Happy Life ~あるバカップルが周りに与える幸せな影響~

明衣令央

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第1章:それは、とても幸せな日常

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「すげーな、お前……」

 自分に似たぬいぐるみなんて、少し恥ずかしいが嬉しいとも思う。
 無意識のうちに似せて作ってしまったという事は、冬美がそれだけ春斗の事を考えてくれているという事で、春斗の姿形を記憶してくれているという事だ。
 それって、彼女にすごく好きだといわれているようで、春斗は嬉しかった。
 春斗はベッドの元の位置にぬいぐるみを戻すと、冬美を振り返った。

「おにぎり……食っていい?」

「うん、どうぞ」

「サンキュ」

 短く礼を言って、春斗は冬美が持ってきてくれたおにぎりに手を伸ばした。
 おにぎりは二つ。両方とも綺麗に三角形に握られていて、海苔が巻かれている。

「中身は?」

「梅干しと、おかかだよ」

「梅干し、冬美が漬けたやつ?」

「うん、そうだよ」

「ふうん」

 大きく口を開けて、おにぎりにかぶりつく。最初のおにぎりは梅干しだった。

「うまっ……」

 空きっ腹にやっと与えられた食べ物。一気に口の中に入れて飲み込むと、

「ちゃんと噛まなきゃ駄目だよ」

 と優しく笑った冬美がお茶を注いだコップを差し出してくれた。春斗はコップを受け取って一気に飲み干すと、二つ目のおかかおにぎりへと手を伸ばし思いきりかぶりついた。

「ごちそうさん。冬美、ありがとうな」

「どういたしまして」

 おにぎりを食べ終えた春斗は冬美を見つめた。彼女は嬉しそうに春斗を見つめていた。
 今食べたのはおにぎりだが、彼女はお菓子作りも他の料理も上手い、家庭的な女の子だ。いい嫁さんになるだろうなと思うと、春斗は嬉しくて自然に笑みを浮かべた。
 もちろん彼女の旦那さんになるのは自分だ。他の誰にも渡すつもりはない。

 まだ冬美にはこんな話をした事はないが、春斗は冬美との間に子供は二人欲しいと思っている。
 出来れば、可愛い男の子と女の子……。そして自分は、子煩悩な父親になるつもりだ。こんなふうに思うのは、自分の両親がバカップルだからかもしれない。

 そこまで考えて、春斗は頬を染めた。
 子供を作るという事は、冬美とチョメチョメするという事だ。
 自分と彼女の初めてがどこでどういうシチュエーションでなのかはわからない。
 春斗の部屋かもしれないし、冬美の部屋――この場所かもしれない。

 春斗は冬美のベッドに目を向けた。
 今はまだ早いとは思うけれど、いつか、自分は彼女をあの場所に押し倒したりするのだろうか。
 それはいつなのだろう? 例えば、今、とか?
 いや、さすがにそれはないか。
 でも、自分たちはまだキスもしていない。まずはキスして、それから……。
 そんなふうに考えて、春斗はゴクリと生唾を飲み込んだ。
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