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第3章・冒険者デビュー

ユリウスの話①

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「ねぇ、昨日、どうして早く戻って来てくれなかったの? ものすごーく心配したんだよ?」

 本当に、ものすごーく心配した。
 無事に戻って来てくれたから良かったようなものの、ユリウスに何かあったらどうしようかって、気が狂いそうだった。
 それを伝えると、ユリウスは私のおでこに優しくキスして、ごめんね、と謝る。

「本当は、すぐに戻ろうと思ったんだけど、もう少し探索しようかなって思っちゃったんだよね。俺にはテレポートの呪文もあるからさ」

「でも、大きなゴブリンも居たんでしょ? サーチートは泣きながら戻って来るし、本当に心配してたんだよ」

「大丈夫だよ。数が多くても、ホブゴブリンくらい、全く問題ない。だいぶ、今の体に慣れてきたし、力のコントロールもできるようになったから」

「でも、巨大熊の時は、すごい怪我をしてたし、大変だったじゃない」

「あれは、予想以上の相手だったから、どれくらいの力で戦えばいいか、迷っていたんだ。全力でやったらすぐに終わったかもしれないけど、周りが吹き飛ぶ可能性もあるし」

 どういう事だろう? 首を傾げると、ユリウスが続ける。

「森の中で、魔法も使って全力で戦えば、森や木々を傷つけるかもしれないだろ。ファイヤーボールみたいな火魔法は、木を燃やしてしまうし、ウインドカッターのような風魔法も、木を傷つける可能性がある。そういう、周りに大きな被害が出ないように考えながらだったから、色々と後手に回ってあんな事になってしまったんだ」

 あの巨大熊との戦いの中で、ユリウスがそんな事を考えていたなんて、驚いた。
 こんなに周りの事を考えられるって言うのは、ユリウスにはかなりの余裕があるって事だよね。
 だから、ホブゴブリンくらいなら大丈夫って言えるんだろうな。

「ユリウス、全力を出していないって言うなら、ゴブリンを倒した時って、ユリウスの力の、何割くらいなの?」

「そうだなぁ」

 ユリウスは少しの間考え込んで、苦笑した。

「多分、二割弱、かな。ゴブリンは数が多くて倒すのに忙しいけど、どれも弱いからね」

 二割弱かぁ。すごいなぁ。
 そりゃあ、心配する必要ないって言うし、もう少し探索しようかなって思っちゃうんだろうね。

「じゃあ、サーチートを帰した後、何があったか教えてくれる?」

「うん、いいよ」

 ユリウスは頷くと、話を続けた。

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