異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第2章・のんびりまったりスローライフ?

うわ言①

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「行かないで、そばに居て……ずっと……」

 熱にうなされるユリウスは、こんな言葉を繰り返していた。
 私は汗を拭ってあげながら、大丈夫だよ、そばに居るよ、と繰り返す。
 熱は時間が経っても下がらなくて、ユリウスはとても苦しそうだった。
 心配だから一緒に看病をすると言ってくれたけど、サーチートには、ジャンくんとモネちゃんの所に行ってもらっている。
 例えサーチートでも、ユリウスの苦しむ姿を見せたくなかったからだ。

「大丈夫、行かないよ。そばに居るよ」

 うなされるユリウスにそう言って、冷たいタオルで汗を拭っうと、ユリウスがうっすらと目を開けて、私を見つめた。

「ユリウス? 大丈夫?」

 ユリウスは私を見つめたまま、ぽろりと涙を零す。
 もう一度大丈夫かと問いかけると、苦しそうなくせに真剣な表情で、彼は言った。

「俺は、君が、居てくれさえすれば、他に、何もいらない……」

 だから、そばに居てほしいのだと、ユリウスは言った。

「うん、大丈夫だよ。ずっとそばに居るよ」

 熱いユリウスの手をしっかりと握りしめてそう答えると、ユリウスは泣きながら頷いて、目を閉じた。
 何かおかしいような気がするけど、熱のせいかな。
 熱が出て体が弱って、一緒に心も弱くなって、寂しくなっちゃったのかな。
 それとも、あの巨大熊の毒か、額に刺さっていた黒い魔結晶のせいなのかな。

「大丈夫だよ、絶対に離れないよ。私は、ユリウスと一緒に居るのが、一番幸せだよ」

 だから、安心してね。

 耳元でそう囁くと、それを聞いて安心してくれたのか、先程まで苦しそうだった呼吸が、少しだけ穏やかになったような気がした。





 アルバトスさんの予想通り、翌日の朝にはユリウスの熱は下がっていて、目を覚ました彼は私の顔を見ると、恥ずかしそうに、ごめん、と謝った。

「本当に迷惑をかけてごめん……カッコ悪いところを見せちゃったね」

「やだなぁ、何言ってるの。元気になってくれたら、それでいいんだよ。もう大丈夫そう?」

 ユリウスは体を起こすと、軽く伸びをして頷いた。
 良かった、元気になってくれて。
 でも、念のため、あと一泊させてもらった方が良さそうだ。

「ユリウス、ものすごくうなされていたんだよ。それは、熱のせいだけ? どこかおかしいところとか、ない?」

 私がそう聞くと、体はなんともないとユリウスは言ったけれど、少し困ったような表情をして笑った。
 どうしたのかと問うと、嫌な夢を見たのだと言う。

「どんな夢?」

「ごめん、言いたくない」

 ユリウスは首を横に振り、夢の内容は教えてくれなかった。
 だけど、腕を伸ばして私を引き寄せると、強く抱きしめる。

「オリエ、お願いだから、俺から離れないで、ずっと俺のそばに居てほしい……」

 それは熱でうなされていたユリウスが、ずっと繰り返していた言葉だ。
 どんな夢を見たんだろう?
 こんなに不安になるくらい、ひどい夢だったのかな。
 逞しい体を抱き返して、そばに居るよと繰り返すと、ユリウスは深い息をついた後、ごめん、と謝った。

「俺は、本当は、君をどこかに閉じ込めたいと思っているんだ……。シルヴィーク村の結界の中で、君とずっと引きこもりたいと……そんな事を思っているんだ……」

 さっきのごめんっていうのは、私をどこかに閉じ込めたいって言ってた事についてなのかな。
 シルヴィーク村の結界の中で、私とずっと引きこもりたいって……。
 だとしたら、私的には全く問題ないんだけどね。

「それでもいいよ。シルヴィーク村の結界の中で引きこもるの、私は構わないよ」

 私がそう言うと、ユリウスは少し驚いたようだった。

「いいの?」

「うん、もちろんだよ」

 元々インドア派だし、全く問題ない。
 だから、ユリウスがそうしたいのなら、それでいいと思うんだけど、それがいけないと思っているのは、多分ユリウス本人なんだよね。
 そして、それは多分、彼のステータスに書かれた事が原因なんじゃないかと思う。


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