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第3章・冒険者デビュー
ギルドカード②
しおりを挟む「じゃあ、本登録をお願いします!」
ユリウスと二人してお願いすると、
「あぁ、任せろ。だがお前ら、このカードの期限、ギリギリだぞ。仮登録のままだと、三か月で抹消されるところだったんだぞ」
と、ゴムレスさんは呆れたように言ったけど、知らなかったから仕方ないんだよなぁ。
ジャンくんもモネちゃんもマルコルさんも、教えてくれないんだもんな。
もしかしてユリウスも居るし、知っているって思われていたのかもしれないけどね。
「しかも、仮登録場所は、シルヴィーク村か……。この日付なら、シルヴィーク村が消える前か……」
私のカードは、私がこの世界に来てすぐだから、二か月半前くらいに作った。
ユリウスのカードはつい最近作ったんだけど、私のカードと同じ日に作ったように捏造してある。
「シルヴィーク村は今、おかしな事になっているようなんだが……何か知っているか?」
ゴムレスさんの問いに、私とユリウスは首を横に振った。
二人で話し合って、シルヴィーク村の事を聞かれたら、村には旅の途中で少し寄っただけで、何も知らない設定にしようという事になったのだ。
ゴムレスさんは私たちの言葉を信じてくれたらしく、そうか、と言ったきり、それ以上の事は聞いてこなかった。
「まぁ心配だが、みんなが無事でいると願うしかないな。じゃあ、お前らのカードの本登録をするが……通常ならブランクはGランクからコツコツ上を目指すものなんだが、…ユリウス、お前は俺のギルドマスターの権限で、Bランクスタートにしてやる」
「え?」
「ユリウス、良かったね、おめでとう」
「ユリウスくん、おめでとう! すごいね!」
ブランク状態から一気にBランクって、さすが私のユリウスだ。
私とサーチートは素直に喜んだんだけど、何故なのかはわからないけれど、ユリウスは眉を寄せ微妙な表情をする。
「おいおい、なんでそんな不満そうな表情をしているんだ? ブランク状態から一気にBランクだぞ? Gランクからスタートすると、受けられる依頼も少ないから、上に上がるためのポイント稼ぎに苦労するんだぞ?」
「でも、みんなGランクからコツコツ始めるものなんだろう? それなら、俺もそれでいい。それに……」
「なんだ?」
「ありがたい話だが、一気にBランクだと、何か裏があるんじゃないかって疑ってしまう」
「え? そうなの?」
てっきりゴムレスさんがユリウスの実力を認めたからなんだって思ってたけど、違うの?
ゴムレスさんの顔を見つめると、どうやらユリウスの言葉通りだったらしく、渋い表情をしていた。
「くそ、勘のいいやつだな。でもよ、考えてもみろ。お前は黒魔結晶が刺さったあの巨大熊を、一人で倒したんだろう? そんな奴がGランクからって、あり得ないだろうが」
うん、確かにそうだよね。私もそう思う。
思わず頷くと、ちらりと私へと視線を向けたユリウスが、困ったような表情で笑った。
「このお嬢ちゃんだってそうだ。質の良いポーションが作れるし、お前と一緒に居るんだ。それなりの実力があるんだろう? 俺はお嬢ちゃんは、GランクじゃなくてDランクをって考えていたんだ」
「本当に?」
「あぁ、本当だ」
頷くゴムレスさんを見て、ちょっと心が揺れた。
でも、ユリウスが言う通り、きっとこれには裏があるんだよね。
それに、みんなコツコツ頑張って上のランクを目指しているっていうのに、いくらギルドマスターであるゴムレスさんの権限だとしても、他のみんなに申し訳ないっていう気持ちもある。
だから、ここはやっぱり辞退した方がいいよね。
「お気持ちはありがたいですけど、私もユリウスと一緒にGランクからコツコツと頑張ります」
私がそう言うと、ゴムレスさんは深いため息をついたけれど、仕方ないか、と頷いた。
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