異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第3章・冒険者デビュー

商人ギルドのギルドマスター①

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 ユリウスを待っている間、ソフィーさんが出してくれたお茶とお菓子をいただいて、サーチートとのんびりとさせてもらっていると、ソフィーさんが一人の男の人を連れてきた。
 その男の人は、明るい茶色の髪にダークグリーンの瞳をした細身の、三十代後半か四十代前半くらいの年齢の人で、私とサーチートを見ると小さく会釈をしてくれた。

「初めまして、お嬢さん。私はこの商都ビジードの商人ギルドのギルドマスター、ローレンス・ボルクです」

 と、自己紹介をしてくれるローレンスさん。
 私も自己紹介しなきゃと思って立ち上がったんだけど、私、自分の事を何て言えばいいんだろう?

「えーと、初めまして、オリエ、です。えっと……」

 なんと言うべきか……一瞬私が悩んでいる間に、テーブルに居たサーチートが小さな手を上げ、言った。

「こんにちは、ローレンスさん! ぼくの名前はサーチート。オリエちゃんのスマホだよ!」

「え? すまほ? なんですか、それ」

 サーチートの存在に驚いたらしいローレンスさんは、私とサーチートを交互に見つめた。
 きっと、サーチートそのものにも、スマホって言われたことにも、驚いているんだろうなぁ。
 私はサーチートが私とユリウスに関して余計なことを言わないように、抱き上げてそっと口を塞いだ。

「この子は、私の従魔なんです。私、冒険者で……まだランクはGランクなんですけど」

「あぁ、従魔なんですね。ぬいぐるみが動いて喋ってるって思っちゃいましたよ。でも、従魔なら、そういう従魔も居るって事ですよね。その子、ものすごく可愛い子ですね」

 ローレンスさんは納得しました、と言って笑った。
 納得してもらえて良かったです、と答えながら、私は従魔って言う言葉の便利さを実感していた。
 サーチートを従魔登録するように提案してくれたゴムレスさんに、ありがとうございますと心の中でお礼を言う。

「ところで、オリエさんとサーチートくんは、どうしてここに? スタイリッシュ・アーマーのお客様ですか?」

「あ、はい。お客である事には間違いはないんですけど……連れがリュシーさんに捕まってしまいまして……」

「お連れの方が?」

「えぇ」

 ローレンスさんは不思議そうに首を傾げている。
 ユリウスの事をなんて説明しようかと考えていると、軽いノック音のあと、リュシーさんが部屋へと入ってきた。

「ハーイ、ローレンスさん、いらっしゃいませ」

 明るい声で、軽い挨拶をするリュシーさん……だけど私は、いや、多分ローレンスさんも、リュシーさんを全く見ておらず、リュシーさんの後ろに居るユリウスに目を奪われていた。

「わぁ、ユリウスくん、カッコいいねぇ。まるで、ルリアルーク王みたいだよ」

 もぞもぞと体を動かし、口を塞いでいた私の手から逃れたサーチートが言った。
 そうだね、と私は頷きながら、白い衣装を纏う今のユリウスの姿に、どこか懐かしさを感じて、思わず、

「ルリアルーク……」

 と呼びかけてしまっていた。

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