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第4章:彼と彼女が与える影響
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しおりを挟む「あれ?」
幸太郎からもらったプールの招待券で、夏休みにみんなで遊びに行こうという事になり集まったのだが、集まったメンバーを見て、春斗は首を傾げた。
充と椿、忍と里美、哲哉と由香、悠馬と砂月、そして……。
「お前、誰?」
春斗が聞いたのは、豊治の隣に居る少女だった。浅黒い肌をした少女は、
「アタシは赤井淳奈」
と言って、自分の腕を豊治の腕に絡める。
春斗は彼女とは初対面だったが、豊治の知り合いなのだろうと思い、それで納得した。
それにしても、上手く男女一組になったものだと思う。
他にも仲の良い友達を誘ったのだが、今回は用事があって参加する事が出来なかったのだ。
入場して男女に分かれて更衣室に向かう。
「なぁなぁ、オレ、冬美と一緒に居たいから、中に入ったらみんなバラバラでいいよな?」
春斗がそう言うと、充や哲哉あたりは渋い顔をするかと思っていたが、予想外に彼らはみんな頷いた。
普段なら駄目だと反論されるところなのに、一体どうしたのだろうと春斗は首を傾げた。
「なぁ、何かあったか?」
春斗がそう言うと、充たちは顔を見合わせて苦笑した。
代表して悠馬が口を開く。
「何かって……お前、冬美と二人がいいんだろ?」
「あぁ」
「じゃあ、それでいいだろう」
「まぁ、そうなんだけどよ……」
なんとなくスッキリしないまま春斗が頷くと、先程淳奈に腕を組まれていた豊治が悠馬をつついた。
「ちゃんと言った方がいいんじゃない?」
という豊治の言葉に首を傾げると、そうだね、と笑みを浮かべて忍が頷いた。
悠馬はチラリと充と哲哉に顔を向け、二人が頷くのを確認するとため息をついた。
そして春斗へと視線を戻すと、面倒くさそうに口を開く。
「春斗、オレらもさ……付き合い始めたからよ」
「へ?」
春斗は、一瞬悠馬が何を言ったのかわからなかった。
首を傾げたまま悠馬、豊治、忍、哲哉、充の純に顔を見つめると、最後に見た充がほんのりと頬を染め、
「まぁ、そういう事だ」
と呟くように言う。
「そういう事って?」
「だから、くそ、こいつ、本当に鈍いなっ」
「え?」
「おいっ! お前なっ!」
理解力の乏しい自分に充が苛立ったのがわかったが、春斗にはまだ今の状況が理解出来ていなかった。
そんな春斗の肩に手を置き、豊治が言う。
「あのね、春斗……。ボクたちみんな、好きな女の子と二人きりがいいんだよ」
「え? どういう事だ?」
また首を傾げた春斗を見て、充、悠馬、哲哉が深いため息をついた。
忍は、「春斗は鈍くて面白いなぁ」と、顔にうさん臭い笑みを浮かべていて、豊治は少し困ったような表情をしていたが、辛抱強く春斗に説明を続けてくれた。
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