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第3章・冒険者デビュー

ゴヤの森での成果

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「ただいま、オリエちゃん! アルバトス先生! ねぇ、聞いて、聞いてよ!」

 ユリウスとサーチートが戻って来たのは、太陽が沈み始めた頃で、無事に戻ってきてくれた事に、私はほっとした。

「聞いてよ、オリエちゃん。ユリウスくんのリカバー、三十分しかもたないんだよ!」

「え? そうなの?」

 私がかけた時は、確か二時間だったはずだけど、三十分?
 ユリウスの顔を見ると、彼は苦笑し、言った。

「三十分が短いって言うけど、結構もっている方だよ。オリエがすごすぎるんだよ」

「確かに、ぼくのオリエちゃんはすごいけれど、三十分は短すぎるよ! 三十分じゃ、落ち着いてキヨラ草を探せないし、怖くてネーデの森になんて、絶対に行けないよ!」

「リカバーの他に、バリアもかけてやっただろ? そのおかげで、集まって来たゴブリンに襲われても大丈夫だったじゃないか」

「そ、それはそうだけど、でも、すごく怖かったんだようっ!」

 わーんと泣きながら、サーチートはアルバトスさんの腕に飛び込んだ。
 私はそんなサーチートと、隣で深いため息をつくユリウスを見て、どうしたものかと思う。
 この場合の解決策って、私が一緒に行く事だよね。
 出発前に私がリカバーをかけてあげるという方法も考えたんだけど、リカバーは状態異常時の回復の呪文だから、ゴブリンホイホイ状態になっていないサーチートにリカバーをかけても、意味がない。
 だけど、私が一緒に行くと口にする前に、サーチートを抱っこしたアルバトスさんが口を開いた。

「サーチートくん、私、思うんですけど、リカバーをかけてもらっていても、全くゴブリンに遭遇しないわけじゃないと思うんですよね」

「はっ!」

 体をびくりと震わせ、まるで今気づいたみたいに、サーチートがアルバトスさんを見つめた。
 私は、そんなのわかりきった事でしょうと突っ込みたいのを堪える。

「リカバーは、サーチートくんのゴブリンホイホイの効果を消すものです。だけど、先程も言った通り、リカバーをかけてもらっていても、ゴブリンに遭遇する時は遭遇してしまいます。ですがバリアは、ゴブリンたちが襲い掛かってきても、サーチートくんを守っていたのではないですか? だとしたら、後はあなたがほんの少し勇気を出せばいいのではないでしょうか。ほんの少しの勇気で、あなたは無敵になれるのではないですか?」

「確かに、確かにそうだ!」

 サーチートは小さな黒い目をキラキラさせて叫んだけれど、ゴブリンに襲われる事には変わりないんだけどね。

「私は、愛弟子の勇気を信じています。ねぇ、サーチートくん、今回のキヨラ草集めは、あなたが頼りなのです。どうか勇気を出してくれませんか?」

「はい、ぼく、頑張ります!」

 アルバトスさんを見つめ、サーチートが小さな手で小さな胸をどんと叩く。
 アルバトスさんって、本当にサーチートを諭すのが上手いなぁ。

「今日って、ゴヤの森に行っていたんだよね? ゴヤの森にも、ゴブリンって居たの?」

「あぁ、そうなんだ。突然現れて、襲ってきた」

 突然現れて襲ってきたというのは、きっとゴブリンホイホイのせいなんだろうなぁ。ユリウス、お疲れ様です。

「それで、ゴヤの森にはキヨラ草はあったの?」

「うん、あったよ。だけど、なかなか見つからなかった。一日探し回って、やっと二本だけキヨラ草を見つけたよ」

 サーチートが、小さなマジックバックの中から、キヨラ草を取り出した。
 ネーデの森に比べると、ゴヤの森では見つけにくいらしい。
 明日はネーデの森に行くぞ、とユリウスが言うと、先程頑張ります宣言をしたサーチートは、真剣な表情で、うん、と頷いた。

「オリエ、サーチートがテレパシーで君に助けを求めたら、召喚して呼び戻してやってくれないか?」

「うん、わかった……」

 サーチートは目を輝かせ、それなら安心だ、と喜んだ。
 ユリウスはどうするのかと聞くと、ゴブリンホイホイ状態ののサーチートが居なくなれば、襲ってくるゴブリンにも限りがあるはずだと言う。
 確かにそうなのかもしれないけれど、何かちょっと引っ掛かる。
 だけど、私はわかったと頷いた。


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