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第2章・のんびりまったりスローライフ?
商都ビジードへ
しおりを挟む翌日私たちは、ささやかなお礼だと言って村長さんが手配してくれた馬車に乗って、スモル村を出発した。
スモル村から商都ビジードは、徒歩なら街道を進んでも三日はかかるらしいんだけど、馬車で向かうと、朝に出発すれば夕方には着く事ができるらしい。
村長さんは馬車をわざわざ王都から呼んでくれたらしく、これには大荷物を持ったジャンくんとモネちゃんは大喜びで、私も楽ができるからありがたかった。
そして、途中何度か休憩を入れながら、馬車に揺られる事半日以上……私たちは商都ビジードへとたどり着いた。
御者の人にお礼を言って私たちが馬車を降りたのは、商都ビジードに四つある門のうちの一つ、東の門の馬車専用停留場だった。
商都ビジードは、オブルリヒト王国の王都オブリ―ルと同じように、十メートルはありそうな高い壁に囲まれた街で、街に入るためには、門番に身分証明書を見せるか、入場料を支払わなければならないらしい。
街への入場のために二十人くらいの人が並んでいて、私たちもその列に並ぶ。
面倒なシステムだけれど、これもあの高い壁みたいに安全面を考えたシステムなんだろうな。
だけど、王都オブリ―ルや、この商都ビジードは、しっかりとした壁に守られているけれど、シルヴィーク村やスモル村にはそんな壁はなく、あってもせいぜい柵くらいだから、ちょっと安全面が心配だ。
魔物や害獣に襲われたら、ひとたまりもないのではないかな。
まぁ、シルヴィーク村は、今は結界に守られて安全な場所だけどね。
「身分証か、なければ入場料として五百ルドだ」
「はい」
この世界のお金の単位はルドで、お金は全て硬貨だった。
硬貨は一番安いものから、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨と六種類あって、鉄貨一枚が一ルドで、十枚で銅貨一枚の十ルド、銅貨十枚で銀貨一枚の百ルドになる。
だから、商都ビジードへの入場料である五百ルドは銀貨五枚で、この世界で数か月暮らしてわかったのだけど、日本円にすると五千円くらいになる。
入場料のお金を出そうとリュックからお財布を出そうとしていると、
「オリエさん、ギルドカードを見せたらいいですよ」
と、モネちゃんが教えてくれた。
あぁそうかと納得して、私は以前モネちゃんのお父さんが経営しているハロン商会で作ってもらった、ギルドカードを門番の人に見せた。
門番の人は私が見せたカードを見て頷くと、
「お前たち、シルヴィーク村で登録したのかぁ。あの村、今は大変らしいなぁ」
と言った。
「大変って、どういう事ですか?」
「噂では、村の周りに見えない壁のようなものができていて、村の中に入れなくなっているらしいよ。村人たちは生死不明だとか、もう全員殺されて、村には魔物たちが巣くっているとか、いろんな噂が流れているんだ」
「そ、そうなんですか……」
村の外では、そんな事になってたんだね。
本当は全員無事で、若干の資材不足は起こしているものの、みんなで呑気に仲良く暮らしているんだけどね。
「で、お前たちは、ビジードには何をしに来たんだ?」
「買い物だ。あとは、いくつか依頼を受けようと」
門番の人に答えたのは、ユリウスだった。彼はユリウスを見ると、
「兄ちゃん、あんたのその髪も目も、本物か? だとしたら、すげぇなぁ」
と言った。
褐色の肌、銀色の髪、金色の瞳――この世界で最も有名なこの組み合わせの色は、有りそうでなかなか見かけないらしい。
入場のために列に並んでいる間も、私たちは――正確にはユリウスは、いろんな人から見られていた。
「あぁ、残念ながら、本物だ。今まで隠してたけどな」
「なんでだよ」
「この色は、目立つだろ? だからいろいろと絡まれるんだよ。でも、本物のルリアルーク王が現れたっていうから、もう隠すのを止めたんだ。俺はただ、この色に生まれついただけの、ただの冒険者だからな」
「あぁ、ジュニアス様の事だな。色は少し違うが、あの方はきっと今世のルリアルーク王だろうな。ジュニアス様に仕えたいって、この街を拠点にしていた冒険者が、大勢王都オブリ―ルへと向かったよ」
苦笑した門番の男の人は、「商都ビジードへようこそ」と言って、私たちを通してくれた。
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