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第3章・冒険者デビュー

いざ、ゴブリン討伐②

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 悲惨な事になったゴブリンの生首から冒険者ギルドに提出する左耳を切り取った後、ユリウスは土魔法で地面に穴をあけると、ゴブリンの死体を放り込み、火魔法を唱え一瞬で灰にしてしまった。

「すごいね」

 私がそう言うと、

「森に飛び火したら、大変な事になるからね。ちょっと強めの魔法で焼いたよ」

 と言いながら、穴の底から拾った何かを渡してくれた。

「これ、ゴブリンの魔石?」

 渡されたのは、緑色の小さな石だった。

「そうだよ。ゴブリンの左耳とこの魔石を冒険者ギルドに提出する事で、ポイントと報酬アップになる」

「でも、ゴブリンの後始末って、結構面倒だよね」

 今は依頼のために左耳を切り取らなきゃいけないから、余計にそう思うのかもしれないけど、死体を焼いて灰にしないといけないって、場所がこんな森だったら、本当に面倒だ。
 でも、そのまま死体を放置しておくと、強い魔物を引き寄せたり、ゾンビ化する可能性があるから、後始末はちゃんとした方がいいんだよね。
 どうせやるなら、何匹かまとめてやれればやれれば楽だと思うけど、何匹かまとめて焼くのなら広い場所が必要そうだし、そうなると倒したゴブリンの死体を運ばなくてはいけない事になる。
 そりゃ、私もユリウスもアイテムボックスがあるけれど、何の役にも立たないゴブリンの死体を、後始末のためだけにアイテムボックスにしまう事には抵抗があった。
 だけど、その都度後始末をしていくのも面倒だし……何かいい方法はないかなあ?

「ねぇねぇ、後始末をするゴブリンを、結界の中に閉じ込めちゃって、火魔法で灰にしちゃうっていうのはどうかな?」

「え?」

 サーチートがそう言ったけれど、私はどういう事なのか、よくわからなかった。
 だけど、ユリウスはサーチートの言おうとしている事が、すぐに理解できたらしく、なるほどと頷くと、突然茂みの中から現れたゴブリンの左耳をロングソードで器用に切り落とすと、

「バリア」

 と唱え、ゴブリンをバリア――結界の中へと閉じ込めた。
 結界内に閉じ込められたゴブリンは、血の流れる左耳があった箇所を押さえながら、結界の壁を懸命に叩いていた。

「ファイア」

 ユリウスは続いて、火魔法の呪文を唱える。
 結界の中に閉じ込められたゴブリンは炎に包まれ、結界が消えた後は灰と小さな緑色の魔石が残された。

「そういう事か!」

 つまり、ゴブリンを結界中に閉じ込めて、結界内だけに火魔法を使えば、周りを巻き込む事なくゴブリンの後始末ができるという事だ。
 さっきユリウスがしたみたいに、地面に穴を掘る必要もない。

「すごいよ、サーチート! こんな事、よく思いついたね!」

 私はサーチートを抱き上げると、ぎゅっと抱きしめた。

「本当だよ。全く思いつかなかった!」

 ユリウスも感心したようにサーチートを見つめていた。
 私とユリウスに褒められたサーチートはとても嬉しかったらしく、小さな黒い目をキラキラさせて、言った。

「あのね、アルバトス先生がね、前に、怪我をした人を安全のために結界内に入れて、ヒールで回復させた事があるって言ってて、それを攻撃魔法で使えないかなって思ったんだよ! ねぇ、オリエちゃん、ユリウスくん、ぼく、すごい?」

「うん、すごいよ! すごいすごい!」

「あぁ、とてもいい案だ。これなら、効率もいい」

「わーい、ぼく、すごーい! わーい!」

 サーチートが短い手を一生懸命振り上げて、万歳する。
 もう本当にこの子は可愛いなぁ。
 そして、サーチートのアイデアのおかげで、ゴブリン討伐はかなり楽になりそうだ。

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