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第4章:ゴブリン・スタンピード

エリザベス・ディアス①

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 冒険者ギルドを出た後、リュシーさんは無言でビジードの門の外まで送ってくれた。

「いろいろと聞きたいことが増えたけれど、今はあえて聞かない。じゃあね、また店の方で待ってるよ」

「あぁ、またな」

 その言葉通りいろいろと気になっているはずなのに、リュシーさんは私たちを気遣ってくれた。
 リュシーさんって、しっかりした大人の男性だよね。
 リュシーさんと別れて、私たちはしばらく歩いた後に、テレポートの呪文で家まで戻ってきた。

「あぁ、お帰りなさい」

 出迎えてくれたアルバトスさんは、ユリウスの暗い表情を見て、くいと首を傾げた。

「何かあったのですか?」

 と聞いたアルバトスさんに、ユリウスは苦笑して、

「予想していなかった人に会いました」

 と言った。
 それから先は、私がお茶の用意をしに行っている間に、ユリウスの代わりにサーチートが説明をしてくれたらしい。
 まぁ、サーチートはただ一言、冒険者ギルドでエリザベスという女性に会ったということだけを言ったみたいなんだけどね。

「予想していなかったとは、ユリウス、あなたの読みが甘かっただけですよ」

 お茶を用意して私が戻ると、テーブルに突っ伏しているユリウスにアルバトスさんが笑いながら言った。

「ガエールの冒険者を助けた時点で、エリザベス様と会うことになる可能性くらい、考えておくべきですよ。あの方が孤児を育て慕われていることくらい、知っていたでしょう?」

「えぇ、確かにそうですね。伯父上の言う通りです。俺の読みが甘かっただけですね」

 ユリウスはそう言うと、私へと目を向けた。

「オリエ、伯母上の話をするよ。気になっているんだろう?」

「うん、もちろん聞きたい」

 淹れてきたお茶をみんなに配って、私はユリウスの隣の席に腰を下ろした。



「ゴムレスさんが言っていたけど、伯母上は、オブルリヒト王家からガエールの商業ギルドのレイリー・ディアスに嫁がれたんだ。財政難のオブルリヒト王家のために、ね」

 オブルリヒト王家が財政難だったっていうのは、以前にも聞いたことがある。
 確かそのせいで、ユリウスのお父さんである現オブルリヒト王は、先王に側室を娶らさせたと言っていた。

「伯母上はね、落ちぶれたオブルリヒトのために、ガエールの商人に売られたんだよ。そして、好きな女と結ばれたいという愚かな弟のために、伯母上はその運命を受け入れたんだ。まぁ、それでもオブルリヒトの財政は回復しなかったから、現王は側室を娶ったわけなんだけど」

 これだけ聞くと、エリザベス様ってすごく不幸な女性のように感じる。
 だけど、今日会った彼女は、とても明るくて気さくな方で、全くそんなふうに感じなかった。

「売られた、とユリウスは言いましたが、レイリーさんとエリザベス様の夫婦仲はとても良いのですよ。最初は政略結婚でしたが、お二人はとても愛し合ってらっしゃいますし、幸せな結婚生活を送ってらっしゃいます。ただ、お二人には子供ができませんでした」

「そう……だから伯母上は、孤児を育て、ガエールの母と呼ばれる存在になられたんだ」
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