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第2章・のんびりまったりスローライフ?
銀色の髪
しおりを挟む翌日、私はドアをノックする音に気付き、目を覚ました。
だけど、昨夜も褐色の腕の中で翻弄され続けた私は、眠くて仕方がない。
どうしよう、眠い……と呟くと、褐色の手が優しく頰を撫でて、まだ寝てていいよ、と言ってくれたので、私はありがたく頷いた。
彼――ユリウスはベッドを降りて、一つ大きなあくびをした。
彼も本当はまだ眠いらしい。
ごめんね、と謝ると、ユリウスは振り返って首を横に振った。
カーテンの隙間から漏れる光で、キラキラと銀色の髪が輝く。
綺麗な髪だなぁ、とぼんやりと見つめていると、身なりを整えた彼は私の頬を優しく撫でた後、ドアへと向かった。
「誰だ? ジャンか?」
ユリウスが、ノックされたドアを開けると、
「あっ!」
「え?」
ドアの向こうから聞こえたのは、驚いたような男の子と女の子の子供の声だった。
子供たちの声を聞いた瞬間、私は眠気が吹き飛んだ。
子供たちは、テッドくんとコリーちゃんだ。
二人は驚いたような声を上げた……でも、一体何に驚いたの?
「ユリウス、髪!」
「え? あ、そうか!」
ユリウスは頭に手をやると、深いため息をついた。
寝起きだったからか、頭にバンダナを巻くのを忘れてしまっていたようだ。
バンダナはどこにいったんだろう、と周りを見回した私は、床に落ちているのを見付けた。
そう言えば、昨日私がユリウスの頭から取ったんだった。
「に、兄ちゃん、その髪……」
「お兄ちゃん、始まりの王様みたい……」
創世王であるルリアルーク王の事は、こんな小さな子供たちでも知っている事なんだね。
私は子供たちがユリウスを見つめている間に、自分の身なりを整え、軽くベッドを整えた。
それから、テッドくんとコリーちゃんを前に固まっているユリウスの背中を撫でて、子供たちを部屋に招き入れる。
「ね、姉ちゃん! 兄ちゃんって……」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんが!」
テッドくんとコリーちゃんは、ユリウスを見て、大興奮していた。
この世界にとって、創世王と同じ色を持っている人間は、特別な存在のようだ。
色的にはそんなに珍しいものではないように思うんだけど、実はなかなか居ないのかもしれない。
「テッドくん、コリーちゃん、あのね、このお兄ちゃんは、この色に生まれた事が、あんまり好きじゃないの」
興奮する子供たちにそう説明すると、彼らは不思議そうに首を傾げた。
創世王と同じ色を纏って生まれた事は、きっと、喜びこそすれ、嫌な事であるはずないと思っているようだ。
「この色はね、この世界にとって特別な色だよね。だけどこのお兄ちゃんは、この色で生まれた事で、すごく嫌な想いをしてきたの。だから髪の毛を隠してね、少しでも目立たないようにしているの。だからね、このお兄ちゃんが創世王と同じ姿をしているっていう事は、内緒にしてほしいの」
まぁ、目立たないようにしていても、目立ってしまうのがユリウスなんだけどね。
銀色の髪を隠したとしても、カッコいいから、そこに存在しているだけで目立っちゃうんだよ。
だけど、私の説明を聞いて、テッドくんとコリーちゃんはわかってくれたようだった。
「兄ちゃん、こんなにカッコいいのに、嫌な目にあったの?」
ユリウスを見上げ、震えた声でテッドくんが言った。
隣に居るコリーちゃんも、茶色の瞳を潤ませている。
青いバンダナで髪を隠したユリウスは、二人の前にしゃがみこむと、うん、と深く頷いた。
それを見たテッドくんとコリーちゃんは、顔を見合わせて頷き合うと、再びユリウスに視線を戻し、ユリウスの褐色の大きな手を握りしめ、言った。
「大丈夫だよ、兄ちゃん! おれ、誰にも言わないから! 安心しろって!」
「そうだよ、お兄ちゃん! わたしも、誰にも言わないよ!」
「あ、ありがとう」
子供たちの健気さに、目頭が熱くなってしまった。
ユリウスも私と同じ気持ちだったんだろう、長く逞しい腕で、二人を抱きしめた。
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