上 下
22 / 80

22.迷い、悩み……

しおりを挟む

 リカルドに告白された夜、眠れなかったアリアは、ぼんやりと部屋から夜空を見つめていた。
 自然が多いこのフレルデントは、夜になると星が良く見える。
 綺麗だなぁ、と思いながら、アリアはリカルドにどう返事をするべきかと考えていた。

 いつの間にかアリアは、リカルドの事を好きになっていた。
 明るくて優しい彼に好きだと言われて、とても嬉しかった。
 でも、自分に自信のない彼女は、考えてしまう。
 こんな自分では、彼に迷惑がかかってしまうのではないかと。
 頭の中で、冷たかった婚約者の声が蘇る。

『役立たず』

 役立たずの自分では、きっとリカルドに迷惑をかけてしまう……。
 しかも、声が出ないままなのだ。

「アリア、ちょっといい?」

 ドアがノックされ、サリーナが部屋に入ってきた。
 筆談用のノートにどうかしたのかと書くと、サリーナは困ったような表情でアリアを見つめた。

「それは、お姉ちゃんの台詞よ。アリア、何かあった? 今日、こちらに戻ってきてから、何か思い詰めたような表情をしてたから……」
『そう?』
「そうよー。お姉ちゃんはアリアの事、何でもわかるんだからね! さぁ、何を悩んでいるの? お姉ちゃんに何でも相談して?」

 相談してと言われても、何て言えばいいのだろう?
 リカルドに告白されたと打ち明けたら、姉はきっと驚くのではないかと思った。
 だが、サリーナは優しくアリアを見つめ、言う。

「アリアが悩んでいるのは、リカルド様の事じゃない?」

 アリアは驚いた。どうしてサリーナはわかったのだろう?
 驚くアリアの表情を見つめ、サリーナは苦笑した。

「さっきも言ったけど、私は今日戻ってきたアリアの様子がおかしいなって思ってたの。ステファンも、リカルド様の様子が変だったから問い詰めたらしくって……そうしたらね、とうとうアリアに告白されたって……だから、アリアが悩んでいるのは、リカルド様の事なんだろうなーって……」

 アリアは耳まで赤くなってサリーナを見つめた。
 もしかして、ステファンもサリーナも、リカルドがアリアに好意を持っていた事を知っていたのだろうか?

「リカルド様の気持ち? もちろん知ってたわよ。ロザリンド様や他の方々もね。気付いてなかったのは、あなたくらいよ」

 嘘でしょ、と思いながら、アリアは顔を覆って俯いた。
 サリーナはアリアの隣に椅子を置くと、初々しい反応をする妹の背中を優しく撫でる。

「ねぇ……アリアはリカルド様の事が嫌い?」

 アリアは俯いたまま、首を横に振った。

「じゃあ、好き?」

 こくんと頷き、返事をする。

「お姉ちゃんはね、リカルド様の事、いいお話だと思ってるの。リカルド様なら、アリアを幸せにしてくれると思うわ。あんな男と違って……」

 あんな男というのは、ディスタルの事なのだろう。
 確かに、ディスタルと違って、リカルドはアリアをとても大切にしてくれる。
 だけど、アリアはリカルドの申し出に、応えていいのだろうかと迷い続ける。

『私は、自分に自信がないの……。こんな私では、リカルド様に迷惑がかかってしまうんじゃないかと……』

 今の気持ちを正直にサリーナに伝えると、彼女は困ったような表情で、アリアの手を握った
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

精霊に愛されし侯爵令嬢が、王太子殿下と婚約解消に至るまで〜私の婚約者には想い人がいた〜

水都 ミナト
恋愛
精霊王を信仰する王国で、マナの扱いに長けた侯爵家の娘・ナターシャ。彼女は五歳でレイモンド王太子殿下の婚約者に抜擢された。 だが、レイモンドはアイシャ公爵令嬢と想い合っていた。アイシャはマナの扱いが苦手で王族の婚約者としては相応しくないとされており、叶わない恋であった。 とある事件をきっかけに、ナターシャは二人にある提案を持ち掛けるーーー これはレイモンドとアイシャ、そしてナターシャがそれぞれの幸せを掴むまでのお話。 ※1万字程度のお話です。 ※他サイトでも投稿しております。

【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」

まほりろ
恋愛
学園の食堂で第一王子に冤罪をかけられ、婚約破棄と国外追放を命じられた。 食堂にはクラスメイトも生徒会の仲間も先生もいた。 だが面倒なことに関わりたくないのか、皆見てみぬふりをしている。 誰か……誰か一人でもいい、私の味方になってくれたら……。 そんなとき颯爽?と私の前に現れたのは、ボサボサ頭に瓶底眼鏡のひょろひょろの男爵だった。 彼が私を守ってくれるの? ※ヒーローは最初弱くてかっこ悪いですが、回を重ねるごとに強くかっこよくなっていきます。 ※ざまぁ有り、死ネタ有り ※他サイトにも投稿予定。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」

馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます

白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。 そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。 最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。 『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】隣国の王弟殿下が離縁したいのと、私が婚約破棄したい件について、利害が一致しているようなので一役買おうと思います!

藍生蕗
恋愛
え?また婚約破棄ですか?伯爵令嬢マリュアンゼは、王弟フォリムの都合に巻き込まれる形で婚約者となった。婚約破棄破棄の条件は、騎士団団長の肩書きをも持つフォリムに勝つ事。フォリムに挑み続ける日々を送るマリュアンゼだが、それはある日突然王命により破棄される。マリュアンゼには隣国の王弟、ロアンの第二妃になるよう王命が下ってしまう。確かに婚約破棄を望んでいましたが、これには納得行きません! しかし相手は国王、分が悪い。それに偶然会った隣国の王弟は、実際にマリュアンゼを妻に娶る事では無く、自身の離縁が望みなようで……分かりました、協力しましょう!その代わり私のお願いも聞いて下さいね? 短編「婚約している人に振られました。え?これって婚約破棄って言うんですか?」の続きになります。短編読んで無くても分かる、と思います。 ※ 他のサイトでも投稿しています

殿下は、幼馴染で許嫁の没落令嬢と婚約破棄したいようです。

和泉鷹央
恋愛
 ナーブリー王国の第三王位継承者である王子ラスティンは、幼馴染で親同士が決めた許嫁である、男爵令嬢フェイとの婚約を破棄したくて仕方がなかった。  フェイは王国が建国するより前からの家柄、たいして王家はたかだか四百年程度の家柄。  国王と臣下という立場の違いはあるけど、フェイのグラブル男爵家は王国内では名家として知られていたのだ。   ……例え、先祖が事業に失敗してしまい、元部下の子爵家の農家を改築した一軒家に住んでいるとしてもだ。  こんな見栄えも体裁も悪いフェイを王子ラスティンはなんとかして縁を切ろうと画策する。  理由は「貧乏くさいからっ!」  そんなある日、フェイは国王陛下のお招きにより、別件で王宮へと上がることになる。  たまたま見かけたラスティンを追いかけて彼の後を探すと、王子は別の淑女と甘いキスを交わしていて……。  他の投稿サイトでも掲載しています。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

処理中です...