソリかける。世界から支給された、僕にしか見えない物語のシナリオをそっと破り捨てながら。
ただただ、彼女を自分だけのものにしたいという、俗に言う“独占欲”などという醜い欲望に従って僕は動いた。
これらの行動によって、後からどのような事態になってしまうのか、まるで考えもしないで。
恐らく、既にこの時からそれは少しずつ崩れ始めていたのだろうと思われる。でないと、いくらバジェスだとしても、あれ程まで上手くはいかなかっただろうから。
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