異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第2章・のんびりまったりスローライフ?

罠②

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「ユリウスね、さっきまで普通に話していたんだけど、突然倒れちゃって……でも……多分、これが原因のような気がする……」

 私はサーチートやジャンくんの前で、ユリウスがまだ羽織ったままの、血だらけのシャツを開けさせた。
 巨大熊の攻撃を受けた時の傷は治したけれど、左肩がどす黒く変色をしている。

「これ、毒かな……すごく熱いね」

 サーチートがどす黒くなったユリウスの左肩に小さな手を当てて、言った。
 私も、多分そうだと思う。
 だけど、あの傷に毒が入り込んでいたなんて、治した時に全く気付かなかった。
 苦しそうなユリウスを見て、どうして気付く事ができなかったのだろうと、私は自分を責めた。
 あの時、ヒールと一緒にリカバーをかけてさえいれば、こんな事にはならなかったのかもしれない。

「オリエちゃん、この毒は、遅効性の毒だったのかもしれない。時間差で効いてくるタイプの毒で、もしかすると、オリエちゃんが異常回復呪文のリカバーをヒールと一緒にかけていたとしても、反応しなかったのかもしれない……」

 そういう罠みたいな事をする奴も居るんだって、と珍しく冷静にサーチートが言った。
 アルバトスさんに、いろんな事を教えてもらったのだと言う。

「サーチート、アルバトスさんにテレパシーで話しかけてくれないかな? ユリウスの事、相談したいの」

「うん、わかった! 任せて!」

 サーチートは頷くと、目を瞑り、テレパシー、と呪文を唱える。
 それから、アルバトス先生、アルバトス先生、と何度か呼びかけると、ぱちりと目を開けて私を見つめた。

「オリエちゃん、お話できるよ!」

「え?」

 サーチートはころんとひっくり返ると、白いお腹を私に見せてくれた。
 サーチートの白いお腹からスマホが現れ、画面には驚いた表情のアルバトスさんが映っている。

『え? オリエさん?』

「あ、はいっ……」

 話している相手の姿が見える……まるで、テレビ電話だ。
 だけど、私はサーチートのお腹のスマホでアルバトスさんの姿を見る事ができるけど、アルバトスさんはどうして私だってわかったんだろう?
 それにテレパシーの呪文って、直接頭の中に声が響いてくる感じのものじゃなかったっけ?

「オリエちゃん、アルバトス先生は、魔法の鏡でオリエちゃんの事を見ているんだ。ぼくとアルバトス先生のテレパシーは、進化したんだよ」

「そ、そうなの?」

 うん、とサーチートが頷き、画面の向こうでアルバトスさんも頷いた。
 スマホと魔法の鏡を使ってのテレビ電話もどき……アルバトスさんって、結構何でもありの人だよね。

『そろそろサーチートくんから連絡が入るかと思っていましたが、まさかオリエさんとお話できるとは思っていませんでした。よくあの独占欲の強い男が、許しましたね。いや、違うか……あの子に何か、ありましたか?』

 最初は笑っていたアルバトスさんは、すぐに異常に気付いたらしく、表情を引き締めた。


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