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第1章:それは、とても幸せな日常
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しおりを挟む「ほれ、じいちゃん。土産だ。冬美の作ったクッキー」
冬美と別れ帰宅した春斗は、リビングで寛ぐ幸太郎に近づくと、冬美から受け取ったクッキーが入った袋を渡した。
「あら春斗、帰ってくるのが遅いと思ってたら、冬美ちゃんのところに行ってきたの?」
キッチンで夕食を用意していた秋妃に声をかけられ、春斗は頷いた。
和真はまだ帰ってきていないらしく、幸太郎も秋妃も先に食事をせずに春斗が帰宅するのを待っていてくれたようだ。
「ごはんは? いらないの?」
「冬美んちで握り飯食わせてもらったけど、もちろん母ちゃんのメシも食う」
「わかったわ。すぐに用意するわね」
頷いた秋妃は夕食の準備を再開する。
それを確認して、春斗はリビングのローテーブルに敷いたティッシュの上に、冬美のクッキーを並べている幸太郎の隣に腰を降ろした。
「冬美はやっぱり可愛いのう~。可愛い事をするのう~」
そう言った幸太郎は、ティッシュの上に綺麗に並べたクッキーを、スマートフォンで撮影していた。
今日春斗がもらって帰ってきたクッキーも、以前彼女が幸太郎に送ったもののように、春斗や幸太郎の似顔絵が描かれていた。
冬美は本当に器用だと思う。そして、幸太郎の言う通り、可愛い事をしてくれると思う。
「食べるのもったいないのう~」
そう言って笑った幸太郎に春斗も頷いたが、ずっと置いておくわけにもいかないのも現実だ。
「なぁ、じいちゃん。確かにもったいねぇけど、美味しくいただいいた方が冬美も嬉しいと思うぜ。それに……」
「それに、なんじゃ?」
首を傾げた幸太郎に、春斗はとびきりの笑みを浮かべると、言った。
「それに、今度の日曜、冬美、うちに遊びに来るって言ってた! 冬美の事だから、絶対に何かまた作って来てくれるぜ!」
だから、食べずに大事にとっておくよりも、美味しくいただいてしまった方がいい。
春斗がそう言うと、そうじゃなと幸太郎は豪快に笑い、この日春斗が持って帰ってきたクッキーは、明石一家の食後のおやつとなった。
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