上 下
153 / 325
第2章・のんびりまったりスローライフ?

それぞれの朝

しおりを挟む


「ところで、こんな朝からどうしたの? サーチートは?」

 昨日の夜、テッドくんは朝になったらサーチートを送り届けると言ってくれていたはずなのに。
 私の問いかけに、テッドくんとコリーちゃんは顔を見合わせると、笑った。

「あのね、お姉ちゃん。サーチーくんね、まだ眠いみたいなの。だから、まだコリーのお部屋のベッドでおねんねしてるんだよ」

 そう言って教えてくれたのは、コリーちゃんだった。

「そ、そう……」

 昨日飲んでたお酒のせいかな……小さな子供たちが起きているのに、自分だけ寝坊しているなんて、サーチートにも困ったものだ。
 だけど、困ったものは、サーチートだけではなかった。
 サーチートなんて、あとの二人に比べたら、まだ可愛いものだったのだ。

「あのさ、もう一組の兄ちゃんと姉ちゃんなんだけどさ」

「ジャンとモネか? 何かあったのか?」

「うん、あの兄ちゃんたち、今朝は頭が痛くて、ごはんも食べられないくらいなんだって」

「は?」

 私とユリウスは、間抜けにも、ぽかんと口を開けてしまった。
 頭が痛くて、ごはんも食べられない?
 それって、どういう事だ?
 もしかして、やらかしてしまったという事か?

「だから、おれとコリーは母ちゃんに言われてそれを伝えにきたのと、兄ちゃんと姉ちゃんはごはんをどうするか聞いてこいって言われてて」

「そ、そうか……」

「モネちゃん……ジャンくん……」

 私とユリウスは、頭を抱えた。
 モネちゃんとジャンくんは、二日酔いだ。
 二人のお父さんに、出発前にあれだけ釘を刺されたのだから、さすがに大丈夫だろうと思っていたけれど、全く大丈夫じゃなかった。
 これは絶対に、ユリウスによるお説教コースだな。
 それに、今日出発する予定だったけれど、多分出発を延ばさなければならない。

「テッド、食事、俺たちはいただくと女将さんに伝えてくれ。それから……あと一泊できるかどうか、聞いてきてもらえるか?」

 ユリウスは深いため息をつくと、言った。
 テッドくんは嬉しそうに茶色の瞳をキラキラと輝かせると、頷く。

「じゃあさ、もう一泊できるようだったら、兄ちゃんたちは、今日出発するのを止めるって事なんだね」

「あぁ、そのつもりだ。連れの体調が悪いのであれば、仕方ないからな。だから、もう一泊できそうなら、出発は明日に延ばすよ」

「わ、わかった! おれ、母ちゃんに聞いてくる!」

「コリーも! コリーも、聞いてくる!」

 興奮した子供たちが部屋を出て行くと、ユリウスはまた深いため息をついた。
 どうやら、かなりご立腹らしい。

「ユリウス、とりあえずお説教は、二人の体調が戻ってからにしてあげようね」

 今お説教すると、モネちゃんとジャンくんの体調は、絶対に今日だけじゃ回復しないような気がする。
 ユリウスは、あぁ、と頷いてはくれたけど、まだかなり怒っている感じがした。

「兄ちゃん、姉ちゃん、母ちゃんたちに確認してきたよ! 部屋、空いてるって!」

「お姉ちゃん、今日もサーチーくんと遊んでもいい?」

 しばらくすると、息を切らせてテッドくんとコリーちゃんが戻ってきた。
 多分ユリウスもなんだろうけど、キラキラした二人の瞳を見ると、怒っていたのがどうでもいいように思えてくる。

「あぁ、構わない。俺たちはもう一泊させてもらう事にするから、思う存分遊べばいいよ」

 ユリウスがそう言うと、テッドくんとコニーちゃんは目を輝かせて嬉しそうに笑った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...