異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

文字の大きさ
上 下
214 / 332
第3章・冒険者デビュー

商人ギルドのギルドマスター①

しおりを挟む


 ユリウスを待っている間、ソフィーさんが出してくれたお茶とお菓子をいただいて、サーチートとのんびりとさせてもらっていると、ソフィーさんが一人の男の人を連れてきた。
 その男の人は、明るい茶色の髪にダークグリーンの瞳をした細身の、三十代後半か四十代前半くらいの年齢の人で、私とサーチートを見ると小さく会釈をしてくれた。

「初めまして、お嬢さん。私はこの商都ビジードの商人ギルドのギルドマスター、ローレンス・ボルクです」

 と、自己紹介をしてくれるローレンスさん。
 私も自己紹介しなきゃと思って立ち上がったんだけど、私、自分の事を何て言えばいいんだろう?

「えーと、初めまして、オリエ、です。えっと……」

 なんと言うべきか……一瞬私が悩んでいる間に、テーブルに居たサーチートが小さな手を上げ、言った。

「こんにちは、ローレンスさん! ぼくの名前はサーチート。オリエちゃんのスマホだよ!」

「え? すまほ? なんですか、それ」

 サーチートの存在に驚いたらしいローレンスさんは、私とサーチートを交互に見つめた。
 きっと、サーチートそのものにも、スマホって言われたことにも、驚いているんだろうなぁ。
 私はサーチートが私とユリウスに関して余計なことを言わないように、抱き上げてそっと口を塞いだ。

「この子は、私の従魔なんです。私、冒険者で……まだランクはGランクなんですけど」

「あぁ、従魔なんですね。ぬいぐるみが動いて喋ってるって思っちゃいましたよ。でも、従魔なら、そういう従魔も居るって事ですよね。その子、ものすごく可愛い子ですね」

 ローレンスさんは納得しました、と言って笑った。
 納得してもらえて良かったです、と答えながら、私は従魔って言う言葉の便利さを実感していた。
 サーチートを従魔登録するように提案してくれたゴムレスさんに、ありがとうございますと心の中でお礼を言う。

「ところで、オリエさんとサーチートくんは、どうしてここに? スタイリッシュ・アーマーのお客様ですか?」

「あ、はい。お客である事には間違いはないんですけど……連れがリュシーさんに捕まってしまいまして……」

「お連れの方が?」

「えぇ」

 ローレンスさんは不思議そうに首を傾げている。
 ユリウスの事をなんて説明しようかと考えていると、軽いノック音のあと、リュシーさんが部屋へと入ってきた。

「ハーイ、ローレンスさん、いらっしゃいませ」

 明るい声で、軽い挨拶をするリュシーさん……だけど私は、いや、多分ローレンスさんも、リュシーさんを全く見ておらず、リュシーさんの後ろに居るユリウスに目を奪われていた。

「わぁ、ユリウスくん、カッコいいねぇ。まるで、ルリアルーク王みたいだよ」

 もぞもぞと体を動かし、口を塞いでいた私の手から逃れたサーチートが言った。
 そうだね、と私は頷きながら、白い衣装を纏う今のユリウスの姿に、どこか懐かしさを感じて、思わず、

「ルリアルーク……」

 と呼びかけてしまっていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろうでも公開しています。 2025年1月18日、内容を一部修正しました。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

処理中です...