上 下
258 / 325
第3章・冒険者デビュー

秘密の告白①

しおりを挟む


 二階に戻った私は、お茶を淹れようとキッチンへと向かった。
 あと、何か軽く食べられる物でも作ろうかと思う。
 リュシーさんもジルさんも、きっとお腹が減っているはずだろうし、キッチンをお借りしてもいいよね。
 料理はソフィーさんがしているんだろう、キッチンはとても綺麗だった。
 野菜スープとサンドイッチを作ろうと食材を出していると、

「オリエ、ごめん」

 と、突然ユリウスに謝られてしまった。

「どうしたの?」

「リュシーに俺の事を話す事にしたんだけどさ、俺の事を話すと、オリエの事も話さなきゃいけない事になるかなって……構わないかな?」

「あぁ、そんな事か。大丈夫だよ。ユリウスの好きにしてくれたらいいよ。ユリウスがリュシーさんになら話してもいいって思ったのなら、私はそれでいいから」

 私がそう言うと、ユリウスは少し困ったように笑った後、ありがとうと言って頷き、私を引き寄せて抱きしめた。

「俺、リュシーの事を、わりと……いや、すごく、好き、みたいなんだよね。自分の兄がリュシーみたいな人だったら良かったのにって、思っているんだ」

 耳元でごにょごにょとユリウスが言う。
 そうかぁ、ユリウスはリュシーさんがお兄ちゃんだったら良かったのにって思っているのかぁ。
 なんか、可愛いなぁ。
 背中をぽんぽんと叩いて、それ教えてあげたら? と言うと、頬を少し赤らめて、この事は秘密にしてほしいとか言うんだけど、ユリウスくん、ツンデレですか!
 カッコいいのに可愛いなんて、ものすごく萌えてしまう。
 私がそんな事を考えていると、ユリウスは、ふう、とため息をつき、真剣な表情をして小声で話を続ける。

「でも、全てを話しても、それからのリュシーの反応次第では、俺はリュシーの前から消えるつもりだから。申し訳ないけど、この事はオリエにも了承してもらいたい」

「どういう事? リュシーさんのことが好きで、信用しているから、ユリウスは自分の事を話すんだよね? それなのに、リュシーさんの前から消えちゃうの? それって、おかしくない?」

 首を傾げる私に、ユリウスは真剣な表情で、おかしくないのだと頷いた。

「ユリウス……」

 どういう事なのか聞きたかったけれど、リュシーさんとジルさんが二階に降りて来て、聞く事ができなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

そよ風と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~

御峰。
ファンタジー
才能が全てと言われている世界で、両親を亡くしたハウは十歳にハズレ中のハズレ【極小風魔法】を開花した。 後見人の心優しい幼馴染のおじさんおばさんに迷惑をかけまいと仕事を見つけようとするが、弱い才能のため働く場所がなく、冒険者パーティーの荷物持ちになった。 二年間冒険者パーティーから蔑まれながら辛い環境でも感謝の気持ちを忘れず、頑張って働いてきた主人公は、ひょんなことからふくよかなおじさんとぶつかったことから、全てが一変することになる。 ――世界で一番優しい物語が今、始まる。 ・ファンタジーカップ参戦のための作品です。応援して頂けると嬉しいです。ぜひ作品のお気に入りと各話にコメントを頂けると大きな励みになります!

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...